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DEAN FUJIOKA最新シングル『Apple』レビューあとがき

DEAN FUJIOKAの最新シングル『Apple』のレビュー記事を執筆しました。こちらは現在、block.fmで公開中です。

"DEAN FUJIOKA最新シングル『Apple』レビュー:光と闇を表現した作品に見た最新クラブミュージック要素"では、同作に収録されているリード曲の「Apple」(およびPandora Ver.)、「Be Alive」、そして、既発曲のライブバージョン2曲「Shelly」と「Spin The Planet」について、クラブミュージックの視点でレビューしています。

 

Apple - EP

Apple - EP

  • DEAN FUJIOKA
  • J-Pop
  • ¥1222

今回、私がレビューした内容については、そちらの記事を読んでいただくのが一番ですが、せっかくなのでここではレビューの概要をご紹介。

まだ本編を読んでいないという方は、以下の概要で内容をまずはご確認いただけたらと思います。 

DEAN FUJIOKA最新シングル『Apple』レビュー概要

 

「Apple」(およびPandora Ver.):

ダークな4つ打ち曲となったが、重量級の低音が鳴るベースラインはこれまでのDEAN FUJIOKAらしいベースミュージックの影響を強く感じるものになっている。これまでのダブステップ、フューチャーベースとは曲のフォーマットの面では異なるが、その低音の取り入れ方、鳴らし方はやはり、ベースミュージック由来のものという印象。かつて、かつてSNSでバズった"この世で一番飛べるのはDEAN FUJIOKAのダブステップ"感が強い。また、個人的に注目したのは、曲がラストに向かって疾走していく部分でのハイハットの音。トラップを彷彿させるハイハットのリズミカルな音が「Apple」の後半パートでは、トラックの疾走感を押し上げる要素として、効果的に機能しているように感じた。

 

「Be Alive」:

「Apple」と同じ4つ打ちの曲だが、そのリズムのハネ感から考えるとダンスホール寄りの曲という印象が強い。ただ、ウワモノ自体はコード感含めてディープハウスに通じるところもあり、バウンシーなリズムパートも含めて考えると、今注目が集まる、ダンスホールにも影響を受けているアフロビーツや、それに近いアフリカのハウスにも通じるところがある。「Apple」を「陰」の曲とすれば、「Be Alive」は「陽」の曲になっている。曲調やジャンルを含めて、多様なスタイルの曲を書き下ろすことが可能なDEAN FUJIOKAのソングライターとしての能力にも改めて注目するきっかけになる曲だと思った。

 

「Shelly」&「Spin The Planet」:

昨年12月に行われた「“Musical Transmute” Tour 2021」東京公演で披露された既発曲2曲のライブバージョン。ライブで披露された「Shelly」はチルなR&B系曲で、「Spin The Planet」はストリングスが印象的なUKガラージ/2Step系曲だが、例えば、本作の「Shelly」ではジャジーなエレピが追加されているなど、2曲ともオリジナルとは異なるアレンジを楽しめるところがポイント。またライブバージョンならではのホールリヴァーブが効いた臨場感ある音によって、生のライブ感も楽しめる。「Spin The Planet」の終盤では、DEAN FUJIOKAが「あの日見た夢の続き」と語りかけるが、同曲が『Apple』に収録されたことで、その夢の続きが実現したように感じるファンも多いはず...。

上記のようなことを書いたのですが、今回、レビューの最後は、先述の「この世で一番飛べるのはDEAN FUJIOKAのダブステップ(もしくは4つ打ち)」という一文で締めました。

これは、元々インディーバンドのどついたるねんが自身の「人生の選択」の中の歌詞を「この世で一番飛べるのはDEAN FUJIOKAのダブステップ」というワードに置き換えてライブで連呼していたもの。

