坊主も走る師走。コロナ禍のせいか、あまり実感はありませんが、今年も残すところ、あとわずか…。日々の忙しさにかまけて、再び更新が滞っている当Webzine、来年こそは、在りし日の形にバッカゲンしたいところですが、果たしてどうなることやら…。
そんな前置きはここまでにして。最近、リリースされたばかりの話題のSFオープンワールドゲーム『サイバーパンク2077(CYBERPUNK 2077)』のサントラに収録されている、日本の芸術家アイドルユニット・ナマコプリが作中の”Us Cracks(アスクラックス)”として提供した「PonPon Shit」という曲の中毒性の高さに私もご多分に漏れずハマってしまいました。
『サイバーパンク2077』といえば、サントラにGrimes、Run The Jewels、SOPHIE、Shygirl、Nina Kraviz、Let’s Eat GrandmaのRosa Waltonといった人気アーティストが多数参加。さらにGrimesがゲームで演じたキャラの「Lizzy Wizzy」として、Apple Music限定配信でDJミックス『This story is dedicated to all those cyberpunks who fight against injustice and corruption every day of their lives! (DJ Mix)』をリリース( t.A.T.u.の曲もマッシュアップネタに使われているそうな)したりと、音楽面でも話題を呼んでいるわけですが、個人的にもっとも刺さったのが先述の「PonPon Shit」というわけです。
同曲は、すでにゲームを体験した人の間では”電波ソング”として注目を集めていますが、私的には特に「Yes No Yes No 枕 No」という歌詞にミニマルテクノばりにハメられていく感覚を覚え、すっかり虜に。
それと同時に「PonPon Shit」の歌詞に”セルジュ・ゲンスブール(Serge Gainsbourg)”的な言葉遊びのおもしろさも感じました。
とはいえ、ゲンスブールを例にしてしまうとフランス・ギャルの某曲を頭に浮かべる方も中にはいるかと思うので、それはそれでアレなのですが…(特に今の時代は)。ただ、歌詞を隠喩的にあの感じの言葉遊び的な形にもっていくところは秀逸だなと。
個人的には「Yes No Yes No 枕 No」の部分は、繰り返し聴いていると「ジュ・テーム・モワ・ノン・プリュ」の歌詞にある「愛してるわ…僕”も”愛していない」の感じにも通じる部分があると思えてくるので、私のようなフレンチかぶれにはかなり響くところがあります。
また、隠喩という点に焦点を置き、同曲の歌詞を情事の隠喩として捉えた場合、頭に浮かんだのは今夏大ヒットしたCardi B(カーディ・B)とMegan Thee Stallion(ミーガン・ジー・スタリオン)の「WAP」。
「WAP」は、ど下ネタな隠喩で表現される歌詞に批判的な意見が集まる一方、女性をエンパワメントする現代的な曲として評価されることもあって物議を醸す曲になりましたが、仮に「PonPon Shit」の歌詞にある隠喩を情事的なものとして捉えた場合も、その部分の主導的な立場にいるのは男性ではなく女性と感じられるので、ある種の「WAP」に対する”日本からの回答”(フォローアップという意味で)のようにも思えます。
その意味では、構図は同じ言葉遊び的でも、メッセージ的にはゲンスブールのアレに対する現代女性からの”カウンター”としても捉えることができるんじゃないかなと。
そう考えると、この「PonPon Shit」は今の時代の空気感をしっかりと捉えた曲だし、そこを言葉遊び的に表現するのは、カルチャーの文脈的に見ても作詞家のセンスが光る部分だと思います。なので、この曲を単に電波ソングとして捉えてしまうのはもしかしたら過小評価すぎるのかもなぁと思った次第です。
余談ですが、ナマコプリの曲だと自分は他にも「どこでもGOA」というゴアトランスな曲が好きなので、この機会にそちらもレコメンドさせて頂きます。こちらも中毒性高し...。
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