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レペゼン地球のパワハラねつ造炎上とSoundCloudラップの負の側面に見たスタンカルチャー的なやつの話

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“スマホネイティヴ”とか”ミレニアルズ”とか、最近の若者世代を指す言葉というのは色々あり、現在ではそれよりも新しい世代である”Z世代”なんて言葉が音楽好きの間でもBillie Eilish(ビリー・アイリッシュ)やらLil Nas X(リル・ナズ・X)なんかの大活躍のおかげでよく知られるようになっています。

 

ギリ”ミレニアルズ”世代がYouTuberとYouTube的価値観について考えてみる

先述の”ミレニアルズ”という世代を指す名称なんですが、それに関しては私もギリギリその世代。昔、仕事でおつきあいさせていただいた某社の偉い方によく、”ミレニアルズにしては年齢は高めですが…”的な感じで他人様に紹介された際には、内心、なんじゃそりゃ!? と思っていたのものですが、まあ、自分の中でもその世代って20代の人にこそピッタリくる言葉と思っていたので、正直なところ、遺恨があるわけでもなんでもないです。

そういった年齢層なので、どちらかといえば、YouTuberの面白さがわかるかわからないかと言われれば、いまいちピンとこないのも事実。私、わけあって、3~4年くらい前までですかね。5年ほどTVのない生活をしていたのですが、それでもやはり、TV育ちなので、ダウンタウン、とんねるず、ウッチャンナンチャンは当然のこと、電波少年とかそういった90sジャパニーズ・バラエティ・ショーの影響は濃いというか、ほぼ水と空気レベルで摂取してきたと思うのですよ。

ただ、そんな私でも最近は、ひょんなことからキングコング・梶原氏のオルター・エゴであるカジサックのYouTubeチャンネルとか、オリラジ中田氏の歴史ものとか面白いなーと思い、ひととおり視聴して、なんだったら『カジサックの部屋』の芸人さんを招いて話すやつなんかは短期間でかなりの数をチェックして、やっぱ、プロの芸人さんはおもしろいなーとか、身も蓋もない感想を持ってしまっている次第です。

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だから、TVが上かYouTubeが上か問題とかは、よくカジサックも番組でゲストに質問していますが、自分は結構気にしない性分なのかなと思っていたものの、よくよく考えたら、自分が好きなYouTubeコンテンツって、いわばTVの世界で実績がある人のやつばかり...。ですのでそもそもその話題に意見する立場ですらないわけなんですが、言いたいことは、”面白い”が発信されるプラットフォームは関係ない。”ヴァイナルでDJしようが、PCでDJしようが良いDJは良いDJだ”的思考に陥っているということ。

 

”レペゼン地球のパワハラ・セクハラねつ造炎上”に勘弁してくれよという気持ちになった

いきなりなんのことかよくわからない話になっていますが、ちょっと日にちが経ってしまいましたが先週の”レペゼン地球のパワハラ・セクハラねつ造炎上”問題、あれはちょっと勘弁してくれよという気持ちになってしまいました。

ことの顛末はもう皆さんご存知のはずなので、ここであえて書くことはしませんが、Livedoorニュースの3行まとめでいうと以下のとおり。

  • 自身の事務所の所属タレントにパワハラを告発された、レペゼン地球のDJ社長
  • 20日には「炎上プロモーション」だと明かしたが、これに批判が殺到した
  • デリケートな問題を軽々しくネタにすることに対し、非難の声も上がっている

YouTubeで炎上商法を得意とするDJ集団・レペゼン地球のDJ社長が所属のタレント・ジャスミンゆまに、そのDJ社長からセクハラ・パワハラを受けているという体で、SNS上で告発させ、3日後くらいですか、実は炎上狙いのドッキリ、ネタでしたと告白。Sex Pistols(セックス・ピストルズ)のJohnny Rotten(ジョニー・ロットン)よろしく、”騙された!って気分になったことはあるかい?”的発言をして、真剣に心配していた人はもちろん、アンチからボコボコにされて大炎上(なんだったらDJ社長よりディスられるという…)。

