電子音響音楽前衛レーベルが惚れ込む才能
ベルリンの実験電子音響音楽シーンで人気の前衛レーベルPANから来月リリースされるPan Daijingというアーティストのデビューアルバム『Lack 惊蛰』が気になります。
たまたま、PANのSoundcloudを見ていたら見つけたこの情報なんですが、公開されていた奇天烈アンビエント「Plate of Order 秩序之灾」という曲が、ノイズと歌声?のような声だけで構成されているだけなのに妙に印象的でした。
まあ、気になったのはその音だけでなく、Pan Daijingという名前、PANからリリースするからPanなのか?と思いきや、色々と調べてみると、そういうわけでなく、これまでにもその名義でリリースをしているようでした。
このPan Daijingというアーティストは中国出身の女性で上海シーンで活躍し、現在はベルリンを拠点に活動をしており、昨年のRBMAにも参加していたようでした。知らなかった。。。
現在、アジア出身でベルリンを拠点に活動し、知名度を上げているクラブミュージックの女性アーティストといえば先月の来日ツアーが話題になったPeggy Gouでしたが、彼女もまた、すでにドイツ版のi-Dや、The Faderなど海外メディアにもピックアップされている今、注目のアジア人女性アーティストになりつつある模様。
気になる音楽性はというと、一言でいえば、奇天烈インダストリアル・テクノとでも言うのが最も適している気が…
色々調べていたら、これまでにPANやTRILOGY TAPES系のアングラレーベルBEDOUINなどからもリリースしており、そこからのリリース『A Satin Sight』が、ともかく強烈。
唸るようなノイズまみれのハードテクノ、奇妙でボディなエレクトロ、ノイジーなインダストリアル・UK Funkyみたいな曲などが収録されていて、かなり狂気的な内容となっています。特に「A Season In Hell」という曲が不穏すぎて、ベルリンの地下テクノをビンビンに感じさせてくれます。
アート性が強いライブパフォーマンス
そんな彼女なんですが、ライブも超個性的。元々、音楽だけでなく、アートインスタレーションも行っていたようで、ライブ自体がパフォーミングアートになっているようです。
奇妙な顔を覆うマスクのようなものを被って、床を這うようにしながら機材を操るのが彼女のライブ・インスタレーション時のスタイルのよう。これだけでもかなりアーティーな人物だと印象を受けます。いとアヴァンギャルド。
その他にもクラブ仕様のライブセットもある模様で、そちらはガンガンにインダストリアルでボディな硬いトラックをフロアに投下するようです。すごく踊れる感じだし、かっこいい!
ベルリンのアートシーンと最近の中国の上海とか北京の地下モダンアートシーンはかなり通じるものがあると思います。
さっきのインスタレーションもどことなくステレオタイプではありますが、ダークさとかがベルリンっぽいし、何より中国のアンダーグラウンドなクラブは、かなりヨーロッパ寄りなので、こういったアーティストが出てきてもなんら不思議じゃない気がするのです。
こういったアーティストがアジアから出てくるのは非常に興味深い。といった感じですね。狂気的な暴力性を孕んだ毒々しいエレクトロニクス、今後要注目です。
精神の劇場で繰り広げられるオペラ
なお、アルバムは7/28にリリースとのこと。作品は過去2年間のライブ、フィールドレコーディングを編集したものが元になっているそうでその全貌が楽しみでなりません。また、その世界観は、世界の視点を”精神の劇場”として表現したオペラ作品的なものになっているそうな。
ちなみに今年の3月に発売されたPANのコンピ『mono no aware もののあわれ』に収録されているHVADとのコラボ曲「Zhao Hua」では深遠なビートレス・アンビエントを表現。こちらも素晴らしいので気になった人はチェックしてみてください。
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Reference: RBMA,PAN bandcamp
Top image via Pan Daijing Facebook