もうちょっと前になってしまいますが、11/24に東京のWWW Xにて行われた今、大注目のコレクティヴ「Discwoman」の来日ショーケースイベントに遊びに行ってきました。
業界に存在する格差の是正を目指し多様性を尊ぶDiscwoman
Discwomanは、クラブミュージック業界における女性、アーティストやLGBTQのアーティストを積極的にサポートするニューヨーク拠点のコレクティヴ、エージェンシー、プラットフォームで、業界に存在する格差の是正を目指し、多様性を尊ぶといった活動で海外のクラブミュージックラバーの間で注目されている存在。
youtu.be私も個人的にはファウンダーの1人で、今回WWW XでのイベントでもプレイしたUmfangのDJ Mixを聴いて、カッコいいじゃないか! と非常に月並みではありますが思っていたので、この初来日のタイミングでイベントに足を運んだ次第です。
ちなみに会場の客層はというと、どちらかというと自分のようなコアなクラブミュージックおじさんみたいな人はあまり見当たらず、下手したら自分が最年長ではなかろうかと思うくらい若くてお洒落なNeo Tokyo感がある若者だらけで、結構真剣にその日、チャンピオンの無地リバースウィーブスウェットを着用していたことを後悔するレベル。(とはいえ、今っぽい格好が似合うわけでもないのでそのあたりは今更気にしても仕方ないのですが…)。
そのあたりは音楽専門メディアだけでなく、さすがDazedとかHighsnobietyのようなお洒落カルチャーマガジンなどでも特集されているだけあるって感じでしたね。『トレインスポッティング』の裁判所シーンでユアン・マクレガーがガッツレーを履いているのに痺れた世代だけに、あと10歳くらい若くてシュッとしていたらバレンシアがのトリプルSも似合っていたのだろうか? とか夢想…。(そういう例が頭に浮かぶこと自体サブカルクソおじさんだなと思います)
閑話休題。
で、やっぱり1番気になったのは果たしてリアルなDJの現場でのDiscwomanは本当にDJが上手いのか、イケてるのかという点です。最近は世界的なポリコレで男女や人種格差是正はもちろんのこと、多様性をということでジェンダー格差、マイノリティー格差撤廃がエンタメ業界で盛んに叫ばれていますし、個人的にもそういった機運が高まることには賛成だし、日本社会としてももっとこういった動きが目立ってきても良いと思っています。
Discwoman、マジで実力ある説を実感
ただ、イベントにお金を払って遊びに行く側の身からすると、やっぱりちゃんとカッコよくて、楽しめるものにお金を払いたいという気持ちもあります。ですので、この日は音楽、DJがダサいかそうでないかの1点に注目しようと思っていたのですが、結論からするとその日プレイしたDiscwomanの3人のDJ、Umfang、mobilegirl、DJ Haramはめちゃくちゃカッコよかった。
あくまで個人的な感想ですが、きっとその日会場にいた人は予想の5倍くらい現場での彼女たちのプレイにブチかまされたのではないかと。月並みな意見ですが、こういうショーケース的イベントを行うことで実際にその実力を人の目に触れさせるのは本当に大事。仮に「海外のお洒落なカルチャーサイトに持ち上げられているだけでしょ?」とか「ルックスとかでしょ? 」みたいに色眼鏡をかけて最初は見てしまう人がいたとしても、実際に体感するとそういったイジワルな意見や偏見も改められるはずだと思わされました。つーか、それくらいイケてました。
もちろんDiscwomanの活動の根底には、そういったことはみんなわかってはいるものの、やはり先述のような格差が業界内には依然としてはあるからこそ、是正するべきという行動原理があってのものだと思います。特にDJ業界は実際問題、これまでにもよく言われていますが日本と比較して進歩的な印象がある海外のシーンにおいてもまだまだ男性社会だということは事実なので並大抵の努力ではここまで到達するのは難しかっただろうし、苦労も多かったことでしょう。でも今ではあのフォーブス誌が選ぶ2017年度版「世界を変える30歳未満の30人」の音楽部門にも選出されているくらいなので改めてマジ感嘆ですよね。
ただ、言わせて頂くなら今回、ちゃんとお金を払って見に行った側の私としてはジェンダーがどうとかそんなことは関係なく、彼女たちのプレイはしっかりと支払ったエントランス料に見合うものであり、対価として十分楽しめるものでした。
そういう意味で実力のあるメンバーを世界各地から集めて(WWW XのイベントページによるとこれまでにDiscwoman関連イベントには250人以上のDJとプロデューサーが参加、14名のDJ/プロデューサーがエージェンシーに所属しているとのこと)、世界中でショーケースをして… というDiscwomanのコレクティヴとしての活動の成果は確実に出ていると思いますね。
youtu.be 芸事の評価指標は、やっぱりそれが1番公平かつシンプルだし、本当に良いと感じる人が増えていくことでこれまでの状況もそれに応じて変わっていくなと。だからこそ、色眼鏡を外した状態で他人から見られる真のDJとしての実力の高さが重要なわけで…。その点でいえば、少なくともその日の彼女たちのプレイはあくまで自分の中での”カッコいい”の基準ではありますが、余裕でクリアしていたし、プレイスタイルも音楽も海外の最先端という感じで大満足でございます。
ここがイケてた! 3DJのハイライトを振り返る
そんなイベントのハイライトをざっと説明していくと、まずベルリン拠点のmobilegirlは、序盤はゆるいアート系というか辺境ダンスホール? みたいな曲でビルドアップ。そこから徐々にBPMが上がりだし、途中でトランスがかかりそうな雰囲気になり、これはSystem Fとか投下か? と思っていたらまさかの坂本龍一御大の「戦メリ」トランスリミックス登場で会場はブチ上がり。100%タイミングをうかがっていたであろうサービス曲をブチ込んでくるところが良かったです。
次にUmfang。すでに"テクノの教会" aka Berghain(ベルグハイン)のような有名クラブやDekmantelのような有名フェスでもプレイしている彼女はゴリゴリのテクノセットを披露。途中、往年のJeff Miles(ジェフ・ミルズ)並みにミニマルテクノになる展開などもあり、ガッツリハメ系のDJプレイでした。
彼女は地元ブルックリンにて「Technofeminism」なるレジデントパーティーを持っていたりするそうですが、その日、東京のパーティーピーポーもしかと”テクノフェミニズム”を感じ取れたのではないかと。あとトラックメイカーとしても名門「Ninja Tune」からリリースという実績の持ち主。『SYMBOLIC USE OF LIGHT』なるLPには「Where is She」というDJ使いしやすそうな曲のほか、ノンビートのアンビエント曲の「Path」、「Pop」なども収録されています。
そして、最後にDJ Haram。彼女がぶっちぎりで個人的は1番良かったです。ニュージャージー出身でフィラデルフィアを拠点とするだけあってか、B-more、Jersey Clubなどを中心にベースミュージックをプレイするのが特徴とのことでしたが、この日もそっち系からDubstep、Future bass、Trapをセンスよくプレイ。
www.instagram.comPrinsess Nokia「Morphine」、Nicki Minaj(ニッキー・ミナージュ)「Rich Sex」などポップフィールドの曲もタイミングよく投下してフロアをアゲるところは、センスの塊だなと思わされました。
最後に改めて、DiscowomanのDJたちのプレイは本当に素晴らしかったと言わせて頂きます。また是非日本でショーケースイベントを開催して、そのDJとしての類稀なる実力を遺憾なく発揮してほしいものです。以上、お後がよろしいようで。
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