もうすでに話題になっていると思いますが今回は、DJやDTMerがAppleの最新Mac OS「Catalina」にアップデートすると色々と不都合が起きるという例のやつに所見を述べてみようと思います。
最新Mac OS「Catalina」がDJとDTMerに与える不都合とは?
まず「Catalina」ですが、かねてから注目されていたことといえば、これまで私たちが慣れ親しんでいた”iTunes”の廃止。この廃止とは従来の多機能化したiTunesをシンプルにすべく、Appleが機能を「ミュージック」、「TV」、「Podcast」の3つに分割することを意味するのですが、そのうちの新音楽アプリ「ミュージック」がDJたちにとってめちゃくちゃ曲者。ですので世のDJたちが困っているという…。
DJソフトとCatalina搭載の「ミュージック」アプリには互換性なし、それってどういうことよ?
ではなぜ困っているかというと、従来のiTunesではそのiTunesライブラリというやつをですね、Traktor DJ、Serato DJ、rekordboxといった有名DJソフトと同期させることが可能でした。そのため多くのDJは、iTunes内でプレイリストを作り、それをDJソフトにエクスポートした上でDJプレイを行うわけなのですが、最新の「ミュージック」ではそれがこれまでのiTunesとは違う仕様になったため、不可能になってしまいました。
君はXMLファイルなるものを知っているか?
ではなぜ不可能なのか? これまでに報じられていることによると、iTunesライブラリはXMLファイルという形式でエクスポートされてきたのですが、「ミュージック」ではその仕様を採用していないため、これまでのようにプレイリストを作ったとしてもXMLファイルを作ることができないのです。
一方、多くのDJソフトは先述のXMLファイルを読み込むことでiTunesライブラリを読み込む仕様になっています。つまり、片方、この場合は「ミュージック」ですね。それが従来とは違う形式を採用してしまったがために、もう一方、つまりDJソフト側で読み込むことができなくなってしまったというわけなのです。
で、最新OSの「Catalina」にアップデートしていしまうとiTunesライブラリが消えてしまうなんて噂もネット上でチラホラ聞こえましたが、これは実は事実ではなく、単純に最新OSにアップデートした場合、iTunesがなくなり「ミュージック」が変わるのみで、大元の音源ファイルさえあれば保管していた曲は再生可能のまま。
そして、問題のDJソフトでもこれまでのiTunesライブラリは使用可能でプレイリストもまた読み込み可能です。その理由はDJソフト自体はXMLファイルを読み込み可能だからというシンプルなものになります。
つまり、これまでiTunesとDJソフトを連動させていた人ならおそらくPC内にXMLファイルが残っているはず。そして、「Catalina」にアップデートしたとしても、OSが変わったというだけでDJソフト自体がつられてアップデートされているわけではないのでこれまでどおりXMLファイルがある限りは読み込むこと自体は可能なのです。
片道切符の一方通行みたいな現象
ただ、ややこしいのは「Catalina」にアップデートした場合のDJソフトと「ミュージック」の連動です。例えば、DJソフトでXMLファイルがあるが故に読み込み可能だったプレイリストをいじったとしましょう。その変更が「ミュージック」で反映されるのか? というと答えは”NO”です。これも理由はすごく単純。ただ単にDJソフトが生成するXMLファイルを「ミュージック」がサポートしていないからというだけです。
そのため普段、iTunesライブラリを使ってDJ用のトラックを管理しているPCDJ、そして細かい管理作業のために管理アプリであるrekordboxを使っているCDJメインのDJは、「Catalina」にアップデートしてしまうと色々と不都合がでてしまうというわけなのです(裏を返せばそれぞれ別々に使っていた人にとっては特に問題はないかと。もし、あるとすればソフト自体が「Catalina」に対応しないという地獄パターンのみでしょう)。
要はiTunesとDJソフトは互換性があったけど、現状、「ミュージック」とDJソフトは互換性がありません。
つまり、アプデ前からあるXMLファイルならアプデ後もDJソフトでも読み込みは可能。でも「ミュージック」はXMLファイルを読み込まないため、DJソフト内のプレイリストをいじって新しくしても、「ミュージック」で読み込めないからこっちでは反映できませんよ〜という感じで、双方で行き来自由だった曲のやりとりが片道切符の一方通行になるというわけです。
そして、「ミュージック」もアプデ前からあるプレイリストをいじってしまうと、新しい形式”「ミュージック」”仕様になってしまいます。だからDJソフトが読み込めるデータを吐き出せなくなるのです。だからこの問題のポイントはとにかくXMLファイル。
今後はDJソフト側が「ミュージック」形式のエクスポートデータを読み込めるようにするか、もしくはこれまでのXMLファイルを「ミュージック」と互換性のあるものに変換できるかようにソフト自体をアップデートすることで問題は解決に向かうのではないでしょうか?
