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「Gummo」でブレイクしたラッパー・6ix9ine、そのヒットの裏側とSoundCloud Rapの今後

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2017年は、メジャーでもアンダーグラウンドでもヒップホップがともかく注目された1年だったなと思います。Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)、Drake(ドレイク)、Migos(ミーゴス)それまでにすでに知名度を得ているラッパーから、Lil Yachty(リル・ヨッティ)やらPlayboi Carti(プレイボーイ・カルティ)、Lil Uzi Vert(リル・ウージー・ヴァート)といった20歳そこそこのラッパーまでもが大活躍。まさに空前のヒップホップフィーバーが起きた年でした。

2017年の音楽シーンを変えたSoundCloud Rap

そんな2017年のヒップホップシーンで注目なのが、SoundCloud Rapと呼ばれる新興のネット発のヒップホップ。このジャンルについて大きめに捉えると先述の若手ラッパーもその枠に入るのですが、このジャンルでは特にXXXTentacion(XXXテンタシオン)、Lil Pump(リル・パンプ)といったまだ10代後半のラッパーたちがトラディショナルなヒットチャートでも上位に曲を送り込んだことが注目されました。

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自身をミーム化するプロモーション

SoundCloud Rapのアーティスト達は頻繁にSNSを使い、自分のキャラクターをPR、自身をミーム化することで、ネット上で多くのファンを獲得。そのファンベースが彼らのSoundCloudやYouTubeなどの膨大な数字の再生数を支え、それがまた話題になり拡散、バイラル化することで更にヒット曲化するという独自のプロモーションとビジネスモデルを作り上げました。現在ではその話題性に目をつけたメジャーレーベルが、こぞってこのSoundCloud Rapのスターたちと契約。メジャーの資本に支えられたインフルエンサーマーケティングも行われており、彼らの曲はこれまで以上に大きなバズを呼んでいます。最近だと、YouTube再生数が3億回を超えるLil Pumpの「Gucci Gang」はその最たる例でしょう。

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このシーンのラッパーは先述のとおり、ともかくSNSで自分の情報を日常的に発信しています。その中でも特にライブストリーミングを含む動画投稿は自己PRのためには欠かせないものになっています。このシーンにおけるSNS投稿とは自分たちの人気を左右するものであるため、話題になったり、物議を醸すようなSNS映えするインパクトがある投稿を行うことは必須。そのため、ドラッグをキメる写真をアップしたり、破天荒で悪目立ちするような動画が盛んにアップされています。例えば、Boonkなんかはその類です。

そういったある意味「田舎のヤンキー的所業」というか、日本でも以前、Twitter上で「バカッター」と呼ばれたような投稿がバイラル化。そこから上手く自分のSoundCloudなんかに誘導して、再生回数を増やすという図式が出来上がっているのですが、最近ではそれも行き過ぎた状態になってきています。

XXXTentacion、Lil Pumpに続くスター・6ix9ine

その最たる例が、XXXTentacion、Lil Pumpに続くSoundCloud Rapスターで、以前はTeka$hi6ix9ineという名義で活動していた21歳のブルックリンを拠点とするラッパー・6ix9ine(シックスナイン)。彼はハーモニー・コリンの映画『Gummo』にインスパイアされた「Gummo」という曲を今年10月にリリース。100万人を超えるInstagramのフォロワーを持つため、曲はリリース後、ビルボードのシングルチャートで58位をマークしたり、公開後1ヶ月でYouTubeの再生回数が2900万回を突破するヒット曲に。さらに今月はそのチャートで13位まで上昇するなど話題になりました。今年のCardi BやLil Pumpのヒット曲のチャートアクション然り、ストリーミング全盛の現代においては、こういったバイラルヒット系曲は、バズの波が広がることで、発売直後から尻上がりにチャート上昇していくようです。

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フェイスタトゥー、カラフルなヘアスタイルというルックスの6ix9ineがイモジャーを着て、ギャングっぽい男性達に囲まれラップする姿を写すMVは確かに衝撃的ですが、ともかくこのヒットにはこれまで彼が行ってきたSNSでの物議を醸す破天荒ぶりPRが功を奏していると言えます。

未成年との淫行などインモラルな行動が目立つ

6ix9ineはこれまでにSNSで、「HIV」、「Pussy」と書かれた服を着る自分の写真や、未成年との淫行を思わせる写真の公開などきわどい投稿を行うことで自身をミーム化。さらに同じく有名なSoundCloudラッパーのTrippie Reddから彼にPi'erre Bourneが提供した曲を無断で譲り受け、先述の「Gummo」に使用。未成年への淫行疑惑もあり、激しく批判、絶縁宣言されたことも話題になりました。

 

このように一部の例を挙げるだけでも歩くゴシップ、インモラルのような人物なのですが、そこがファンには受けているのでしょう。(というよりは”バカッター”を晒して拡散する心理に近いのかもしれませんが)その証拠にYouTubeで検索すると彼のこれまでの投稿をキャプチャーした様々な動画を発見することができます。そのほか、YouTuberによる6ix9ineの解説動画も大量にあります。

SoundCloud Rapのからくり

YouTubeもユーザーが収益化できるので、こういう物議を醸すようなコントラバーシャルな人物かつデジタルネイティブが大好きな要素を持つ人物をネタにすれば再生回数を稼げます。ソースとしてのラッパー、それに乗っかるYouTuber、収益の差はあれどデジタルな世界でお金が回るというこの図式、今っぽいですね。

