SZA(シザ)が昨年リリースしたアルバム『CTRL』収録曲の「Doves In The Wind feat.Kendrick Lamar」のMVを公開していました。
香港映画よろしくな「Doves In The Wind」MV
MVの舞台は砂漠になっており、映像では忍者が登場したり、ゲストのKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)が謎のカンフーマスター的立ち位置で出演。
SZAを気功による衝撃波? みたいなもので攻撃したり、香港映画よろしくのワイヤーアクションによるバトルシーンなんかもあったりで、以前公開されたMigosの「Stir Fly」に近いテイストのちょっとしたショートフィルムになっています。
そんなMVなんですが、印象としてはアメリカ人のヒップホップ系アーティストはホント、カンフー映画好きだよねという感じです。例えば、代表的なところで言えば、Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)だったり、そういやNetflixドラマ『ゲットダウン』でも登場人物のDJのシャオリン・ファンタスティックが登場していたりと…。
ヒップホップとカンフーの関係
そのことについてちょっと調べてみたところ、そっち系のアーティスト、特にヒップホップ黎明期のレジェンドであるGrandmaster Flash(グランドマスター・フラッシュ)周りがカンフー推しなのは、Ambema Hip Hop Timesによると
今以上に激しい差別を受けていた当時のアフリカ系住民の間で、非白人スターが主役を務めるカンフー映画が人気を集めていたから。この流れはやがてフーシュニッケンズやウータン・クランといったカンフーギミックを売りにしたラップグループの誕生へと繋がっていく。
とのこと。それが先述の『ゲットダウン』や「Stir Fly」のMVにも踏襲されていて、ひいてはこの「Doves In The Wind」MVにも影響与えているでしょうね。
MVはアジア文化の盗用なのか?
しかしながら、最近のアメリカのポリコレから考えると、日本にルーツを持たないSZAがこの設定でMVを制作するのは、「文化の盗用」として捉えられかねない感じも少なからずあり、Noiseyは、ウェス・アンダーソンの近未来の日本をテーマにしたストップモーションアニメ映画『犬ヶ島』を引き合いに出しながら、少しばかりそういったことにも触れるニュアンスの記事を公開していました。
ただ、先述のカンフー映画とヒップホップの関係に関するくだりを考えた場合、これはある意味でブラックカルチャーやヒップホップカルチャーの引用に解釈次第ではなるのではないかなと個人的には思います。
端的に言って、海外で炎上した例えばモデルのカーリー・クロス問題なんかは日本人からしたら、そこまで問題と思わない人のほうが実際には多かっただけでなく、なぜそれが問題になるのか? ということを逆に疑問に思う人がいたくらいなので、これもそんな「文化の盗用」というような仰々しい言葉どおりの意味として捉える人は少なそうです。
よく言えば、日本や香港映画に対するオーマジュであり、悪く言えば「文化の盗用」になるというわけですが、引用される側の文化圏の対象者が1人というわけではないので、この辺りの線引きは非常に難しいと思います。
*文化の盗用については下記の記事でも触れています↓
『アフロサムライ』的アメリカ人の間違った日本やアジア観
ちなみに、私的には、若干設定などは違うものの、一般的なアメリカ人が考えるような間違った日本観を逆手にとったアニメ『アフロサムライ』が、このMVを観ていると頭に浮かびました。
なお、私的なハイライトはコーチェラ2018のライブでもトランポリンでトンデモジャンプを見せていたSZAが、Kendrick Lamarとともにワイヤーアクションであたかもロケットのように垂直に浮かび上がるシーン。なのでコーチェラでのジャンプは、このためのネタフリだったのか!! と勝手に勘ぐっています。
「文化の盗用」など小難しいことにも触れましたが、私的には『アフロサムライ』のくだりでも説明したようにこのMVは、間違ったアメリカ人の日本観およびアジア観、もしかしたら海外の人にとっては「このMV、なんかクールだぜ!」ってなるようなものであり、日本人からしたら、間違ってるところが逆にコミカル、存在事態がギャグ的なものとして捉えられる程度でいいかなーと。実際のところ、例のロケット噴射的なシーンはちょっと笑えましたので…。
あくまで私の意見としてはそんな感じです。気になった方は是非1度MVをご覧ください。
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Images via SZA
Source: Noisey, Abema Hip Hop Times