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Sexy Zoneと話題のUKガラージ曲「RIGHT NEXT TO YOU」がサブスク解禁で受ける恩恵となぜ音楽ファンが騒ぐのかを考えてみた

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ジャニーズのアイドルグループ、Sexy Zoneが、UKガラージを取り入れた新曲「RIGHT NEXT TO YOU」が、日本で話題になっていますが、それとぼぼ同じタイミングで、本場イギリスでは、BBCラジオがシーンのレジェンド、Craig Davidの初期の名曲やその周辺のヒップホップ、R&Bを特集する「Rewind with...」という番組を放送していました。

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「RIGHT NEXT TO YOU」が話題になると同時にUKでCraig Davidを特集するラジオが放送される奇跡

「RIGHT NEXT TO YOU」で取り入れられたUKガラージは、90年代〜00年代にイギリスで流行した音楽ジャンルですが、Craig Davidといえば、その当時『Born to Do It』というUKガラージを取り入れたアルバムでメインストリームのポップスシーンでも商業的成功を収めた人物。 

Born to Do It

Born to Do It

  • クレイグ・デイヴィッド
  • ポップ
  • ¥1833

彼を特集する番組は、そのアルバムに収録されたUKガラージ曲「Rewind」を番組名に冠したものなので、往年のファンからすると思わずニヤリとしてしまう要素になっていると思います。

 『Born to Do It』に関しては、全編に渡り、ゴリゴリのUKガラージ曲だけで構成するという類のアルバムではありませんが、例えば先述の「Rewind」や「Fill Me In」なんかは「RIGHT NEXT TO YOU」にも通じるUKガラージ曲で、日本で普段、UKガラージを聴かない層にそういった音楽が届いたタイミングで本国でもそんな番組が放送されていたことは、なんというか奇跡すぎる展開...。ちょっとしたプラシーボ効果的なものではなりますが、個人的にはSexy Zoneにとっての"追い風"になっていると思いました。

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Sexy Zoneと「RIGHT NEXT TO YOU」がサブスク解禁で受ける恩恵を考えてみた

「RIGHT NEXT TO YOU」は、YouTubeでMVが公開されたことにより、既存ファン以外、特にUKのクラブミュージックが好きな音楽リスナーやその界隈の音楽を専門とするDJやプロデューサーに衝撃を与えているわけですが、このことは、あまりフィジカル以外で楽曲を発表することがないジャニーズにとっては、改めて、ストリーミングが既存ファン以外に届くという良い事例になったはずです。

また、全編英語詞になっていることから、海外進出を意識しているということ、そして、それなら「なぜ、YouTube以外のサブスクでも解禁しないんだ?」という声も多く聞こえる状況になっていますが、実際のところ、ジャニーズとしてはどう考えているんでしょうかね? それとそのあたりのビジネス的な事情もさることながら、なぜこのタイミングでUKガラージを取り入れたのかは非常に気になります。

あと、余談ですが、「RIGHT NEXT TO YOU」のトラックを手がけたプロデューサーは、有名DJのTJO氏によると、これまでにもジャニーズ音源やK-POP音源を手がけてきたアメリカ系韓国人プロデューサーのSteven Leeで、これまでにもSexy Zoneの曲を数曲手がけています。

 

UKガラージは挑戦的すぎるがワンチャンあるかも!? その理由とは?

あと、音楽性や英語詞含めて、"海外進出"がK-POPへの対抗要素として語られているようですが、これは現在のメインストリーム・K-POPが近年のUSを中心としたメインストリームの海外音楽シーンでヒップホップ、とりわけトラップを取り入れた曲がヒットしていることを受けてのものだと思われます。

仮にもし、そこに切り込んでいくことを目的にトラップではなく、UKガラージを取り入れたとすれば、今回のSexy Zoneの取り組みは、正直、めちゃくちゃチャレンジング。独自路線というか、ある種の時代の先見性みたいなものは少なからず感じます(とはいえ、すでにK-POPにもUKGを取り入れた曲はありますが

というのも近年、USのヒップホップシーンでは、UKのアーティスト、とりわけラッパーとコラボした曲がにわかに注目を集めており、特にここ1〜2年そういった曲が増えてきた気がします。

これは、2017年に"トレンドに敏感"なことで知られる現行世界最高峰のポップスターの1人であるDrake自身のアルバムでUKのラッパー、MCをフィーチャーしたことがきっかけになり、それ以降、USのメインストリームでもUK(ラップ)的な要素が徐々に重宝されるようになってきました。

