The Prodigy(プロディジー)のKeith Flint(キース・フリント)が死去したことが明らかになりました。なんて日だ…。実は個人的にも喪に服すようなことがつい先日あっただけに悲しみがとめどなく溢れてきています…。享年49歳だったそうで、その早すぎる死を悼むばかり…。
The ProdigyのフロントマンKeith Flintが死去、享年49歳
逆モヒカン、アイシャドウメイクがトレードマークだったKeith Flintの訃報については、BBCなど複数のイギリスメディアが報じていますが、いくつか目を通してみたところ、The Guardianが詳しく報じている印象です。それによるとKeith Flintは、現地時間3/4(月)の朝8時10分頃に、彼の親類からイギリス・エセックス(Essex)のダンモウ(Dunmow)のイーストエンド地区にあるブルックヒルの自宅で死去していると地元警察に通報により、死亡したことが明らかになったとのことです。
Keith Flintの死因には事件性がないとの見解、自殺だったと報道される
Keith Flintの死について、警察はその死を疑わしいものとしては扱っていない、つまり事件性があるものとしては扱っておらず、ただ、近日中に検視官による検視の手続きが進められているとのことです。
また死去の報道のあと、Mixmagは「THE PRODIGY CONFIRM KEITH FLINT’S CAUSE OF DEATH AS SUICIDE」という記事を公開し、彼の死因は自殺だったと報じています。その死因については、The ProdigyメンバーのLiam Howlett(リアム・ハウレット)によるバンドのInstagramアカウントからの投稿が情報源になっています。
BBCによると彼が所属するユニット、The Prodigyは最近オーストラリアツアーを終え、イギリスに帰宅したばかりで5月からはアメリカツアーを行う予定だっただけに、オーストラリアのファンにしてもアメリカのファンとしても信じられないといった感じでしょう…。
The Prodigy自体は90年代にロックとダンスミュージックを掛け合わせたスタイル、デジロックと日本では言われていたかと思いますが、世界のダンスミュージックシーンを席巻したイギリスを代表するダンスアクト。活動もコンスタントに行なっており、2018年11月には最新アルバムの『No Tourists』もリリースしたばかりでした。
The Prodigyの90年代の名盤、名曲を思い出とともにふりかえる
The Prodigy自体は1990年に地元エセックスのクラブでメンバー5人が出会い、バンドを結成。翌1991年には名門レーベル『XL』と契約し、レイヴ、セカンド・サマー・オブ・ラブシーンの次代を担う存在として注目を浴びた存在という印象があります。その後、当時の最先端のUKクラブミュージックであったドラムンベースを取り入れ、ブレイクビーツを主体としたデビューアルバム『Experience』をリリース。
デビューアルバム『Experience』収録、Max Romeo「Chase the Devil」ネタ「Out Of Space」
同アルバムは彼らの名曲として今尚高い人気を誇る、というか私の中ではThe Prodigyの名曲1、2を競う「Out Of Space」が収録されている盤として有名な作品。
youtu.be同曲のメインサンプリングネタは1970年代のレゲエ/ダブの名曲Max Romeo「Chase the Devil」だということは広く知られた話ですが、実は曲中のブレイクビーツはThe Shamen「Hyperreal Selector」のブレイクビーツをサンプリングしたもの。
youtu.be声ネタは、アメリカのヒップホップグループUltramagnetic MCsの「Critical Beatdown」のリリック「I take your brain to another dimension」をサンプリングし早回ししたものになっています。
オルタナティブ・ロックに接近した『Music for the Jilted Generation』収録の「Voodoo People」、「Poison」
その後、1994年にリリースした2ndアルバム『Music for the Jilted Generation』では、これまたThe Prodigyの代表曲として知られるロッキンギターなリフとブレイクビーツ、デジタルなシンセが絡む「Voodoo People」、アシッドブレイクビーツな「Poison」も収録。確かこの頃からオルタナティブ・ロックサウンドにも接近し、その要素を取り入れるようになったかと思います。
ブリットポップの終焉と入れ替わるように生まれたデジタルロックの名盤『The Fat of the Land』