実はこのワードって、本当にDEAN FUJIOKAの音楽性の本質を言い当てたものだと思うんですよね。例えば、私はイギリスを中心にアンダーグラウンドで流行していたベースミュージックのジャンル「Wave」を取り入れた「Echo」をきっかけにDEAN FUJIOKAの音楽を聴くようになりましたが、DEAN FUJIOKAの音楽ってすごくベースミュージックなんですよ。

youtu.be

もちろん厳密にいえば、これまでDEAN FUJIOKAがアプローチしてきたベースミュージックは、ダブステップ以外にもWaveだったり、フューチャーベースだったり、トラップ、ドラムンベースだったりとさまざまなので、"ダブステップ"に限ったわけではありません。

ただ、"ダブステップ"=ベーシーな音楽性と解釈すると、本当にこの世で一番飛べるのはディーンフジオカのダブステップ」というワードがしっくりくるというか...。特に低音の取り入れ方、鳴らし方は本当にそこを通過しているからこそというか、ベースミュージック由来のものになっているんですよね。

 

 

なので、例えば「Apple」はフォーマットこそ違うんですけど、ベースの鳴らし方はやっぱりベースミューミュージック由来ものがあるというか...。特に後半のブレイク部分でダブステップ/フューチャーベースのビートが取りいれられていたこともあって、「この世で一番飛べるのはDEAN FUJIOKAのダブステップ」感をすごく強く感じました。

youtu.be

また、ベースミュージック由来の重低音以外にストリングスの要素もDEAN FUJIOKAサウンドのアイコニックな要素になっていると思います。過去曲を例に出して言えば、「History Maker」のサウンドはストリングスの音が非常に印象的ですし、これまでの曲の多くはその要素があることで、時に壮大なスケール感や耽美的な雰囲気、今作での「Apple」のように“天使”と“悪魔”を両立させたスリリングな楽曲"感が生まれていると思います。

youtu.be

そういう意味ではベースミュージックとストリングスを日本で最もよく配合しているミュージシャンは、実はDEAN FUJIOKAだと思います。一般的にベースミュージックというと、"シンセ"のイメージが強いかもしれませんが、例えば、UKのグライムやUKドリルのようなベースミュージックと強い繋がりがあるシーンではストリングスはよく取り入れられています。

youtu.be

クラブミュージックが好きな私からすると、今回の「Apple」、Be Alive」はもちろん、既発の曲からもそういった要素も感じるわけですが、その意味でも本当にDEAN FUJIOKAの音楽は最先端のクラブミュージックともリンクする部分が多く、彼の音楽はクラブミュージック、特に海外の最先端系のものが好きな人には響く音楽だと思っています。

あとレビューにも書きましたが、今回収録されたライブバージョンの「Shelly」と「Spin The Planet」は、ライブバージョンならではの臨場感をすごく強く感じられたところがよかったですね。

youtu.be

その雰囲気はライブ会場ならではのホールリヴァーブが効いた音響によるところが大きいのかなと思ったんですけど、私も「“Musical Transmute” Tour 2021」には公演初日を見させていただいていたので、現地で感じた生の感じが音を通じて蘇ってくるかのようでした。

生に近い臨場感を楽しめる音源というと、Apple Musicの空間オーディオなど立体音響対応の音源がありますが、それで聴くとよりライブ音源の没入感も高まるはずなので、願わくばライブバージョンの「Shelly」と「Spin The Planet」も立体音響対応の音源としてもリリースされてほしいです。

またDEAN FUJIOKAは、音楽制作専門メディアにもフィーチャーされるくらい音楽制作はもちろんのこと制作機材にも造詣が深いので、将来的に自ら専用の機材を駆使して、立体音響を前提とした音楽作品にも取り組むことも十分考えられるはず

特に"ベースミュージック"と"ストリングス"のふたつのアイコニックなサウンド要素は、立体音響でさらに音の体感が変わってくる要素だと思うので、それがDEAN FUJIOKAの音楽を立体音響対応の音源で楽しめる日が実現することに期待したいです。

以上、おあとがよろしいようで。