letter music

日々更新される音楽情報を雑談を交えて文字化するWebzine

ソングライターらに朗報? アメリカで音楽サブスクから支払われる著作権料の引き上げが決定! という話

使う側にとっては利便性が高い一方、アーティストたちからは不満や批判を寄せられることも少なくない音楽サブスクリプションサービス。

 

 

それだけに2020年にはアメリカで音楽プラットフォームからのアーティストへの支払い額の増加を求めるJustice At Spotifyキャンペーンが行われたり、昨年はイギリスで現行のストリーミングによるロイヤリティ分配モデルのリセットを主張する提案を盛り込んだ報告書が政府に提出されるなど、近年はアーティストやソングライターがストリーミングで得る収益を見直す動きが広がりを見せています。

そんな中、今月始めにアメリカで以前からCRB(米国著作権料委員会)によって決定していた音楽プラットフォームからソングライターと音楽出版社に支払われる著作権料の引き上げがついに実施されることになったとのこと。

ちなみにCRBとは、米国議会図書館から指名を受けた3人の連邦裁判所判事からなる委員会のことで、その3人の判事は定期的に会合を行い、メカニカルロイヤリティー(楽曲が売れたりストリーミング再生されたりした場合にアーティストや音楽出版社に支払われる著作権料)のレートを決定するよう、米国法によって定められているそうです。

2018年にCRBは、2018年から2022年にかけて著作権料のヘッドラインレート(法廷レート)を10.5%から15.1%に引き上げることを決定しました。しかし、Apple Musicを除くSpotify、Amazon Music、YouTube、Pandoraなど主要音楽プラットフォーム各社は、ビジネスモデルを阻害するとしてこの決定に反発。2019年にすでに数十億ドルもの著作権料を支払っていることなどを理由に訴訟沙汰になり、その引き上げは長らく実現しませんでした。

今回、裁判所の判決で著作権料引き上げが認められたことで音楽プラットフォームは、これまで支払ってきた著作権料レートと引き上げ後の著作権料レートとの差額分をソングライターらに支払うことになるそう。

今回の著作権料引き上げの実現について、NMPA(全米音楽出版社協会)の会長兼CEOのDavid Israeliteは、以下のように述べています。

「本日、裁判所の判決によって、我々が4年前に獲得した著作権料引き上げの権利が再度支持されることになりました。音楽プラットフォームは、ソングライターからの大幅な著作権料の引き上げを受け入れる必要があり、ソングライターもその要求を受け入れてもらう権利があります。このプロセスは長引き、費用もかかりましたが、我々はその結果に安堵しています。今、ソングライターと音楽出版社はようやく、何年も前に支払われるべきであった正当な著作権料を音楽プラットフォームから受け取ることができるようになりました。我々は、法律で義務づけられているように、音楽プラットフォームが著作権所有者に迅速に使用料を払い戻すよう努めていきます」

 

 

但し、今回の判決ではレーベル収入の割合率(TCCレート)に上限が設けられたことで、音楽出版社は限られた著作権料しか受け取ることができなくなったほか、ファミリープランのような"バンドル"の定義が以前のものに戻るなど、音楽プラットフォーム側に有利なことも少なからず決定しているようです。

このことについて、David Israelite氏は、「次のCRBでは、レーベル収入の割合の増加やバンドルに関する条件を強化するために戦うつもりです」とコメント。またNSAI(国際ナッシュビル作曲家協会)のBart Herbison氏も「自分たちが望んだものではなかったことは悪いニュースです」と述べています。

さらにBart Herbison氏は、「アメリカのソングライターに対する著作権料の遡及増額は、判決が確定してから6カ月以内に支払われることになっていますが、大手音楽プラットフォームはその期間を延長するよう求めており、我々はそれに強く反対しています。CRBがその判断を下すまで、ソングライターがいつ支払いを受けられるかはまだ不明です」との著作権料引き上げに関する懸念を述べつつ、「ますます多くのソングライターがこのビジネスを離れ続けています。音楽プラットフォーム各社が訴えてこなければ、持ちこたえられた人もいたかもしれません。滞納金の支払いが間に合わずに離脱する人をこれ以上見たくありません」とソングライターが抱える問題についてもコメントしています。

アーティストやソングライターがストリーミングで得る収益には、かねてから「十分ではない」ではないという当事者たちからの批判の声も少なくありません。

しかし、今後は今回の著作権料引き上げの実現をきっかけに、その見直しを求める動きもさらに広がっていくことになるのではないでしょうか?

今は誰でも音楽プラットフォームに自分の音楽を配信できるようになったことで、収益化のチャンス自体は広がっています。ただ、その先にこういった動きや議論があることは意外に当事者のアーティストやソングライターもカバーしきれていない気もします。

こういう事務的なことはクリエイターの仕事ではないという声も聞こえてきそうですが、
今は完全に個人規模の"インディー"で活動している人も多いし、自分の音楽のお金周りのこと興味をもっと持ってもいいんじゃないかなと思うことがあります(ちなみに自分は個人事業主なのでこういうお金周りのことは気になります)。

ぶっちゃけ今回のことはアメリカでの出来事なので、あまり日本ではリアリティがないかもしれません。でも、こういった動きやそれにまつわる議論が今の日本でどれくらい進んでいるのかも気になるので、今度改めて調べてみようと思いました。

Source:https://musictech.com/news/industry/copyright-royalty-board-upholds-royalty-rates-raise-publishers-songwriters/

https://djmag.com/news/streaming-royalty-rates-be-increased-us-copyright-royalty-board-confirms

https://wired.jp/2019/05/03/a-guide-to-the-royalties-battle/