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Y2Kリバイバルでエレクトロクラッシュやニューレイヴが復活!? “ネオエレクトロクラッシュ/ニューレイヴ”な音楽とは

昨年頃からポップカルチャーの分野において、2000年代前後の流行が再解釈され、その人気が復権する「Y2Kリバイバル」という現象が見られるようになってきましたが、2023年はその傾向がさらに加速している印象を受けます。

音楽シーンでもその傾向は目立ち始めており、今年3月に東京を拠点に活動するアーティスト/クリエイターによるコレクティブ​・balaがY2K期に流行したフィルターハウス要素を取り入れた楽曲「barla」をリリースして注目を集めるなど、ここ日本の音楽シーンにおいても“Y2Kリバイバル”はトレンドのキーワードになりつつあるように感じます。

 

 

このようなY2K、もしくは00年代に流行した音楽性を取り入れた音楽は2020年代頃からメインストリームの音楽シーンでも徐々に見られるようになりました。その代表的な例として挙げられるのが、“2000年代風の80sリバイバル”を思わせるDua Lipaのアルバム『Future Nostalgia』(2020年)やそのクラブリミックス版『Club Future Nostalgia』(2020年)、似たようなコンセプトのKylie Minogueのアルバム『Disco』(2020年)、フィルターハウスを取り入れたLady GagaとAriana Grandeのコラボ曲「Rain On Me」(2020年)などです。

Future Nostalgia (Bonus Edition)

Future Nostalgia (Bonus Edition)

  • Dua Lipa
  • ポップ
  • ¥1833
Club Future Nostalgia (DJ Mix)

Club Future Nostalgia (DJ Mix)

  • Dua Lipa & The Blessed Madonna
  • ダンス
  • ¥1833
DISCO (Deluxe)

DISCO (Deluxe)

  • カイリー・ミノーグ
  • ポップ
  • ¥1935
Rain On Me

Rain On Me

  • レディー・ガガ & アリアナ・グランデ
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

一方、クラブシーンに目を向けると2020年にClaptoneが00年代エレクトロブームの先駆けとなったMyloの名曲をカバーした「Drop The Pressure」をリリースしてヒットさせたほか、2021年には2000年代半ば頃のクラブシーンでヒットしたJunior Jackによるエレクトロディスコハウス「Stupid Disco」のリミックスが複数リリースされるなど、“あの頃”感のある音楽がにわかに注目を集めました。

Drop the Pressure

Drop the Pressure

  • Claptone & Mylo
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Stupidisco (Elektrik Disko Remix)

Stupidisco (Elektrik Disko Remix)

  • Junior Jack
  • ハウス
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

Soundmain Blogではこれまでにドラムンベース、UKガラージ、ダンスパンクなど同じくY2K期に流行した音楽ジャンルが復活傾向にあることをご紹介してきましたが、最近では、その流れと呼応するかのようにY2K期や2000年代に流行したエレクトロクラッシュ/ニューレイヴというジャンルの人気も徐々に復活しつつあります。

そのような音楽に関してはまだ明確なジャンルとしての括りや定義はありませんが、最近、筆者はそれらを“ネオエレクトロクラッシュ/ニューレイヴ”とカテゴライズして、「Neo Electroclash」というプレイリストを公開しました。今回はそのプレイリストを参考資料としながら、この新しい音楽トレンド候補をご紹介したいと思います。

エレクトロクラッシュ/ニューレイヴとは?

その前にまず、それらのオリジナルであるエレクトロクラッシュとニューレイヴという音楽ジャンルについて簡単にご説明します。

エレクトロクラッシュは、90年代に起きた80年代に流行したニューウェイヴ、ポストパンク、エレクトロ(EBM)、ディスコといった音楽ジャンルの再解釈的音楽です。代表的なアーティストとして、挙げられるのはDJ HellやMiss Kittin & The Hacker、Fischerspooner、Chicks on Speed、Peachesなどです。

NY Muscle

NY Muscle

  • DJヘル
  • テクノ
  • ¥1375
99 Cents

99 Cents

  • チックス・オン・スピード
  • ポップ
  • ¥1630
#1

#1

  • フィッシャースプーナー
  • エレクトロニック
  • ¥1630

またニューレイヴは、2000年代前半に起きたダンスパンク、ニューウェイヴ、ポストパンクの流れを汲んだロックのサブジャンルのひとつであり、エレクトロクラッシュや2000sエレクトロとも共振した2000年代半ば頃に生まれたジャンルです。代表的なアーティストとして、挙げられるのはジャンルの提唱者でもあるイギリスのバンドKlaxonsやNew Young Pony Club、Hadouken!、CSSなどで、インディーロックとエレクトロのクロスオーバー的な音楽性が特徴として挙げられます。

Myths of the Near Future

Myths of the Near Future

  • Klaxons
  • ロック
  • ¥1935
Cansei de Ser Sexy

Cansei de Ser Sexy

  • Css
  • オルタナティブ
  • ¥1528

では、ここで本題に。筆者が“ネオエレクトロクラッシュ/ニューレイヴ”と呼ぶ音楽をご紹介します。

コーチェラ2023でも披露! BENNE「Green Honda」

まず最初にご紹介したいのが、ニュージーランド出身のアーティスト、BENNEの「Green Honda」です。BENNEは、今年4月に2週にわたってアメリカで開催され、日本でも大きな話題になったコーチェラ2023の初日日程に出演しており、そのステージでは「Green Honda」も披露されています。