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その文脈で考えると、このタイミングであえて、US的なものでなく、UK的なものを日本のメジャーアーティストが取り入れたということは、正直、既存ファンではないコアな音楽リスナーになればなるほど、衝撃的だし、騒ぎたくなる要素すぎなわけで。なので、今、多くのそういった音楽ファンが口々に「Sexy Zoneやべー、「RIGHT NEXT TO YOU」やべー」と言っているんだと思います(完全に私見ですが)。

 

現在のポップスシーンで注目されるUK要素、TikTok、デラックス盤から考える「RIGHT NEXT TO YOU」

そういうわけで、識者の方々からはYouTube以外でもサブスク解禁した方がいい説が出てきているわけですが、個人的にはいくらUK要素があることがセンスが良いポイントであっても、日本人によるUKガラージ風の曲がUSのチャートを賑わすことは、現実的にはなかなか難しいのかなというのが本音。

とはいえ、例えば、先述のDrake作品に参加したUKアーティストのJorja Smithは、UKガラージから派生したジャンル「グライム」の代表的なアーティストとして知られるDizzee Rascal「Sirens」をサンプリングした「Blue Light」やUKガラージ曲「On My Mind」のスマッシュヒットで頭角を現し、USにもその評判が伝播したことを考えると、例えば、サブスク解禁によって、何かのはずみでUKのリスナーの間で広まれば、その後、USにも届く可能性はなきにしもあらずです。

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そして、その"何かのはずみ"が、これまでは難しかったのですが、最近はTikTokのダンス動画など、ファンの手によって作成された「UGC動画(一般ユーザーによって作成された動画)」がトリガーになり、バイラルするケースが増えてきていることから、"何かのはずみ"自体を作ることは、以前に比べて確実に容易になりました。その点では、特にSexy Zoneのようにすでに大きなファンベースを持っている場合は、その辺りもロケットスタートできそうな気がするので、この辺りを有効活用しない手はないのかなと。

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また、「RIGHT NEXT TO YOU」のダンスの振り付けは、世界的なアーティストを手掛けたチームが担当し、"Sexy Zone史上、最も難易度の高いダンス"とのことで、一般人が完コピするのはハードル高めかと思いますが、それが故にやってみたいという人も必ず出てくるはず。

余談ですが最近のこういったダンス動画に関しては、海外ではコロナの影響によるロックダウンも関係してエアロビなどワークアウト要素があるものがバズりやすい傾向にあるようです。

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TikTokでのダンス動画によるバズのケースに関しては、昨年、日本でも三代目 J SOUL BROTHERS「Rat-tat-tat」が話題になったりと、日本においてもそういった事例は確実に増えてきているので、「UGC動画」からのヒットにも期待できる部分は多いのではないでしょうか?

そういったことは、音楽マーケティングに詳しい方がこれまでにも発言されているかと思うので、興味を持った方は各自ググっていただければと思います。

jaykogami.com

ただ、個人的にはサブスク解禁とともにリミックスを収録したデラックス盤もリリースすると、より海外のシーンに対応した印象を音楽ファンは持つんじゃないかなと思います。例えば、昨年TikTokのダンス動画で話題になり、それがヒットの要因にもなったThe WeekndやDua Lipaは、通常のアルバムのほかにリミックスや未発表曲を追加収録したデラックス盤もリリースしています。

After Hours (Deluxe)

After Hours (Deluxe)

  • ザ・ウィークエンド
  • R&B/ソウル
  • ¥2241
Future Nostalgia (The Moonlight Edition)

Future Nostalgia (The Moonlight Edition)

  • Dua Lipa
  • ポップ
  • ¥2139

こういったリリース形態にはファンアイテム的な側面のほかにストリーミング再生数増加というメリットが挙げられるかと思いますが、ジャニーズ音源の場合は、これまでにもフィジカルの初回限定盤が複数リリースされていることから、サブスク版の"初回限定盤"的な要素、位置付けとして、デラックス盤を作ってみるのは、これまでの文脈から見ても違和感なく、ファンにも受け入れられるんじゃないかなと。