さらにその手法を褒めたと思われるインフルエンサーの方も炎上。ネタばらし動画に出演したマキシマム ザ ホルモンも炎上。きわめつけは加えてその謝罪も炎上という、炎上上等キャラのDJ社長以外誰も得しない、地獄みたいな状況になるという…。

でも、これはそうなっても仕方ないというか、今のポリコレからすれば当然だし、そんなことがなくとも、実際にこれでパワハラ、セクハラで悩んでいる人はますます告発というか、問題解決、もしくは避難のための行動がとれなくなるような状況を作り出すため、ジョークにしては悪質だと言わざるを得ないと思います。

私はレペゼン地球のAK-69出演ドッキリとかも以前、視聴済みですが、ネタの選定はやっぱり今回の場合は間違っている。というのも今は、SNSで実際にそういう告発があってもなんら不思議ではない時代で、今回のことはもはやフェイクニュースだと言っても過言ではないレベル。人騒がせだし、パワハラ、セクハラって受けたほうはもちろん心理的なストレスもすごいのは当たり前。それに加えて、私が問題だと思ったのは、これま褒められたことではないですが、今の20代、それ以下の現在の価値観をすんなり受け入れられて、正しいとされる行動が取れる以外の古い世代にとっても悪い影響を与えていることだと思います。

 

“今まで見逃されていたこと”が見逃されるとは限らない

ご存知のとおり、ここ日本においても今はネットを通じて、海外の進歩的な価値観が日々、流入してくるため、ひと昔前は正しいとは言わないまでもグレーとされていた価値観も何かのはずみで表に出てきた場合、一気に”黒”と判断されてしまう時代です。

パワハラ、セクハラも10年前と今では認定される基準がより明確化されているので、それまでの価値観で育ってきた人の場合、無自覚のまま、そういった行為を行ってしまうこともあるかとます。またこの前のクラブのアンチハラスメントも問題もそうですが、その考えがあるため、そういったことが実際に起こったと伝え聞いた場合も世代ごとにOKかアウトかの根本的なジャッジの部分が異なります。

だからこそ、旧世代というか、ミレニアルズの上の方の私たち世代ですら昔ならなんとなく見逃されていたことでも今はアウトかどうかという判断した上で発言なりなんなりをしなくてはなりません。特に今は、”他人が不快に思った時点で認定”がスタンダードというかより大前提化しています(そもそもそれは以前からなんですが)。だからこそ、会社の部下なり、後輩なりにかける言葉もある意味、旧世代の人間は神経質にならなければなりません。中にはそんなの知るか! と時代性を受け入れず、無視する人がいるのですが、その結果、待っているのはネット上でのリンチだったりするわけで…。

それはそれで問題ではあるものの、とにかく何も考えずに発言することにいいことは1つもない。現実的に考えて、コミュニケーションにおける”コンプライアンス遵守”みたいなものが求められる時代なので、個々人のモラルなり、時代性に対する理解力がある”大人”は、常に発言する前に自分が口にするべき言葉をジャッジしながら、ある意味で神経をすり減らしながら、コミニュケートしているわけなんですよ。

Eminem(エミネム)のホモフォビアにしても、とんねるずの部活ノリ(特にしごき系)、保毛尾田保毛男問題にしてもその当時はまだ芸風として受け入れられていたという事実があり、決してそれが全面的に肯定されるべきことではありませんが、すくなくともそういう事実があって、そういう価値観の中で育ち、大人、さらに年を重ねてとなると、これは心理的なものかと思いますが、”あの頃は…”的な意見が出ても不思議ではありません。

でも、世の中の大多数の大人は今の現実を受け入れて、まっとうに時代にあった生き方をしようと、以前の考え方を改めたり、少なくとも現行の価値観を理解しようとしている。今回の”ネタ”は、セクハラ、パワハラに悩む人は当然として、そういう努力(というと語弊があるかもしれませんが)をしている旧世代にとっても非常に面白くない。というよりは、なんかそれすらもバカにされたような気分になるわけですよ。だから、私としてはあのドッキリは面白くないし、受け入れたくないなと思うのです。