そして1997年。この年はイギリスから最近はテラハの挿入歌として有名なThe Verve(ザ・ヴァーヴ)の「Bitter Sweet Symphony」収録の『Urban Hymns』、Radioheadの『OK Computer』といったブリットポップの終焉を告げる時代を彩った名盤が誕生。
クラブシーンからも、The Orb(ジ・オーヴ)『Orblivion』、Orbital(オービタル)『Event Horizon』、さらにブレイクビーツの名盤中の名盤The Chemical Brothers『Dig Your Own Hole』がリリースされるなど、イギリス音楽がロック、クラブで名作が数多く生まれた年で、The Prodigyも日本でも有名な、というか私の世代だと確実に有名だったであろう、かの”カニのジャケ”で有名な4thアルバム『The Fat of the Land』がリリースされました。
「Smack My Bitch Up」、「Firestarter」、「Breathe」といった名曲が生まれた1997年
同アルバムには「Smack My Bitch Up」、「Firestarter」、「Breathe」がアンセム化しましたが、Keith Flintはそのうちの「Firestarter」、「Breathe」でボーカルを担当していました。
翌年1998年にはFatboy Slim(ファットボーイ・スリム)の名盤『You've Come a Long Way, Baby』がリリースされるなど、この時期はイギリス産のブレイクビーツはまさにポストブリットポップ並みに本国を席巻していたかと思いますし、日本でもThe Chemical Brothers、The Prodigy、Fatboy Slimの3組は某大手レンタル店などでも一緒にブレイクビーツ系として面だしコーナーでその黄金期以降も度々括られて紹介されていたかと思います。(あと日本ではここにUnderworld(アンダーワールド)も加わっていたかと…)
エレクトロ全盛期に「Smack My Bitch Up」をDJの飛び道具として考えていた思い出
その中でもThe Prodigyは、THE MAD CAPSULE MARKETS、BOOM BOOM SATELLITESなど日本のデジタルロック好きの海外リファレンス的な位置付けだった気がします。(少なくとも私と友人たちの間では)。
その後The Prodigyのアルバムリリースは2005年のベスト盤を除くと2009年の5thアルバム『Invaders Must Die』までなく、私の中では当時はエレクトロムーブメントにどっぷりだったので、そこまで衝撃は受けませんでしたが、それでもUKでは1位を獲得。個人的には当時のエレクトロ曲中心のセットでFatboy SlimがいきなりKinks「You Really Got Me」を飛び道具として「Smack My Bitch Up」をいかにしてブチ込むかをよく考えていた記憶があります。
そんなわけでThe Prodigyの近年まで活動をしっかりと追えていたかといえば、正直、6th、直近の7thは音楽系のネットニュースでちょっと目にした時にMVなんかをチェックする程度でしたが、90年代作品は、私も全世界中のThe Prodigyヘッズ並みにそこはかとなくのめり込んでいたものだと思っています。
初期のThe ProdigyではKeith Flintはダンサーとして参加
なお、Keith Flintは、The Prodigy結成初期はダンサーとして参加。Happy Mondays(ハッピー・マンデーズ)でいうところのBez(ベズ)的な立ち位置、日本でいえば、EXILEのパフォーマー的な存在でしたが、のちにラップ担当のMaxim(マキシム)とともにフロントマンに。
「Firestarter」、「Smack My Bitch Up」はBBCでは放送禁止処分になったいわく付きのヒット曲
なお、先述のKeith Flintがボーカルをを務めた「Firestarter」のモノクロMVは、当時BBCでは放送禁止処分を下されたのもThe Prodigyファンの間ではよく知られたエピソード。これはBBCの音楽番組「Top of the Pops」で放送後、子供が怯えると親からの苦情が大殺到したことが理由です。確かにこのMVでのKeith Flintは、日本人からしたら”闇堕ち”南部虎弾という感じで、ぶっちゃけコミカルにも見えますが、子供からしたらホラー映画のキャラクターのようにも見えなくもないなと。
