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話題のMiley Cyrus「Mother's Daughter」が普通にかっこいいと感じたことから考えた音楽の評価軸

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正直いうと、『シークレット・アイドルハンナ・モンタナ』のイメージが強すぎて、自分の中ではなんとなく知ってる風であまりリリースされる曲の印象がなかったMiley Cyrus(マイリー・サイラス)。

 

先月開催されたグラストンベリーフェスでは、父親でカントリー歌手のBilly Ray Cyrus(ビリー・レイ・サイラス)、そしてそのコラボレーターのLil Nas Xと自身のステージでゲストに迎えたことも話題になりましたが、彼女の話題といえばMVが公開後、爆速で話題になっている新曲の「Mother's Daughter」です。

Miley Cyrus「Mother's Daughter」がエンパワメントすること

ざっくり説明するとこの曲は、”他人の意見は気にせず、我が道を突き進む女性、LGBTQの強さ”をエンパワメントすることをテーマにした曲で、とにかくMVのビジュアル、絵力が強いこと、強いこと。

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Miley Cyrus自身も女性器を模した真っ赤なラバースーツを着用。

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自身の自由を”ハレルヤ”という言葉に乗せて歌ったり、プラスサイズのヌードモデルや、車いすの黒人トランスジェンダー、レズビアンのスケートボーダー、トランスジェンダーモデルなどLGBTQ界隈の有力アクティビストが多数ブッキングされていたりと昨今の多様化が叫ばれる非常に今っぽい内容になっています。

「Mother's Daughter」はそもそもビートが普通にかっこいいと思った件

この曲が収録されているEP『She is coming』にはほかにも重量808キックが鳴り響くGhostface Killah(ゴーストフェイス・キラ)との「D.R.E.A.M. feat. Ghostface Killah」、Swae Lee(スワエ・リー), Mike WiLL Made-It(マイク・ウィル・メイドイット)とのサブベース鳴りすぎかつメロディーが超エモいダンスホール曲「Party Up The Street」が収録されているのですが、その中でもコラボなしで、EPのリード曲となっているこの「Mother's Daughter」ですが、ビジュアルのインパクト抜きに普通に聴いてもビートのかっこよさはかなりのものだなと思っています。

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個人的におもしろいなと思ったのは、StereogumによるこのMV評。同MVでのMiley Cyrusの動きをMissy Elliott(ミッシー・エリオット)、昔のLady Gaga(レディー・ガガ)を彷彿とさせるといった感じで引き合いに出しているんですが、その比較対象の1人にMarilyn Manson(マリリン・マンソン)先輩がふくまれているのは、かなりいい得て妙な感じです。いわれてみれば、確かにこの動き、Marilyn Mansonっぽい(笑)。

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あとはこの強烈セクシー路線は、かつてのBritney Spears(ブリトニー・スピアーズ)の「Toxic」を彷彿とさせますね。これまでのMiley CyrusのMVは、セクシーというよりはガーリーにまとまっていた印象が強いので、ここからもっとアーティーになっていくぞという宣言みたいな感じなのでしょう。

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人が芸事で生み出す成果物の判断基準にジェンダーフィルターは不要だなと思う

今やポップスに限らずダンスミュージックシーンでも男性上位の業界慣習に関して、女性アーティストたちの多くが男性にできることは自分たちにもできると女性蔑視の改善に取り組んでいます。そういったことを考えると評価されるべきなのでは、アーティストとして生み出す作品の質、クールさであり、ジェンダーなどの前情報フィルターは無用なわけで…。

まあ、こういうエンパワメント、フェミニズム系的な立ち位置の作品だと、人それぞれの価値観、ポリコレ観によってまた見方は変わってくるかと思いますが、「Mother's Daughter」MVでは、登場するそれぞれのマイノリティーたちの美しさ、価値は、見た人が自由に受け取ってくださいよというメッセージも込められているのではないかなぁと。

そういうわけで、Miley Cyrusは女性というシスジェンダーをベースにしたセクシャルな魅力をバーンと表現。(性的嗜好としてはパンセクシャル、全性愛者だそうですが)つまり、彼女の場合は、そのクールさの出どころには女性というジェンダーが確かにあったりするわけですが、その根幹を否定せずに誰しもがジェンダーにとらわれることなくクールなことができる。だから、そういうフィルターは不要っす! というメッセージを打ち出しているように私からすると思えるわけです。

 

個人的には多様性を重んじる社会的風潮はウェルカムなんですが、その多様性の捉え方が人ぞれぞれズレが大きいなぁと感じることが多い昨今。額面通りの”差異”の受け入れ方をアレコレ論じる前に根本的な部分、本質的な部分にもっと焦点を当てて、判断してくださいよ〜と、Miley CyrusはこのMVを通して、我々にメッセージを発信しているように感じます。そういう意味でMVにも出てくる昨今、人気の超フェミニストを意味するスラング「Feminist AF」にも説得力があるのかなと。

余談ですが、この「Mother's Daughter」MVでもMiley Cyrusは舐めるように舌を出すセクシーな仕草を見せていますが、これ、グラストンベリーでもやっていた写真が公開されているので最近の彼女のシグネチャーパフォーマンスという感じです。以上、お後がよろしいようで。

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Top Image via Miley Ray Cyrus

Reference: Stereogum, Frontrow