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SoundCloud音源をSerato DJで使える新サービス、プロモ動画がすごかったからオフライン再生できるか調べてみた件

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今年の秋頃から、以前の倒産に関する噂話を払拭するかのように、インディーズミュージシャンがマネタイズできる新機能をスタートさせたり、定額配信制の「SoundCloud GO+」とDJソフトを連携させることを予告していたSoundCloudですが、ついに先述のDJソフトとの連携第1弾を開始しました。

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SoundCloud x Serato DJの連携がついにスタート

今回、連携するDJソフトとして発表されたのは、アマチュアだけでなくプロの間でも人気が高いSerato DJ。これにより、その数、実に1億9500万曲と言われるSoundCloud上で公開されている膨大な数の音源を自由にSerato DJ用のDJ音源として使用することが可能になります。

ただ、もちろんこの機能を使用するには諸処の条件あり。まず第1にこの機能に対応するSeratoであるSerato DJ Pro 2.1またはDJ Lite 1.1が必要になります。そして、次に「SoundCloud GO+」メンバーシップ加入です。ただ、これが日本に住んでる限りは正直”無理ゲー”。というのもこのサービスは日本ではまだ開始されていないからです…。

というわけで、結構他人ごとというか、どこか海の向こうのファンタジーというか絵空事というかそんなイメージでしかなかったこのSoundCloud x DJソフトの連携。しかし、現在、Seratoが公開しているプロモ動画を見ていたら、この機能、DJ的にはどちゃクソ胸アツだなと思いました。

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ここがすごいぞ、SoundCloud x Serato DJ

まずこちら、対応するSerato DJが入ったPCでSoundCloud GO+加入済アカウントでログインすると、自分のSoundCloudアカウントとSerato DJの管理画面が連携。そうすると動画のようなSoundCloud用のプレイリストフォルダが生成されます。

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また例えばSoundCloudで”お気に入り”した曲を集めたプレイリストを作成。それをそっくりそのままSerato DJのプレイリストとして自動でロードされる仕組みになっているのです。

さらにSoundCloudとSerato DJは連携しているため、Serato DJから自分がプレイしたいSoundCloud音源を直接検索することも可能。つまり、SoundCloud自体が完全にDJ用のクラウドになっているというわけなのです。インテグレーションぶりがゴイゴイスーですね。

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あとThe Vergeによると「SoundCloud GO+」で配信されるトラックの音質は「AAC 256kbps」というMP3の最高音質「MP3 320kbps」相当だそうなので、おそらくSerato DJで使用できる音源もその音質のはず…。

SoundCloud x Serato DJ、気になるオフライン再生への対応は?

ただ、私もすごいとは思ったものの、所詮Wi-Fi環境下でしかそのスペックをフルで発揮できないんでしょうよ! ともちょっとイチャモンつけてみたくなったものの、実は「SoundCloud GO+」は、自分が”お気に入り”にした曲やプレイリストをオフライン再生できる仕組みになっていたりするので、これってまさかのオフラインでも膨大なサンクラ音源をDJ用に使えることなのでは? と思った次第。

しかし、The Vergeによるとオフライン再生については現段階ではまだ実現せず、それは先の話になるとのことです。ただ、もし、それが実現するとDJプレイをただ楽しむ人には非常に大きな「SoundCloud GO+」加入のメリットになりますが、BeatportとかDJ向け音源の販売に強いサイトなんかは強烈な危機に直面することになりそうです。というのも音源をサンクラからDLしてオフラインでDJソフトにロードして使えるようにならわざわざ購入する必要がなくなるじゃないですか。ですので、そのあたりのことも正直、気になります。

 

DJ向け音源販売サイトやインディーズアーティスト、レーベルの未来はどうなる?

これが実現すると、デジタルのみで音源を配信するインディーズアーティスト、レーベルあたりも一気に収益が低くなりそう…。そして、Drakeなど一部のスターが一人勝ちする怒涛のサブスク戦争に巻き込まれるハメになるなんてことも可能性としては大いにあるんじゃないかと。

というのもストリーミング収益はまず大元のプラットフォームがサブスク登録者が支払う定額料金と広告料金の総額の中から音源の再生回数に応じて山分けされる方式なので、例えばDrake(ドレイク)みたいなストリーミング巨人は、このシステムの中では勝ち組で大金を稼ぐことができます。

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*詳しくはこちらのHeroic academyの記事をご参照ください。

ですが、その反面、有名でないインディーズアーティストがストリーミングから得られる収益は微々たるもので、ぶっちゃけ、本業ありきのパートタイムミュージシャンとかインディーレベルなら下手したら3曲入りEPのCD-Rをイベント会場でファンに向けて販売した方が上りは絶対に多いです。(今の時代、CD-Rを買うかどうかはさておき)。

 

またデジタルでいえば、音源をbandcampで販売した方が、ストリーミングで得られる収益より上がりが多いなんてことも十分あるはず。というか、個人的な経験から思うのはデジタル音源を販売して100円稼ぐのも、作り手、売り手がある程度の人気を持っていないとなかなかハードルが高いと言わざるを得ないですね。

ちなみにこれは邪推ですが、先述のとおり、オフライン再生はすでにサービスとして「SoundCloud GO+」で実施されているものだけに、今回のことは”業界保護”のための忖度なんかも多少はあったりするのかなと…。そのあたりはどうなんでしょうね?

このように”誰でもDJ”の時代には非常に素晴らしいサービスとなった今回のSoundCloudとSerato DJの連携。もちろん、オフライン再生に対応するようになれば、プロDJにとっても強烈なツールになることは間違いでしょう。しかし、その反面、先述のような弊害も少なからず起こるはずですが、そこはもう今から心配しても仕方のないことなので、あとは流れに身を任せるしかないのかなと。

もしかしたら今以上のヴァイナルブームがやってくるかもしれないし、アングラなダンスミュージックシーンの中でもEDMのようなビッグストリーミングヒットが生まれることになるかもしれないし、そうなったらそうなった時の別のポジティヴな可能性も絶対に生まれるはずです。

 

2019年にはSoundCloudとNative InstrumentsなどのDJソフトが連携予定

なお、SoundCloudの発表によりますと、2019年にはNative Instruments、Virtual DJ、DEX3、Mixvibes、Herculesなどが販売する有名DJソフトにも対応予定とのこと。その頃には「SoundCloud GO+」が日本でも解禁されるんでしょうかね? 気になります。以上、お後がよろしいようで。

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Top Image via SeratoHQ
source: SeratoHQ, Mixmag, The Verge, SoundCloud