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宇多田ヒカル「Too Proud (L1 Remix)」参加のアジアラッパー達と最近のアジア音楽事情を調べてみた件

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本日、宇多田ヒカルの国内ツアー“Hikaru Utada Laughter in the Dark Tour 2018”スタートを記念し、サプライズリリースされた「Too Proud featuring XZT, Suboi, EK (L1 Remix)」。

 

同曲は、今年6月にリリースされた最新アルバム『初恋』に収録されたUKのアップカミングなラッパーのJevonをフィーチャーした「Too Proud featuring Jevon」のリミックス曲となるのですが、そのリミックスには、アジア出身のラッパーが3組フィーチャーされていることや、宇多田ヒカルにとって、日本以外のアジアのアーティストとコラボするのは初めてとのことで話題になっています。

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宇多田ヒカルのアジアのラッパーフックアップとアジア音楽の現況

宇多田ヒカルのコラボといえば、近年なら「光 –Ray Of Hope MIX–」でPUNPEEをリミキサーに抜擢したことをはじめ、2016年のアルバム『Fantome』収録の「忘却」ではKOHHをフィーチャー、さらに先述の『初恋』のJevonなど、世間のJ-POPスターというイメージに加え、最近ではヒップホップ周りのアーティストをフックアップするポップスターというイメージも少なからずあるのではないでしょうか?

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 またヒップホップ周辺以外でもかつて日本のインディーR&Bユニット「N.O.R.K.」のメンバーとして彗星のようにシーンに出現し、そのユニット解散以降は、音楽レーベル「Tokyo Recordings」を立ち上げ、プロデューサーのOBKRとして活動、そして今年、デビューアルバム『分離派の夏』をリリースした小袋成彬を先述の『Fantome』収録の「ともだち」でフィーチャー。

ともだち with 小袋成彬

ともだち with 小袋成彬

  • 宇多田ヒカル
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes
分離派の夏

分離派の夏

  • 小袋成彬
  • J-Pop
  • ¥2100

またフジロックにも出演した今、海外のインディーポップ界隈で注目を集めるSuperorganism(スーパーオーガニズム)に『初恋』収録の「パクチーの唄」をカバーさせるなど、若手ミュージシャンを次々に見出していて本当にすごいなぁと思うばかり。

そんな彼女が今回の「Too Proud featuring XZT, Suboi, EK (L1 Remix)」で見出したのはXZT(エックスジィーティー)、Suboi(スボイ), EK(イーケー)というそれぞれ中国、ベトナム、韓国を拠点とするアジアのラッパーたち。今年9月に発売されたStudio Voiceでもアジア諸国の音楽シーンが特集されていたり、先週開催されたMUTEK.JP 2018のDayプログラムでも東アジアのクラブシーンの現況がパネルディスカッションのテーマの1つとしてフィーチャーされていました。

 

昨今のBTSの世界的な成功をはじめ、88risingの認知度拡大などメジャーなところでの成功から、クラブミュージック界隈でいえば、アンダーグラウンドでも日本の食品まつり、中国のHowie Lee、Tzusingなどの世界的な活躍、さらにそれに引き続くように台湾勢や日本からも今年はYoshinori Hayashi、Powderの名前が海外の音楽メディアでも目立ちだしていること、さらに数年前の寺田創一再評価から高田みどりら日本の80sアンビエントの再評価、さらにはFuture FunkがきかっけになったAOR/シティーポップ再評価など、例を挙げていけば、本当に多方面から同時多発的にアジアンミュージックバブルが起こっているように思えます。

あとは、韓国のSeoul Community Radioの評判が急上昇していたり、これは大分先発ですが台湾のSMOKE MACHINEも以前からコアな活動を続けていたり、若手のラッパー達の間ではアジア間でのInstagramを介したやりとりでコラボ話や海外イベント出演が決まるなどという話も耳にするようになったりと、アジアという枠が確かに音楽がメジャーでもアンダーグラウンドでも評価の対象になってきているのはおもしろいなと。

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京都で行われる「MAZEUM -メイジアム-」が興味深い

またその流れにリンクするように今月末11/30(金)から12/1(土)にかけて京都で行われる「MAZEUM -メイジアム-」という日本が誇るワールドクラスの鬼才たちが集結するアンダーグラウンドな音楽とアートのフェスティバルが開催されるなど、アンダーグラウンド界隈のリアルイベントの現場でも世界とコネクトすることが意識されだしているのは非常に興味深いですね。

ちなみにこのイベントは、UKのCrack Magazineでも取り上げられていたりもしますので、インバウンドで湧く京都だけあって海外からの来場者も多くなりそう。ですので、私も参加してみたいなぁと。

え〜、落語でいうところの枕が長くなりましたが、ここで、「Too Proud featuring XZT, Suboi, EK (L1 Remix)」参加ラッパー達について宇多田ヒカル公式サイトの情報を参照しつつご紹介したいと思います。

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名門UCLA卒、WeChatでも働く中国のラッパーXZT

まず中国を拠点とするラッパーXZTは、現在24歳で現地では3人組ラップグループ「Straight Fire Gang(ストレイトファイアー・ギャング)」の一員として活躍しているそうです。グループ名はちょっと米米クラブ的なダサさを感じますが、曲を聴いてみたところ、「直火帮 - First Rick」という曲がドープで重いトラップになっていてカッコいいなと。

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MVに出てくる人物達のファッションのトレンドもすごく今っぽい。インターネット規制が表向きはある中国ですが、このあたりの若者のメジャーなトレンドは東京だろうが、ニューヨークだろうが、上海だろうが、北京だろうがもはやボーダレスなんだなと改めて感じます。

