噂されていたThe WeekndのEP『My Dear Melancholy』が無事サブライズリリースされました。(無事にサプライズというのもアレですが)。
『My Dear Melancholy』ジャンルを横断した参加プロデューサー陣
内容の前にまず触れておきたいのが参加プロデューサー陣。とりあえず一覧にしてみると下記のようになります。
My Dear Melancholy参加プロデューサーリスト
1. Call Out My Name (prod. Frank Dukes)
2. Try Me (prod. Mike WiLL Made-It, Marz, Frank Dukes & Daheala)
3. Wasted Times (prod. (Frank Dukes co-produced by Skrillex)
4. I Was Never There (prod. Gesaffelstein & Frank Dukes)
5. Hurt You (prod. Gesaffelstein, Guy-Manuel de Homem-Christo, co-produced by Cirkut)
6. Privilege (prod. Frank Dukes & Daheala)
まず、これを見ると目立つのは多くのメディアも触れているDaft Punkの片割れ、Guy-Manuel de Homem-Christo(ギ=マニュエル・ド・オメン=クリスト)、Skrillexといった音楽ファンなら誰でも知っているレベルの大物プロデューサーの参加。そして、「Hurt You」を除くトラックに関わるカナダのプロデューサーのFrank Dukes。アーティストというよりは裏方仕事で有名な感じの人ですが、これまでにヒップホップ系なら同郷のDrakeをはじめ、Frank Ocean、Post Malone、Kanye West、Post Malone、ポップスならLorde、Camila Cabelloという感じで近年、ヒットしたアルバムにはほとんど参加しているんじゃないかくらい関わった作品については推挙にいとまがないほど。
あと何気にMike WiLL Made-Itの名前も確認できたりプロデューサーではないものの、作曲ではNicolas Jaarが「Call Out My Name」に参加していたりと、エレクトロ、EDM、ヒップホップ、ポップスまでジャンル横断しまくりのヴァラエティーに富んだ制作陣になっていることは注目すべき点でしょう。
注目はエレクトロ畑出身のGesaffelstein
そして、私的に最も注目だったのは、「I Was Never There」と「Hurt You」でフィーチャーリングアーティストとしてもクレジットされているGesaffelstein。「I Was Never There」は、全体的にリヴァーヴがものすごく効いたほのかにダークで白昼夢的でダビーなR&Bという印象。
そのダークさの部分で触れたいのがGesaffelstein。イメージとしてはフレンチエレクトロの人で、Tigaのレーベル「Turbo」とかBrodinskiのレーベル「Bromance」からのダークでボディなエレクトロ、いわゆるEDMならぬ、EBM系のサウンドの印象が強いため、個人的には意外でした。というか私の中ではそこで止まっている感じ。なので、気になり調べてみたところ、実は近年、ラッパーのA$AP Rockyとのコラボ曲「In Distress」をリリースしていたりと、またもや意外なことにヒップホップ/R&B、つまりアーバン系との関係もあることが発覚。いや〜、恥ずかしながら全く知らなかった…。
近年の「Bromance」周りから考えてみた
ただよくよく考えると近年のBrodinski、「Bromance」周りを考えるとヒップホップラインに乗っかることはそこまで意外なことではなく、むしろフレンチエレクトロを経由してアーバン系の仕事をしていても何ら不自然じゃない気がします。ちなみに「Bromance」関連だとSam Tibaなんかは完全にそのラインで、以前「Bromance」のコンピでKOHHの「Paris」をRemixしているくらいですしね。
というわけで意外だった”Gesaffelstein参加”も、このように紐解いていくと結構順当というか、「まあ、おかしくないよね」と妙に腑に落ちました。
ちなみに『My Dear Melancholy』の中では、Gesaffelsteinによる「Hurt You」が1番好み。ビートの感じもかっこいいし、ちょっと冷たいながらもドリーミーなシンセのメロディックな感じも良し。それがThe Weekndの伸びやかなR&B声とよくマッチしているところが何ともイケてます。終盤の映画『Kill Bill』っぽいサイレン音も味があって良し。
Gesaffelstein、そのうち、How To Dress Wellともコラボして、私的名盤の1つにカウントしている『Love Remains』路線のアルバムをプロデュースしてほしいです。
『My Dear Melancholy』初回リスニングの感想
最後にさくっと『My Dear Melancholy』初回リスニングの感想を。2016年の『Starboy』がポップに振り切ったイメージがあったのですが、こちらはダークとまではいかないものの、それに比べると落ち着いた印象で、その分ムーディーさに磨きがかかり、そのムーディー分野の中でも引き出しが多いなという印象を受けました。ムーディーさにもバリエーションがある的な。
そのあたりにはジャンル横断したアーティストプロデューサーたちの起用による折衷が結構大きのかなとも思います。これから何度も繰り返し聴くことでまたほかの魅力に気づきそうな感じのEPなので、引き続きリスニングを楽しみたいと思います。
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Source:Magnetic, Wikipedia1,2