PCを整理してたら、今年4月上旬ごろに行われていたオンラインイベントに関する感想を綴った原稿を発見しました。実はこれ、記事としてアップしようと思っていたのですが、うだうだやっていたら、なんとなく公開するタイミングを逃してしまい、今の今まで”お蔵入り”になっていた原稿なんです…。
今年4月初旬から一気に進歩を見せたオンラインイベント
オンラインイベントは4月初旬からこれまでの間に例えば『フォートナイト』のバーチャルライブ、マインクラフトでの卒業式兼パーティーといった海外発のものや、日本でもDOMMUNEやAbemaのAR拡張現実化ライブなど最新テクノロジーを駆使したユニークなイベントが実際に次々に開催されてきたため、4月上旬と今ではオンラインイベントの捉え方も違ってくるかとは思います。
またクラブやDJが行うオンラインDJイベントもここ2ヶ月ちょっとの間に、”コロナ”に対応するかのように配信映像の見せ方に工夫を凝らしたものが増えだし、オンラインイベントで見られる表現自体は一気に進歩したと思います。
REMO-CON × NOBUAKI KAZOE
— Moment Tokyo (@MomentTokyo) 2020年6月20日
宇宙空間での配信🔥@REMOccCON @nobuaki_kazoe pic.twitter.com/0NW3jm8Wo8
#MU2020 令和世代のDJ @Batsuxxxx が現れてしまう。
— Twitch Japan (@TwitchJP) 2020年4月18日
もう何がなんだかわかんない配信に。https://t.co/BuTV1GOy3y pic.twitter.com/G4FydBVlhE
そういった今の進歩した状況とあの頃、配信を観ていた自分が考えたことは今、どれくらい違いがあったのだろうか? 4月初旬の頃を定点観測的に振り返ることで、新たにアフターコロナ時代のオンラインDJイベントの可能性を考えるきっかけにしようと思い、今回は当時の原稿をそのまま記事にしてみようと思います。
アフターコロナ時代のオンラインDJイベントの可能性を考える
先週の東京都の外出自粛要請以来、関東圏や関西圏の大都市を中心に週末の外出自粛ムードが高まったことを受け、都内を始め、多くの音楽べニューは軒並み営業を自粛。そういった状況を受け、各べニューでは営業自粛による運営資金補填のためのクラウドファンディングやドネーション制での無観客配信ライブを開始しており、この週末は数多くの支援のための配信が行われました。
私もいくつか気になった配信をはしごし、わずかばかりながら寄付をさせて頂きましたが、こういった配信ライブは今後もしばらくは継続することは予想されますので、自分が観た中でこういう配信ならまた観たいなと思った要素を今回はメモ的に書き残しつつ、”アフターコロナ時代のオンラインDJイベントの可能性”について考えたいと思います。
まず今週末のような状況を受けて、ひとつ興味深いなぁと思ったのがTwitterで見た”こういった状況で行われるDJ配信をポストコロナ、アフターコロナのオンラインイベント体験と言い切ってしまうのはお粗末だ”という意見です。
この指摘は”なるほどなぁ”と思わされるもので、確かにすでに私たちはここ10年の間にBoiler RoomやDommuneによって、無料で国内外のDJたちのプレイを日常的に体験できる環境を享受しています。
この投稿者の方が言われているように最近の状況はあくまで今のような環境の中での”代替”という側面は考慮するべきで、今、外出ができない状況だからこそ”現場に行きたくなるというフィジカルな方面でのクラビングの再評価”に繋がる部分はあるかと思いますが、ただDJがDJ Mixするだけの映像を見ること自体を”ポストコロナの体験”と言い切ってしまうのは確かにお粗末なのかもしれません。
それを踏まえて”ポストコロナ、アフターコロナのオンラインイベント体験”というものを考えた場合、”オンラインでしかなし得ないこと”が内容として備わっていることが必須条件になると個人的には思っていて、そこにお金が発生するポイントを作ることこそが今後のエンタメにおけるオンライン体験の命題なんじゃないかと思うのです(そのひとつが以前、書いた5Gを活用したXRを絡めたエンタメ体験じゃないかなと改めて考えています)。