結果的に炎上騒動を受けて、謝罪が行われ、動画が削除されたのは良かったと思います。最近のポリコレについては、みなさん、正直なところ色々と思うこと、考えることがあるでしょうが、今回はその意識が正常に働いた結果なのかなと思います。

レペゼン地球ファンの反応とSoundCloudラッパーファンの反応の共通項を考える

で、ここで本題のレペゼン地球とSoundCloudラップの負の遺産の話なんですが、それを考え出したのは、騒動直後に以下のツイートを見かけた時です。

こういった社会的に正しくないとされることでもレペゼン地球のファンからすれば、よくぞやってくれました(笑)な状況でして。ツイートにもありますが、これは”世代間の差”なのかなとも。

こういうネット上の”アンチヒーロー像”というか、タブーとされていることに切り込んでいく的なネタものって、去年の樹海YouTuberの問題ともリンクする気がします。

”コンプライアンスゴリ守り”で、TVが面白くなくなった。その規制の抜け道的にYouTubeを中心としたネットに蔓延するプランク動画が人気を集めているという考察はその当時よく見かけました。現在は、ネット側も以前より規制は強化しているのですが、やはり、元々そういった自分では到底できない、思いついたとしても実行できない、怒られるかもしれないけど実行してしまう胆力みたいなものは、このシーンの支持層にはやはり根強い人気があるのかなぁと。

DJ社長はTwitterで先述のネタ動画のあとに、”パワハラに悩んでいる人へ”という動画を投稿して、このための壮大な前フリなんだよというスタンスをとっています。これはそういった支持層に向けてのもので、見ようによっては彼はまさに”ファンファースト”で、その人たちを喜ばし、かつ収益を上げることで”好きな事で生きていく”を実行している。

 

現在では自営業の自分がいうのもなんですが、それこそ会社という組織に所属しているとパワハラやらセクハラやらそういう場面に遭遇することは決してゼロではないし、雇われて枠内に収められているというストレス、毎日同じ時間に起きて出社、残業のルーティーンに囚われているという感覚を覚えることもあることでしょう。かくいう自分もサラリーマンの頃は”縛られている”、"自由に好きなことをしている人が羨ましい"という感覚は少なからずありました。

かといって、自分で何かを生業にして生きていくことは並大抵の覚悟や才能では当然難しい。少なくとも飛び抜けた才能がない場合、なんらかの戦略(ネットワーキングなどコネクション育成など含む)も持たずに徒手空拳で”好きな事で生きていく”ことは、ハードル馬鹿高です。だからこそ、こういう方々に憧れる気持ちが生まれる。自分の面白くない現実に対するストレスのはけ口にもなりうる。

しかもこれは別に社会人、大学生だけじゃなくてもティーン世代にもスライドできるようなことなので、彼らが潜在的に持つ、欲望なり、願望なりをうまく刺激することができれば、まさにこの”クソッタレな現実”に対する”アンチヒーロー”の出来上がりとなるわけです。で、彼らはそれを生業にするという。ここまでの流れはセルフプロデュースとしてはむしろよく練りこまれたプランだとは思います。

でもね、ネタにするトピックの選定は、やっぱりバズるバズらないのほかにもよく考えてするべきだなと。今回のネタはそういう意味ではその考えがあまりにもなさすぎた...。私個人としてはそんな印象を受けてしまいます。

負の”元気玉”が生み出す札束

そして、これが元カノにDVしたXXXTentacion(XXXテンタシオン)、13歳少女と淫行した6ix9ine(シックスナイン)売れるために万引きするBoonkとかそういうインモラルな行動で物議を醸し、注目を集め、キャッシュに還元するSoundCloudラップの世界が持つ負の側面と通じるところがなかなか興味深いです。これ、もうほとんど負の”元気玉”状態ですよ。炎上商法ってのはまさにわかりやすくいうとそういうことなのではないでしょうか?