私は以前、CDショップで働いていたので、もちろん、ジャニーズ音源の初回限定盤が数種類フィジカルでリリースされる意味は重々承知していますが、例えば、"フィジカル盤はファンアイテムとしての保存用、実際に聴くのはサブスク"で、みたいな感じで用途ごとの使い分けに発展させていくことができそうです。なので、海外進出を視野に入れているのあれば、サブスク解禁に伴い、デラックス盤のリリースも検討してほしいですね。

 

「RIGHT NEXT TO YOU」のリミックスにラッパー、例えば櫻井翔をフィーチャーすればさらに話題になると思う

そして、ここまで長々と書きましたが、この記事の裏テーマというか、サブスク解禁とともに、いや、もしかしたらそれ以上に訴求していきたいのがこれ。

UKガラージの曲には下の動画のようにラッパー(グライムMC)とコラボした曲もあります。なので、どうせなら本場に寄せていく感じで「RIGHT NEXT TO YOU」も、日本のラッパーなり、グライムMCをフィーチャーしたリミックスをリリースしてくれたら、もちろん私はぶちアガるし、ほかの日本の音楽ファン(特にクラブ系が好きな人)もさらに話題にすると思います。

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というわけで、リミックスにラップの要素を追加するのであれば、その時は、今やジャニーズのリビングレジェンド枠になった感がある、「A・RA・SHI」でお馴染み、ラップを得意とする櫻井翔氏をフィーチャーしてほしいものです。現在、活動休止中の嵐ですが、嵐音源は、すでにサブスク解禁されているので、そことの親和性あるし、それによって海外のファンが作るプレイリストに入ることもあると思うので、そこを起点にした楽曲の広がりも予想できますね。そして、それをデラックス盤にいれて欲しいなぁ。

*「A・RA・SHI」は、昨年「A-RA-SHI : Reborn」というセルフリミックスがリリースされています。


*櫻井くんとラップの関係はこの記事がおもしろかったです。

realsound.jp

日本のグライムMCとコラボするとよりコアな音楽クラスタにも支えるはず

また、よりコアな音楽ファンからの関心を集める形であれば、日本を代表するグライムMCの1人で、本場UKシーンからもサポートされるONJUICYを客演に迎えるのも激アツなんじゃないでしょうか?

youtu.be

これ、実現したら絶対、クラブ系音楽クラスタの間では大きな話題になると思います。

www.mixmag.jp

先述のCraig Davidもグライムを取り入れた「Enie Meenie」のような曲をリリースしていることを考えると、実現した場合は、また識者の間で色々な考察合戦も展開されることになるはずです。

youtu.be


自分は去年、堂本剛 aka ENDRECHERIのサブスク解禁で初めて、ちゃんとその音楽を聴き、感銘を受けた口なので、ホント、最近のジャニーズ音楽は侮れないことはすでに実感済み。そのことを再確認させてくれたのが、今回のSexy Zone「RIGHT NEXT TO YOU」でした。

 なので、自分本位の事情ではありますが、この曲が収録される10周年のアニバーサリーアルバム『SZ10TH』リリースのタイミングで、全カタログ分サブスク解禁されて欲しいなと思います(Steven Leeが手がけたほかの曲も聴いてみたいし)。

なお、この記事で出てきたUKガラージやグライムに関しては、今回はめちゃくちゃ大雑把な説明になりましたが、こちらの記事ではもう少し詳しく説明しています。気になった方は合わせてチェックしていただけたら幸いです。

note.com

というわけで「ザクシャインラブ」。今夜は実写版『ニセコイ』を観たいと思います。以上、お後がよろしいようで。

youtu.be

 


追記:noteにこの記事のあとがきを書きました。

追記2:記事を読んでいただいたSexy Zone識者の方から以下の情報を教えていただきました。

なんと、櫻井くんをフィーチャーしなくても、SexyZone メンバーの菊池風磨くんがラップのリリックを自ら書けて、実際に書いた曲もあるそうで事前で全部出来てしまうとのこと。

また、菊池くんのお父さんは嵐の「A・RA・SHI」の作詞をされた方とのこと。そして、櫻井くんが自分でリリックを書くようになったのはシングルでは数年後の「言葉より大切なもの」からだそうです。

自分が初心者すぎて、ファンの方に申し訳ないと思うとともに、やはりというか、当然のことながら、ジャニーズの世界も奥が深い...。今後、さらに勉強していこうと思いました。

追記3:
ファンの方に菊池くんは櫻井くんに影響を受けてラップをやっていることを教えていただきました。


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