現状の対策は「しない、待つの」
ちなみにDJソフトを制作販売するメーカー、またはその代理店などは、調べてみると今年9月の段階で予想される今回のようなトラブル回避方法として、「Catalina」へのアプデをメーカー側が対応できるようになるまで待つようにと注意喚起しています。
例えばPioneer DJさんはこんな感じでTwitterで注意喚起されていました。
macOS Catalina 10.15 互換性情報https://t.co/D2vVBf7nx8
— Pioneer DJ JPN (@PioneerDJJPN) September 30, 2019
10月下旬までに動作確認を終了し広報します。それまでは更新を控えることを推奨いたします。
macOS CatalinaではiTunesがなくなるため、ライブラリの利用に影響があることが判明しております。詳細確認が完了次第、改めて広報いたします。 pic.twitter.com/qAGtmnb7Tu
Serato DJから各種プラグインなどの販売代理店のディリンゲントさんもこんな感じ。
<サポート情報>
— ディリゲント公式@10/27 M3秋参戦 (@dirigentjp) September 10, 2019
Mac OS 10.15 通称 Catalinaが近日中に発表予定ですが、使用するソフトウェアやハードウェア・ドライバが対応していない場合、製品が使用できなくなりますので、各社の対応発表があるまでは、OSのアップデートをお控えください。#macos #daw #dtm #pcdj情報 #vst #aax #aax pic.twitter.com/ov0Wv1Tw7z
こういうことがあったのを私含めて知らなかった人も多いことでしょう。ただ、私はDJだけでなくDTMerとして活動していたこともあり、"Macの最新OSアプデには安易に飛びつかない"ということを過去の失敗から学んでいます。その結果、個人的にはこういったトラブルには現時点で見舞われておりません。
DJソフトだけでなく、DTMer御用達のAUプラグインあたりはSNSを見ているとかなり読み込まないなどのトラブルも報告されているので、DJソフトを使わないというDTMerももちろん、同じようにメーカー対応待ちが必要だと思います。まあ、DTM歴が長い人にとって、こういった注意喚起は多分、釈迦に説法かと思いますが念のため。
でもぶっちゃけ、今年新しいiPad Airを買ったので話題の”Sidecar”でiPadをデュアルモニター化してみたかった…という気持ちもまあまあ強いです。これ、結構「Catalina」における結構な甘い罠じゃないっすかね。特にデュアルモニター導入して作業している or それに憧れているというDTMerにとっては。
しかもこの動画で実際に「GarageBand」をデュアルモニターでモニタリングするシーンあるし...。
そんなわけで結果的に言えること、それは「メーカー対応を待て」の一言に尽きる。タイムリーさゼロですが奇しくもブルゾンちえみが「しない、待つの」とあのセリフっぽいことをいうイメージが頭に浮かびました。
ですので自分が所有するソフトなりプラグインの制作元のSNS、HPはここしばらくはこまめにチェックしておきましょう。以上、お後がよろしいようで。
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