基本的に筆者が“ネオエレクトロクラッシュ/ニューレイヴ”とカテゴライズする条件は、”聴いていると今が2000年代なのか、2020年代なのか、時代感覚がバグり出しそうなくらい、あの頃感がある音楽”ですが、この曲はばっちりその条件に当てはまっていると思います。

youtu.be

Green Honda

Green Honda

  • BENEE
  • オルタナティブ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

The Dareが蘇らせたY2K・NYエレクトロクラッシュサウンド

先述のエレクトロクラッシュを代表するアーティストであり、当時のNYにおけるこのシーンの牽引役として知られていたのがFischerspoonerです。2001年の『#1』や2005年の『Odyssey』は、エレクトロクラッシュの名盤として今に伝わる名盤ですが、そのチープな電子音とダンスパンクの美学を踏襲したかのような音楽性を持つのがThe Dareです。

The Dareは、元々はTurtleneckedというインディーロックバンドで活動していたHarrison Patrick Smithが2022年8月に始動させたプロジェクト。2000年代のニューヨーク系ブログハウスの雰囲気を感じさせるダンスパンクと評されるほか、デビュー曲「Girls」のMVは、2000年代ニューヨーク・パーティーシーンのノスタルジアを感じさせつつも、現在の同地でのパーティー事情を反映したクィアでファッショナブルなバイブスにアップデートしたものと海外メディアが評しています。

youtu.be

Girls

Girls

  • The Dare
  • オルタナティブ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

オージーエレクトロ直系!? 2020年代ロッキン・エレクトロ

イギリスでニューレイヴが勃興した2000年代半ば、その影響はすぐにオーストラリアにも飛び火し、そのフォロワーとも言えるCut CopyやThe Preset、Van Sheといった「Modular」系バンドやその周辺バンドのMidnight Juggernautsらをスターダムに押し上げました。これらのエレクトロ系バンドの活躍により、オージーエレクトロは当時、一大ムーブメントとなり、世界中のエレクトロ系クラブナイトや音楽フェスを席巻するようになりました。


その後ロッキン・エレクトロを見かけることはあまりなくなりましたが、最近になってアンダーグラウンドなシーンで復活を遂げているようです。その例と言えるのが、LA拠点のバンドThe Hellpやそのリミックスも手がけるdamon r.。彼らのディストーションがかかった攻撃的なシンセサウンドは、Van Sheがリミックスを制作する際に使用していた名義“Van She Tech”楽曲をとりわけ彷彿とさせますが、damon r.によるThe Hellp「Undertow」のリミックスはまさにそのテイストを継承したかのような楽曲になっています。

Undertow

Undertow

  • The Hellp
  • エレクトロニック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

オンラインで注目! Y2Kエレクトロ×ウィスパーボイスな「Mausipop」

北欧出身のシンガーAnnieが2004年にリリースした「Heartbeat」は00年代のエレクトロポップを代表する1曲です。同曲でのAnnieのシルキーなウィスパーボイスは時代を超えて愛される曲であり、エレクトロポップの枠にとどまらず2000年代ポップスのコンピレーションやプレイリストに収録されることも少なくありません。そんな同曲のテイストを踏襲しているのが2022年にリリースされたBaby B3nsの「Baby Blizzard」。こうしたY2Kエレクトロ×ウィスパーボイス・リバイバルな楽曲スタイルに対して、今のところ明確なジャンル名は見当たりませんが、Baby B3ns本人は自身の音楽性を“Mausipop”と称しています。

youtu.be

ベルリンを拠点に活動するBaby B3nsは、以前からファッションアイコン/インフルエンサーとしてオンライン上では有名だった人物(一説によればKanye Westからも注目されているとか)。しかし、現在はミュージシャンとしての活動に注力しており、「Baby Blizzard」以降も定期的に新曲を発表。これまでに自身のベッドルームを360°映像で撮影して、室内でDTMやギターを演奏するBaby B3nsの姿を確認できるユニークなMVも公開されている「Herzcrash」、Corey Hartによるニューウェイヴの有名曲であり、かつてはエレクトロの代表的プロデューサーのTigaもカバーした「Sunglasses At Night」をリアレンジしたドイツのプロデューサーImanbekとのコラボ曲「Sunglasses」などをリリースしています。

Baby Blizzard

Baby Blizzard

  • Baby B3ns
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Herzcrash

Herzcrash

  • Baby B3ns
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes
Sunglasses

Sunglasses

  • Imanbek & Baby B3ns
  • ダンス
  •  
  • provided courtesy of iTunes

Neo Electroclash Playlist

2020年代に入ってからは今回紹介した楽曲のほかにも、2000年代に人気を博したMiss KittinやPeachesなどの「ガールズ・エレクトロクラッシュ」を彷彿とさせるような楽曲から、Surkinの「サンプルチョッピング・エレクトロ」、Crookersに代表される「フィジェットハウス」を思わせるような楽曲が続々リリースされています。

そういった楽曲が気になった方は、ぜひ筆者のプレイリスト「Neo Electroclash」をチェックしてください。

open.spotify.com


文:Jun Fukunaga

*オリジナル掲載先のSoundmainサービス終了により本サイトに移管(オリジナル公開日は2023.05.10)