UKブラックミュージックの遺伝子を今に伝える
音楽都市ロンドンに脈々と伝わるUKブラックミュージックの大いなる遺産とそのDNAを今に伝えるのが「Touching Bass」という新興のコレクティブ。
昨年からロンドンの人気ネットラジオ局NTSで番組を開始したこのクルーが選曲するのは、スムースなJazz、Soulを中心としたアーバン・アフロ・ミュージックなのですが、番組放送開始から約1年を記念したコンピレーション的なMixtapeシリーズ「TB Afro Chronicles」を12ヶ月連続で1本ずつリリースしていくというプロジェクトを開始したようです。
マンスリーMixtape TB Afro Chronicles
第1弾となるTB Afro Chronicles: Volume Oneは、Mixtapeと言っても、DJ Mix的なものではなく、ニュアンス的には最近のヒップホップ界隈のラッパーたちがリリースするものに近い形で、ざっくり言えば、コンピレーションのようなものになっています。
まずは下のダイジェスト音源をどうぞ。
音源自体は、bandcampで販売されていますが、このプロジェクトにはMixtapeと同じ数分だけイラストが用意されており、それらを一まとめにしたA2サイズのポスターも200枚限定で販売されていまして、イラストは下の動画でさらっとスライド方式で確認することができます。
We've worked with @NTSLive + @MasonLondon to make a criss A2 poster + mixtape saluting our first year on the station https://t.co/IPikVinHqu pic.twitter.com/mBdLqxjEBi
— touching bass (@touching_bass) 2017年6月21日
このイラストデザインを担当したのは、以前はBoiler Roomのアートディレクターも務めていたMason Londonというデザイナー/イラストレーターとのこと。イラストに描かれた窓越しのアパートの姿や、お手頃価格のジャマイカ・ビール、レッドストライプの缶が描かれているところが、なんとなく自分が住んでいたロンドンという名のコンクリートジャングルでの生活を彷彿とさせてくれます。
次世代UKブラックミュージック見本市
今回収録されている音源は、クルー周辺の才能あるアーティストの楽曲を中心に選曲されているとのことですが、クルー自体もおそらく若手のため、日本にいる私たちからしたらほぼ全員無名レベル。(ロンドンローカルではそれなりに知られているアーティストもいるのかもしれませんが…)
しかしながら、「Jake Milliner (feat. Bubblerap) - Heard It In The News」というNeo-Soul曲、洒落たJazzチューンで泣きのトランペットやラウンジ感のあるピアノが印象的な「Blue Lab Beats (feat. Nubya Garcia, Dylan Jones & Sheldon Agwu) - The Idea」、アフロなBeatdown「Molinaro - T's Dream」などは非常に良い仕上がり具合であり、その他の曲も総じて洒落た、まさにコンセプトどおりの次世代UKブラックミュージックになっています。
オススメはダビーかつモダンなBroken Beatsという感じの「Wu-Lu - Harlem Jazz」。この曲、ドラムンのDJ Setにも合わせられそうでDJユース面でも期待できるんじゃないかな。
Eglo以降のUKアーバン感
UKの今のメインストリームと言えば語弊があるかもしれないのですが、今メディアから脚光を最も浴びている感じがするのは、やはり昨今のGrimeシーンや、Giggsなどに代表されるストリート系のUK Rapだったり、もうちょっとアンダーグラウンドになると、私も注目している新興Bass MusicジャンルのWaveだったりなんですが、こういう感じのEgloっぽい、ポストFloating Pointsな流れみたいなものも非常に面白いなーと感じています。
そして、何よりこの第1弾に関しては「クオリティー高し!」と言い切りたいですし、クラブミュージック的に考えてもAcid Jazz、Jazzy Brokenなどのここ20数年のロンドンの遺伝子が受け継がれていることが実感できるのはUKダンスミュージック好きには嬉しいですね。
最後に。このTouching Bassクルーのラジオ番組はNTSで月1放送されているので、気になる人はこちらのNTSのページか、もしくはNTSのMixcloudでアーカイブ音源をチェックしてみてね!と付け加えさせてもらって、今回は締めさせて頂きます。
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Reference:Touching Bass, Touching Bass bandcamp
Top image via Touching Bassbandcamp
Text by Jun Fukunaga