本来であれば、6/24~28の5日間は、イギリスを、いや世界の音楽フェスを代表する”This is Festival”な伝統あるグラストンベリーフェスが開催されていたのですが、今年はほかの海外フェス同様、新型コロナの影響を受け、同フェスも開催が中止。今年は初開催から50周年を迎える記念すべき節目の年だっただけに残念に思う音楽ファン、特に英国人は多いことでしょう。
Block9によるグラストンベリーフェス名物エリアを振り返るドキュメンタリー公開
私は以前、ロンドンに住んでおり、その時の同居人がグラストンベリーに遊びにいったのですが、5日間ひたすらキャンプサイトで寝泊まりしていたそうで、ボロボロになって帰ってきたことを思い出しました。その同居人曰く、楽しさに反して、5日間のキャンプはかなり過酷とのこと…。
グラストンベリーフェスといえば、昨年開催時はヘッドライナーの一人として、現在のグライムシーン、ひいてはUKラップシーンを背負って立つ、グライムMCがイギリス出身の黒人ソロアーティストとしては初となるヘッドライナーの一角を務め、大きな話題に。その際にはBanksy(バンクシー)が手がけた黒いユニオンジャックを纏い、ステージに立つ彼の姿も注目を集め、歴史的なパフォーマンスに花を添えました。
またその一方では、裏ベストとして、ロンドン出身のラッパーDaveが、ライブを見ていた素人の少年を急遽ステージにあげるというファンサービスをしたところ、彼と一緒に堂々たるパフォーマンスを見せたことも非常に大きな話題になり、BBCが公開していたハイライト映像にもその様子が収められるなど、一躍その少年は時の人に(のちにアーティストとしてデビューも)。
そして、Dave自身もその年にリリースしたデビューアルバム『Psychodrama』が、マーキュリー賞とブリットアワードの年間最優秀アルバム賞を獲得するなど大ブレイクを果たしたほか、Netflixドラマ『Top boy』で役者デビューしたりとキャリアにおける大確変がおきた年になりましたが、それにはこのグラストンベリーで集まった注目が少なからず関係しているんじゃないかなと思ったりするわけです。
かつてのクィアクラブシーンとレイヴカルチャーをルーツに持つ現代の"クラビング・ユートピア"
そんなグラストンベリーフェスですが、先述のとおり、今年は開催中止となってしまいましたが、グラストンベリーファンのためにオンラインで楽しめる様々なコンテンツが元々の開催時期にあわせて続々と公開されています。
そのうちのひとつが海外音楽メディアFact Magが公開した『Block9: Temporary Alternative Realities』というドキュメンタリー。これは、大小様々な100を超えるステージ、エリアを持つグラストンベリーフェスの中でもアングラ寄りのダンスミュージックにフォーカスした人気エリア、通称”Block9エリア”を手がけるデザインチームBlock9とグラストンベリーフェスの関係がテーマになったもので、これまでにチームが手がけたアイコニックな舞台装置を振り返る内容になっています。
Block9は、2007年からグラストンベリーでエリア演出を手掛けてきましたが、初年度の予算はなんとたった2000ポンド(約21万円)。そんな極小予算でありながら、1979年のニューヨーク・マンハッタンのゲイ・ウエアハウスを舞台にしたクィアパーティーをモチーフにした「NYC Downlow」を初めて演出し、注目を集めました。
ちなみに去年の「NYC Downlow」ではThe Killersの「Somebody Told Me」のエレクトロリミックスのJosh Harris Remixもプレイされていた模様(この曲がヒットしていた当時、私はオーストラリアに住んでいて現地のクラブで毎晩かかっていたので非常に懐かしいですw)。
彼らは現在のクラブミュージックシーンの発展に大きく関わった70年代後半から80年代のゲイクラブシーンとレイヴカルチャーをルーツにしながら現代において、”クラビング・ユートピア”と呼ばれるエリアをグラストンベリーに作り出しました。
Block9は、これまでに「NYC Downlow」のほかに、55フィートの高さの近未来風建物を舞台演出に取り入れた「Genosys」、廃墟ビルに地下鉄の電車が突っ込んだ奇抜なデザインの「The London Underground」や、昨年はイマーシヴな3Dサラウンドシステムを配した「IICON」などユニークな演出を行なっています。
またゲイクラブシーンとレイヴカルチャーは、先述のとおり、彼らのルーツになっているため、そのカルチャーに帰属する人々はもちろん、誰にとってものユートピアな場所になり、多様な価値観が共有されることでも知られています。
アップデートされていく価値観に順応していく
ここ新型コロナ感染拡大以降、多様性についても受け取り方が色々で、たまにこれは解釈としてはボタンの掛け違いじゃないのかなという部分からくる否定的な意見も目立つようになってきたように感じます。
“多様性をお互いに尊重していこう”という社会的な流れはここ最近の新たな潮流ですが、自分のような30代後半の世代だとそういった新しい動きに対する理解を深めていかないとそこからは離れたところでポツンと立ち尽くしてしまうような状態に陥ってしまうと思っています。その意味で以前、Twitterで見かけたこのこくまろさんの発言は、自分たちのような世代こそ、より意識していくべき心がけなのではないかと。
暴力もパワハラもセクハラもモラハラもアルハラもライトな差別も普通に経験してきた世代だから、ついついそんなん普通やんて思ってしまいがち。時代が変わったということを常に強く意識してないと自分もやらかしてしまう可能性は絶対にある
— こくまろ🇹🇭 (@kokumaro_1969) 2020年6月17日
最後に余談ですが、ドキュメンタリー終盤では、Block9が関わったBanksyの”ディストピアなディズニーランド”のDismalandや”世界一眺めが悪いホテル”ことThe Walled Off Hotelも登場します。
またドキュメンタリーの最後にはLarry Hard御大プロデュースの歌モノハウスクラシック、Larry Hard Presents MR. WHITE「The Sun Can't Compare」がめちゃ良い感じでエンドロールともに流れてくるのでハウス好きとしてもかなりエモい気持ちになります。
以上、お後がよろしいようで。
Top Image via Fact mag YouTube
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Reference : https://www.factmag.com/2020/06/24/block9-temporary-alternative-realities/