あと「Firestarter」が収録された先述の『The Fat of the Land』はThe Prodigy最大のヒットアルバムで、英米加豪4カ国を含む全世界22カ国の最主要アルバムチャートにて初登場1位獲得、売上枚数は全世界で1000万枚超えという現代ではとても考えることができないフィジカルセールスを記録しているので、ストリーミングサービスがあれば、Drake(ドレイク)、Taylor Swift(テイラー・スウィフト)級の膨大な再生回数を誇るストリーミングヒットを記録していたのかなとも思います。
ちなみにこのアルバムからは直訳すると”彼女を殴る”というタイトルの「Smack My Bitch Up」も有名フレーズ、「Change My Pitch Up / Smack My Bitch Up」の歌詞部分が女性蔑視(ミソジニー)だとして、女性側から非難を浴び、当時BBCはオリジナルを放送禁止。歌詞を抜いたインストバージョンを放送したといういわく付きのヒット曲にして代表曲です。これに関してはメンバーのLiam Howlettは、トラックには意味などなく、恋人を殴るという意味で受け取るヤツはかなり頭が悪いんじゃないか?」と反論的なコメントをしています。
FacebookでバンドがKeith Flintの死を発表
いずれにせよ、The Prodigyのフロントマンとしてその強烈なビジュアルで長くバンドの顔役だったKeith Flintの死はとてつもなく大きく、その喪失感は計り知れないと思っています。その死に関して、バンドは、兄弟と親友のキースフリントの死を確認したことは、最も深いショックと悲しみである」、「真の先駆者、革新者であり伝説だった。彼の死は永遠に惜しまれることになるだろう。どうか関係者のプライバシーを尊重して頂くようにお願いします」とFacebook上でコメントを発表。
またともに90年代の共に90年代のイギリスのダンスミュージック発展に貢献したThe Chemical BrothersのEd Simons(エド・サイモンズ)も彼の死を悼み、Keith Flintの訃報はとても悲しい。彼はいつも楽しいヤツだった。同じ時期に活動を開始し、Tom Rowlands(トム・ローランズ)と自分にもとても親切だった」とコメントを発表しています。
Oh gosh, so sad to hear about Keith Flint, he was always great fun to be around and very kind to Tom and I when we first started doing shows together..great man.
— ed simons (@eddychemical) March 4, 2019
The Prodigyがグラストンベリー・フェスティバル2019に出演予定だったことをフェスの関係者が追悼とともに明かす
さらにイギリスを代表するフェス「Glastonbury Festival(グラストンベリー・フェスティバル)」の共同オーガナイザーで同フェスの創始者Michael Eavis(マイケル・イービス)の娘であるEmily Eavis(エミリー・イービス)がTwitterで、Keith Flintを追悼するコメントを発表。その投稿ではThe Prodigyが今年6/26~6/30にかけて行われる「Glastonbury Festival 2019」に実はブッキングされいたことも明かしています。
昨年リリースした新作アルバムを引っさげての登場だったと思われるだけにそのショックは本国イギリスのファンからしたら相当なものではないでしょうか? とにかくその死が悔やまれる…。また彼女の投稿にはThe Prodigyが1997年にGlastonburyに出演した際のライブ動画のクリップも添付されています。
We are so saddened to hear about the passing of Keith Flint. He’s played here so many times with the Prodigy and was booked for 2019. What an incredible frontman. Here’s a clip from ‘97 when they were the first dance band to headline Glastonbury - a huge, unforgettable moment. pic.twitter.com/9fxKBonfVa
— Emily Eavis (@emilyeavis) March 4, 2019
ただただ、R.I.P. Keith Flint…。以上、お後がよろしいようで。
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Top Image via Manchester Evening News
Reference: BBC、The Gurdian、Wikipedia1,2, Mixmag