”インターネット上に作られた3D空間内でのバーチャルレイヴパーティ”
そういう意味では4/5に配信された「DIV3」はまさにオンラインだからこそできる”DJイベント”だったと思います。この同イベントは、”インターネット上に作られた3D空間内でのバーチャルレイヴパーティ”で、参加希望者はアプリをダウンロード後に自分の3Dアバターを作り、指定された時間にある場所にいけばイベントを楽しめるというものでした。
イベント自体は実施の前段階で参加希望者多数のため、申し込みは規定数に達した時点で終了していましたが、当日はTwitchでそのバーチャルレイヴの様子が配信されていました。
#DIV3 一夜明けて普通にイベントに行ったような記憶として消化されている☺️ pic.twitter.com/maYRsVMis4
— anthony10000000 (@yvm3_) 2020年4月6日
私はその配信で視聴していましたが、これがなかなか面白い。バーチャル空間に設置されたDJステージなんかも凝った作りで、なぜかグレタさんのポスターがステージ裏に貼られているという謎な演出もあったり興味深かったです。イベント自体への参加は無料で、代わりにPayPalでのドネーションが受け付けられていましたが、”レイヴ”ライクなコンセプトとバーチャルの融合は、非常にコンセプチャルで今後のオンラインDJイベントの可能性を見た気がします。
ヴァーチャルクラブのステージ裏。なぜかグレタさんの写真があるのが気になる。#DIV3 pic.twitter.com/988m4jIIOn
— Lady Citizen aka JF (@LadyCitizen69) 2020年4月5日
DJ、べニューに課金したくなる有料配信、肝はやっぱりDJの巧さ
一方、先述のここ10年で確立された類のDJプレイ配信型オンラインDJイベントにおける今後の可能性を考えた場合、やはり基本は出演するDJのスキルが肝だと思いました。
今週末を例にとっても国内では個人の配信含め、様々なオンラインDJプレイが配信されていました。それだけに多くのクラバーはテレビのザッピング的に方々の配信を”はしご”していたのではないでしょうか?
現時点でのオンラインイベントは”チャリティー”の意味あいが強いため、熱心なファンであればあるほど、多くの配信に”足を運び”、各所でドネーションしていたと思いますが、そうでない人を惹きつけるには何が必要なのでしょうか? その答えは、先ほどの演出面での充実レベルを引き上げるか、もしくは単純に外出自粛によって生まれた可処分時間を過ごすにふさわしいと思わせるショーマンシップでしょう。
特に有料での配信となった場合、チャリティの域を越えて、配信の対価として視聴者がDJやべニューに課金するにはやはりそこは必然的に求められる部分のはずです。
その点で、4/4に配信された「YELLOW DIGITAL MARKET」でのFPM田中知之氏のDJプレイはまさに従来のDJ配信スタイルにおける究極のアートフォームとして成立していたと思っています。
そのセットでは”老若男女のAloneの呟きが次々登場し、曲が進むにつれてどんどん増えてそのうちAloneだらけに。孤独感に苛まれひとりぼっちだと思っている人はあなただけじゃなくて、世の中Aloneだらけ、つまりはNobody is Aloneというオチ”という氏の今月リリースの新曲で幕を開けたのですが、その今の社会情勢をしっかりとDJセットに落とし込んでの見せ方はやっぱり、その辺のDJとは格が違うなぁと。
それ実は私の新曲(動画は次の曲ですが)。老若男女のAloneの呟きが次々登場し、曲が進むにつれてどんどん増えてそのうちAloneだらけに。孤独感に苛まれひとりぼっちだと思っている人はあなただけじゃなくて、世の中Aloneだらけ、つまりはNobody is Aloneというオチ。今月中にリリースしたいな。 https://t.co/axVwdSjzmo