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そう考えると一次ソースになるラッパーは、”自己PR”がバズるほどに自分に興味を持つ人が増えていく。それを拡散して収益化するインフルエンサー層も出てくる。結果、より多くの人が興味を持つ。それがSoundCloudに流入。ファンベースとして活動を支えるというわけです。それがメジャーレーベルを釣る良い餌であり、レーベルとしてもそこが旨味。なぜならすでにスター化している新人を手に入れられるわけですからね。そりゃ歌詞がほとんど「Gucci Gang」で2分くらいの短い曲でも契約するってわけですよ。そういう意味ではSoundCloudは「金のなる木」と言えるでしょう。

そしてさらに最近ではレーベル側が契約したラッパーの人気をさらに拡大させるためにインフルエンサーを使ったプロモーションも行っていることも明らかになっています。なので意外とこういう動画をアップしているYouTuberはアーティストのプロモーションチームから依頼を受けて解説しているのかもしれませんね。

個人的にSoundCloud Rapの曲の膨大な再生回数ってどうなってんの? とあまりこのシーンに詳しくない頃は不思議に思っていました。しかし、色々調べ出すと上述のような図式になっていることに気づきます。SoundCloud Rapはそういう意味ではこれまでの音楽シーン、とくにプロモーションとビジネスを変えた音楽だと言えるのではないでしょうか?

未成年との淫行行為について嘘をついたと叩かれる

話を6ix9ineに戻して。ともかくラッパーとしてブレイクした彼は今月、新曲「Kooda」をリリース。こちらもYouTubeではこの記事を執筆している時点で2900万回以上再生、SoundCloudでも10万回以上再生されています。

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しかしながら、6ix9ineに関する今最も注目されていることは先週末報じられた、例の未成年女子への淫行についてのこと。これは先月、公開されたDJ Akademiksによるインタビュー動画が事の発端です。

6ix9ineはインタビューで、その疑惑の女性の年齢が本当は19歳と聞かされており、それは今から3~4年前に起きた出来事で自分は淫行には及んでいないと語ったのですが、実は女性は13歳であり、その行為が行われた当時彼はすでに18歳だったことが、メディアJezebelの調査によって発覚。そのため6ix9ineはインタビューで嘘をついていたと叩かれています。

事件は2015年に立件されており、Jezebelが入手した調書によると、判決は今年10月20日まで延期されていたようで、再度来年1月30日まで延期されていたようです。また現在は保護観察処分中で、GED(後期中等教育課程修了者程度の学力を有する試験)を受けることや、女性や子供を使った性的かつ暴力的なSNS投稿の禁止、2年間の犯罪行為の禁止、淫行被害者とその家族に謝罪の手紙を書くことを言い渡されているそうです。

ちなみに6ix9ineのケースは、ニューヨーク州性犯罪関連条文によると「18歳以上である彼又は彼女が15歳未満の他人と性交したとき」は"第二級強姦罪"となることが調べてみてわかりました。

なお、それらの条件をすべてパスした場合は3年間の保護監察で済むそうですが、もし出来なかった場合は1~3年間収監されることになるとのこと。さらに判決日までに新たに犯罪を起こさなければ性犯罪者登録も免れるとのこと。

止まることが許されないSoundCloud Rapシーン

Meek Mill(ミーク・ミル)が保護観察処分中に問題を起こしたことを理由に刑務所送りにされる判決が出された昨今の事情を考えると、6ix9ineはこれまでのように過激なSNS投稿を自重すべきなんでしょうが、それをするとその過激さを求めていた彼のファンたちは離れてしまうことになるのではないでしょうか?

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何にせよ、常に話題を提供しないと、変わりはすぐに見つかる的な土壌になっているため、この界隈では”足を止めたらそれまで”ということが懸念されます。トラック的にもキャッチーなフレーズの連呼でリリックに深みがないとコアなヒップホップリスナーからは批判される音楽でもあるので、一発屋になる可能性は相当高いです。(これはこのシーンの全ラッパーに言えることですが)そのことについては、なんだか「ろくでなしブルース」の東京四天王が1人、葛西の名言、そこはかとなく哀愁を感じる「止まれねーんだよ」が頭に浮かびます。

セクハラに揺れるエンタメ業界での特殊な立ち位置

現状、エンタメ業界ではハリウッドのセクハラスキャンダルをきっかけに、女性に対して非道だと思われる行為を行う人物は干されていく傾向にありますが、それに反して音楽業界の一部、つまりSoundCloud Rap界隈では例えば、XXXTentacionの妊娠していた元カノ暴行など、それすらネタというか話題になるかなりクレイジーな状況です。

今まではアングラだっただけにある意味許されていましたが、メジャーになることで世間の声はこれまでとは変わる可能性もなきにしもあらず。SoundCloud Rapは、度々、現代のパンクと称されますが、パンクの存在を世に知らしめたSex Pistolsの活動期間はわずか3年ほどと短命でした。そもそもVaporwaveの遺伝子を受け継ぐ、ネット音楽の一種であるだけに時代の仇花感はかなりあると言えるだけに、来年もこの音楽業界を変えてしまったムーブメントが続くかどうかが気になるところです。

ちなみに6ix9ineは、現在、Swizz Beatz(スウィズ・ビーツ)、Fetty Wap(フェティ・ワップ)とレコーディング作業も行なっているそうな。果たしてどうなることやら。それはそれで気になります。

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Text by Lady Citizen aka JF
Top Image via 6ix9ine Facebook
Source: hnhh, Billboard, Jezebel