新型コロナウイルス禍により、世界中が今後、正直どうなっていくのかわからない状況の中、国内でも様々な問題が現在進行形で噴出しています。その中でも深刻な影響を受けている業界といえば、エンタメ業界。音楽とはまた違いますが、かのNGKの大看板、オール阪神巨人の巨人師匠ですらこの1ヶ月の仕事が2回だけだそうで、関西出身の私にはわかりやすく改めてその深刻さが身に沁みる今日この頃です。
エンタメ業界、5月末までイベント中止で昨年の市場規模推計の4割近い損失
東洋経済オンラインによると、なんと3月23日時点で中止・延期などによって売り上げが減少した音楽コンサートやスポーツなどの公演・試合数は8万1000本。仮に5月末まで公演や試合の自粛が続くようであれば、現在中止になっているものも含め15万3000本もの公演・試合の中止もしくは延期が見込まれる状況だそうです。
それに伴い、被害額も甚大なものになっており、中止・延期が5月末まで続くとなれば、最大で3300億円の売り上げ減少。これは去年のエンタメ市場規模推計9000億円の4割近くに相当するとのこと。
現在、全国的にライブハウス、クラブ、映画館、劇場など文化施設は営業を自粛しており、それに伴い、施設運営維持のためのクラウドファンディング、マーチャンダイズ販売、ドリチケ先売りなど様々な施策を行っているのはすでに多くのメディアが取り上げており、中には馴染みのベニューを支援されている方もおられることでしょう。
しかし、そういった状況の中で東京都が発表した感染拡大防止協力金支給制度に重大な問題点があったことが明らかになっています。
無観客配信を行う文化施設を都の感染拡大防止協力金対象から外さないことを求める署名開始
東京都の感染拡大防止協力金支給制度では、4/16から5/6まで都の要請や協力依頼に応じて、施設の使用停止に全面的に協力した中小の事業者に対し、協力金を50万円(2店舗以上有する事業者は100万円)支払うというものですが、なんと先述のような文化施設が”無観客配信”を行った場合、営業していると見なされ、支給制度の対象外とされてしまう可能性があるといいます。
そういった事態を受け、先の文化施設に対する休業補償を訴えていた団体・SaveOurSpaceが”無観客配信”を行う場合も支給の対象にするように訴える署名活動を開始しました。
無観客配信にて感染拡大防止に協力しているライブハウス・クラブ・劇場など文化施設が東京都の協力金の対象外になる可能性があります。飲食店の時短営業と同様に適用を。要項の発表は4/22。都の動きが国や地方自治体の模範になるように全国から署名のご協力をお願い致します。https://t.co/bWDlsUtsJi
— SaveOurSpace (@Save_Our_Space_) 2020年4月19日
都内のどこかに店舗を構えている限り、文化施設に限らず、飲食店にしろ、バーにしろ、休業中でも家賃などの維持費は必ずかかってきます。それに対して、現在は国としての補償は行わなれないものの(それってどうなんだ?)、都など各自治体が休業要請を出す代わりに協力金を支給する流れにはなってきています。とはいえ、支給される額としては心もとない印象が少なからずあり、そうなってくるとやはり、寄付を募る目的の配信やチケットを販売しながらの有料配信など様々な形での”無観客配信”が必要になってくるわけで。
一方、飲食店は「適切な感染防止対策」「営業時間短縮(夜20時から朝5時まで店内飲食をしないこと(テイクアウト営業はそれに限らず)、休業含む)」の2つの協力要請に応じれば支給の対象となり、営業しながらでも協力金支給の対象となります。
都の感染拡大防止協力金支給制度で”無観客配信”は何が問題なのか?
ただ、SaveOurSpaceの署名ページによりますと、”無観客配信”は収益の有無が問題ではなく、下記の理由でNGとされるそうです。
“緊急事態措置期間に無観客配信をしたライヴハウスやクラブは、「アーティストなど店のスタッフ以外の人間が集まった」という理由で、収益の有無とは関係なく「要請を無視して営業した」とみなされて、感染拡大防止協力金の対象外となる、という見解が担当者から述べられました。
担当者によれば、緊急事態措置期間中に店のスタッフが店内に入ることは問題ないが、店と雇用関係にないアーティストが来店して配信を行うのはNGだということです。集まった人数などではなく、店との雇用関係の有無で切りわけるという理由は不明瞭であり、配信に際しても各店は最低限の人数で感染対策を行いながら撮影しています。果たして今回の条件付けは、そうした実情を踏まえたうえでのものなのでしょうか。”
SaveOurSpaceがいうように集まった人数などではなく、店との雇用関係の有無で切りわけるという理由は確かに不明瞭だと思います。
また実情という点で考えれば、最近の”無観客配信”は、ベニューにアーティストが来て行うのではなく、感染拡大防止に配慮した形で彼らの自宅やプライベートスタジオからの配信が主流になってきている印象があります。それがベニューのTwitchなりYouTubeなりのプラットフォームアカウントから配信されているため、感染拡大防止になっていないということはないと思うのですが…。
仮に”店のスタッフ以外の人間が集まった”時期が期間中にあったとしても、現在はそのような状況が主になっているので、そこは行政としても情状酌量というか、感染拡大防止の観点の中でベニューが状況に応じた対応をしていることももっと考慮してもよいのではないでしょうか?