— Tomoyuki Tanaka (@tomoyukitanaka) 2020年4月5日
踊らせるだけでなく、選曲にメッセージ性をもたせるその行為は、まさにアートフォームとして確立されていると言っても過言ではないでしょう。
DJプレイは正直な話、今はテクノロジー、機材の発達で、もはや繋ぐだけなら誰でもこなせます。そのため巧いDJとそうでないDJを判断する基準は、個々人でそれぞれ違うと思いますが、私はやっぱり選曲にあると考えています。
ただ、その選曲もクラブの現場とミックステープではやはり違ってきますし、こういった無観客の配信も同じように違ってきて当然。そこの違いをその状況ごとのコンセプトで表現できるDJはやっぱりセンスが良い、巧いDJであり、先日の田中氏はまさにそのお手本だったように思いました。
”オンラインDJイベント”がカルチャーとして発展していくための要素を探る
今のような状況ですとテクノロジーが”エンタメの空白”を救う鍵になっていることは間違いありません。しかし、その中で今後、世界が平常運転に戻った際、「どのような要素があれば、今後、”オンラインDJイベント”がカルチャーとして発展していくのか?」を探っていくことも、今、業界が学べることのひとつではないでしょうか? そして、それがリアルとバーチャルの住み分けや、逆にXR的なアプローチの配信を生み出す何かのヒントになるような気がしてなりません。邪推かもしれませんが、こういった視点も今後、”サスティナブルなエンタメ”を考える上では必要なんじゃないかなと思ったり…。
2020年6月時点の極私的な考え意
以上が今年4月初旬の時点での私の感想です。そして、ここからは現時点での極私的な考えです。
「どのような要素があれば、今後、”オンラインDJイベント”がカルチャーとして発展していくのか?」、この部分に関してはバーチャル渋谷に例えばクラブ、ライブハウスなど音楽ベニューが点在する道玄坂を”バーチャル道玄坂”にして、バーチャル渋谷上で、ベニューに入店するとそのクラブの様子がわかるライブ配信にアクセスできるとか、そういうシステムができれば、物理的に自由に夜遊びできるアフターコロナ時代においても一定の需要が生まれるんじゃないかと思ったり。
普段、東京から離れた場所にいる人が仮想の渋谷を歩いて、仮想の道玄坂から現実の道玄坂を覗き見るとか、まさにフォートナイトの”DJパーティー”的だし、今言われているメタバース的な要素があると思います。また近場の人も配信を観て、面白そうだったらバーチャル渋谷からリアル渋谷に行って、リアル道玄坂のクラブに行くような流れも生まれそうですね。
あとリアルでは実現難しい集客の実現と、リアルチケットにプラスできる有料配信チケットの収益があれば利益面でも期待できそうですし、何より欧米と比較して高い日本のクラブエントランス料金の見直しもそこでできるようになるかもしれませんね。リアルクラブの場合、エントラス料金が安くなれば、その部分、私の場合、お酒飲もうかなってなるし、もし同じように考える人が多ければ、ドリンク販売の利益も上がりそう。
「3600円のチケット購入者は約18万人」→普通に横浜アリーナ15000人強チケット8000円で売るよりよっぽど売上がでかいという…
— レジー (@regista13) 2020年6月25日
サザンが初の無観客配信ライブ 約50万人が視聴: 日本経済新聞 https://t.co/IYlxNVB3dX
箱とイベントの利益が上がれば、末端のDJにもそれなりのギャラが支払われることにも期待できそうなだけに、少なくともこういったテクノロジーとの共存はクラブシーンにとっては”サスティナブル”なメリットも多いのではないでしょうか?
あくまで素人の皮算用なんでアレですが、これもひとつの可能性ということでご容赦ください。以上、お後がよろしいようで。
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