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私たちが現在、暮らす時代の価値観は以前に比べて価値観が移ろいやすい。ポジティヴに考えれば”良い”とされる部分に向かっているはずなんですけど、それはそれでその規範に合わせられないものは”抹殺もやむなし”的思考が生まれたりする。なかなかカオスが極まっているように思います。

”正しく生きるため”の正しい価値観が窮屈さを生み出し、また別の価値観を生み出す。多様であることが良しとされているはずなのに実際はそうでもねぇな状態。漫画などに出てくる光が強くなれば陰が濃くなる”陰と陽の関係”みたいなものが、ここまであからさまに一般人にも伝わってくる時代っていろいろすごいですね。

 

“スタンカルチャー”が生み出す、外の世界の見知らぬ食べ物の味に対する無理解

これが”絶対的に正しい”みたいな人間が生きていく上で遵守しなければならない規範みたいなものでもなければ、いろいろ厳しいなぁとぼんやり思うのですが、古来よりそういった道を示すのが宗教の役目ではあるものの、歴史をふりかえれば、それもまたひとつの見方でしかない。しかも異教徒は人にあらずみたいなことも往往にしてあるという落とし穴。

そして、そういったものを宗教とは別に生み出しているのが、熱狂的な"スタンカルチャー(熱烈すぎるファン文化)"で、所属する場所、コミニュティ内の徹底した"正しいルール"が生まれるものの、一方で”モラル?、何それ美味しいの?”状態も生まれるケースがあるという…。加えて、その中でもそれぞれの正義まで生まれるため、もう何がなんやらという状況になってしまう。

しかもそれが参院選後の血で血を洗うネット・キリングフィールドにもリンクしてしまっていて、そういった状況を冷笑した(深読みですが)旧世代のコピーライターが血祭りにあげられるという。戦国時代も真っ青なある意味、”領国経営ファースト”という暗黒時代に突入しているなと私は思うのです。(小難しいので漫画『センゴク』とか『ドリフターズ』あたりを読むとなんとなく言わんとすることはご理解していただけるかと)

”人生ゲーム”、見ようによってはほぼクソゲー状態

正しいことをしたい、それが息苦しいからアンチヒーローでありたい。そういったものこそ冷笑したい…。それぞれの正義大乱立時代における”賢い生き方”ってなんなんでしょうか?

かつてラッパーのSing02は自身の曲で”人生ゲーム”とスピットしました。今、その人生ゲームは無理ゲーとは言わないまでもクソゲーレベルにまで難易度が上昇している気がします。

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本日、イギリスでは新たに保守党の党首にBrexit(ブレグジット)運動のリーダーと言われたボリス・ジョンソンが選出され、次期首相の座を得ました。

ネット上ではすでにその保守思想、ルックスが微妙に似ていること含め、ネタになっていますが、少なくともネットにおける日本の状況を見ている限り、参院選後の”分断”ムードがさらに高まったかのようなこの状態こそが、イギリスで国民投票が行われた時のムードだったのではないのかなぁという考えがぼんやりと頭によぎります。

ちなみに今年のグラストンベリーに出演したグライムMCのStormzy(ストームジー)は、「Vossi  Bop」のMVでボリス・ジョンソンをディスっています。

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ここまでの私の論調だと厭世的というか、シニカルな社会風刺と捉える方もおられるかと思います。確かにシニカルになってしまい気持ちもあります。ただ、今は”その状況で私たちは何をするべきなのか?”ということををもっと考えていかなければという気持ちのほうが強いです。だって、この状況、生きづらすぎるでしょ?

漫画『進撃の巨人』のあるキャラが「みんな何かに酔っ払ってねぇとやってらんなかったんだな」的なことを言っていたことを思い出しました。その点を踏まえて、私は良い人間というよりはマシな人間でありたい。そのために日々、考えを巡らせてマシな人間であれるような生活をおくることに酔ってしまいたいと思っています。以上、お後がよろしいようで。 

Top Image via pixabay

Reference : livedoornews