一定の評価がされるべき感染拡大防止協力金だけにもう一歩、文化施設への歩み寄りが求められるのでは?
また先述の署名ページには
“東京都が感染拡大防止という公衆衛生を目的として、感染拡大防止協力金について予算をつけたことはとても評価されるべきことだと思います。しかしながら、運用面についてはきちんと見直してもらう必要があります。東京都には、現在、危機に直面している中小企業、個人事業主が今後も活動を続けられるような後押しとなる政策をきちんと実施し、国や他の地方公共団体の模範となるような活動をしてもらえることを期待しています”
とあるように東京都が感染拡大防止協力金を設けたこと自体は、事業者からしても評価されているだけに、是非とも最近の、”無観客配信”の現状を踏まえた上で、制度の運用を見直してほしいと思います。
ちなみに福岡市では、ライブハウスやホール、演劇場などに対し無観客での映像配信設備などにかかる経費(上限50万円)の支給が決定したことが報じられています。そのことを考えると東京都もこれを採用してもいいと思いますし、現実的に財源が問題で同じことができないというのであれば、なおさらベニューの”無観客配信”は許容するべきではないでしょうか?
なお、東京都の感染拡大防止協力金の募集要項公表と受付開始の発表は4/22に行われますが、SaveOurSpaceのオンライン署名が制度適用対象の見直しにつながるかもしれません。もし、署名ページの概要を読んで納得された方は署名してみてはいかがでしょうか?
感染拡大防止のために無観客配信を行う文化施設を、都の感染拡大防止協力金の対象から外さないよう求める署名は下記リンク先で可能です。
追記:都の感染拡大防止協力金対象の件で進展が! SaveOurSpaceのツイートによると、この件を知った方々のメール、署名を受けて総務局・産業労働局にて配信をした場合でも感染拡大防止協力金に対象に入る方向で調整中とのことです。
とはいえ、SaveOurSpaceでは本件について10万筆の署名を目標にしています。賛同の声が多ければ多いほど、無観客配信を行う場合も感染拡大防止協力金対象となる可能性も高まるはず。賛同の方は、ぜひ署名して本件を実現させましょう。
只今SaveOurSpace に都の議員から連絡がありました。
— SaveOurSpace (@Save_Our_Space_) 2020年4月20日
お寄せいただいてるメール、署名を受けて総務局・産業労働局にて配信をした場合でも感染拡大防止協力金に対象に入る方向で調整中、本日夕刻に都のwebsiteのQAにその旨載せるとのことです。詳細を待ちましょう。
声を上げることは無駄じゃないです。 https://t.co/zJ2Ggb1Pz7
↓のTweet、拡散と署名のご協力を宜しくお願い致します。
— SaveOurSpace (@Save_Our_Space_) 2020年4月19日
明日火曜日には東京都小池百合子都知事の元へ届けます。
署名10万筆を目標にします。
ひとりひとりの声で現状を変えたいです、なるべくたくさんの人に届けたいです。
宜しくお願い致します。 https://t.co/zJ2Ggb1Pz7
追記:ライブハウスで無観客のオンライン配信を実施した場合も、感染拡大防止協力金の対象になることが決定したようです。ただし、三密を避け、ソーシャルディスタンスを保ったオンライン配信の場合という見解が正式に出されるとのこと。
ライブハウスで無観客のオンライン配信を実施した場合も、感染拡大防止協力金の対象になります。ただし、三密を避け、ソーシャルディスタンスを保ったオンライン配信にして下さいという見解が正式に出ました。先ほど、この件で動いてくれていた都議さんから連絡がありました。
— jneanetwork (@jneanetwork) 2020年4月20日
追記:東京都産業労働局の公式サイトに無観客で、オンライン配信用のライブを行うことも問題ないことが記載されました。その場合は、同時に複数の演奏者等を出演させないなど「三密の状態」を発生させない使用に努めていただくことが必要との認識が示されています。また事例も記載されています。
例1) 全面的に営業を休止する場合、協力金の支給対象
例2) 全面的に営業を休止する場合、休業期間中に店内の改修や清掃を実施しても営業したことにはならず、協力金の支給対象
例3) 一般向け営業を休止した上で、施設を使ってバンドが無観客演奏し、オンライン配信する場合、「三密の状態」を発生させない使用であれば、協力金の支給対象
声が届きました。文化を守るための歴史的第一歩です。
— SaveOurSpace (@Save_Our_Space_) 2020年4月20日
三密の状態を避ければアーティスト・スタッフでの無観客配信ライブを行っても都の協力金の対象に入ります。
明日行われる都議会の前に、
都議会(都知事宛)・総務局、産業労働局へ署名を提出してきます。
更なる声を。https://t.co/mDU6W3MOKN https://t.co/oEcdU9Mht8 pic.twitter.com/TnRkXIZRYZ
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Referrence:
https://toyokeizai.net/articles/-/344647
https://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/attention/2020/0415_13288.html
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1007617/1007679.html
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/600364/