またXZTは、生まれてからずっと中国在住だったというわけでなく、アメリカの有名大学UCLAで学生時代を過ごし、その時にラップを始めたとのこと。その後、帰国してからは中国大手企業が運営するコミュニケーションアプリであるWeChatで制作担当の仕事するという、典型的な海外から帰国のエリート路線の中国人の模様。ちなみにグループは今年2度中国国内ツアーを行なっており、合計18都市で行われたライブはすべて完売するほどの人気だそうです。

 

今年、日本でも中国の"ヒップホップ禁止令"に関連して話題になった「Rap of China」もシーズン2が放送されたりと若者の間ではすさまじい人気になっている中国ヒップホップシーン。実際、およそ3年ぶりくらいに私が今年6月に上海に足を運んでみたところ、クラブでヒップホップ、というかトラップがかかると若者がめっちゃくちゃ踊り出すという光景も多々見受けられたので、向こうで人気ならそれくらいのことは起きてもおかしくないのかなと...。

あとXZTのバックグラウンドはちょっとBohan Phoenixっぽい気も。K-POP出身で元少女時代のTiffany Young(ティファニー・ヤング)などもそうですが、やっぱりあっち生まれとか年単位で海外暮らしを経験した帰国子女系のアーティストは、海外音楽の素養が高いのかなとか思ったり…。

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Eminemを聴いて英語を学んだベトナムのラッパーSuboi

次にベトナムを拠点とするSuboiは90年生まれで、2009年にはベトナムのポップスチャートの人気曲にラップがフィーチャーされるなどキャリアもそこそこ長いようです。彼女はラッパーだけでなく、ソングライター、女優としても活動するなどマルチな才能の持ち主で、アー写をみてる限り、中島美嘉がちょっとふっくらしたらこんなルックスになりそうだなと思いました。

バイオを見ていて驚いたのは、”14歳の時、エミネム/Eminemやモス・デフ/Mos Defなどアメリカのラッパーを聴いて真似することで英語が上達した”という一文。たまに学生向けに行われるまさかの洋楽学習法で英語をマスターしてしまうところがマジでヤバいですね。すごい…。

そういやRich Brian(リッチ・ブライアン)もYouTubeとかネットのミームで英語を学んだというエピソードがありますが、アジアのアーティストの中では私が思っている以上にそういう正式な学校の勉強でなくとも趣味的なところでマスターするみたいなことは現実的に可能だったりするのかなと。この前、MUTEK.JPの英語でのパネルディスカッションで予想以上に英語が聞き取れなくなっていたことを実感したばかりなので、私もこの方法で真剣に勉強し直してみようかと思いました。

そんな彼女の曲ではバイオにあった”ダークなビート感"を強調したシングル「Doi」が、確かにダークなビート感で、エキゾチックなトライバル系ウワモノとの相性もあっていて、なんかアジアっぽかったです。またこの曲のライブ映像が88risingでも公開されており、そちらでは”ベトナムのラップの女王”という”練馬のビヨンセ”的な通り名も。

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それと今年8月に公開されたイントロのメロディーがSkepta(スケプタ)の「Shutdown」をどことなく彷彿とさせる「N-SAO?」という曲のMVでは、典型的なベトナムのイメージである市場の映像などが取り入れらていたり、先述のStraight Fire Gangと比べると、登場人物の衣装もどことなくベトナムのローカル色が出ている感があります。それがリアルなのかどうかはベトナムに行ったことがない私には判断できませんが…。

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あとアー写では中島美嘉っぽいけど、動画で見ると結構違う顔つきだということに気づくのもポイント。それとトラックの特徴をあげると、ともかくベースの音が太い。サブベース大好き女子だなという印象を受けます。

 

多彩かつ高度なスキルの持ち主、韓国のラッパーEK

最後に韓国を拠点とするEKは、バイオでは”多彩かつ高度な技で音楽業界に旋風を巻き起こす”ラッパーと紹介されています。またMost Badass Asian (MBA)というラップグループの一員のようで、今、韓国ではホットで目が離せない存在なんだとか。

「MBA」という曲がドープなんですが、映像演出の今っぽさは最近のアメリカのシーンにインスパイアされた日本や中国のラッパーたちのものとも時差がない感じでスタイリッシュでした。個人的には、あまりラップとか映像のクオリティーには関係ありませんが偽PUNPEEみたいな人が出演しているのが結構気になります。

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あとYouTubeでEKが「SHOW ME THE MONEY 777」という番組でライブパフォーマンスする映像を発見。私は全く知らなかったのですが日本に『フリースタイルダンジョン』、中国に『Rap Of China』があるように韓国にも『SHOW ME THE MONEY』なるMCバトル番組がある模様。

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その番組が気になったのでググっているとなんと、”777”というのは第7弾を表す文言のようで、PR Timesにあるプレスリリースによると日本でもCS放送 『Mnet』、動画配信サービス『Mnet Smart』で12/6から放送が始まるそうです。

本格的にまとめようとすると事例を紹介するだけでも大容量になるので、今回は大分駆け足でアジアの音楽シーン、特にクラブミュージック界隈の情報に触れながら、後半の宇多田ヒカルが今回フィーチャーしたラッパーに話をつなげてみました。私としてもこの界隈は興味深いので、今後も折を見て、なんらかの情報を記事化したいなと思っています。以上、お後がよろしいようで。

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Top Image via 宇多田ヒカル
Source: 宇多田ヒカル, CJ E&M Japan