隆盛するヒップホップシーンにおけるオルタナティブな若手
Kendrick LamarやMigosの新作がUSのメインストリームで大成功を収め、従来のポップスター達の作品にとっても人気のラッパー達をフィーチャーすることは完全にトレンド化している印象を受けることなどからも今年の音楽シーンのメインストリームを席巻しているヒップホップ。
また、大物ラッパー達以外にもLil Yachty、Playboi Carti、Kodak Blackら若手ラッパーのアルバム/ミックステープのリリースが海外の音楽、カルチャーメディアでも盛んに取り上げられるような状況があったりで、ヒップホップ新世代の台頭もひしひしと感じます。
そんな若手ラッパー界隈で最近、私がハマっているのがLAのアングラなヒップホップコレクティブ「GOTHBOICLIQUE」に所属するLil Peep(リル・ピープ)というラッパー。
このラッパーはどちらかというと今のメインストリームよりはオルタナティブ側寄りで、海外の流行に敏感なヒップスターな若者達の間で楽曲だけでなく、そのファッション性なんかも注目されています。
リリックのトピックにしているのは、ドラッグ、自殺願望、元カノなど物憂げなものが多く、キャラクターとしてカート・コバーンのイメージを上手く活用している感が強い彼。影響を受けたのはラッパーでは Gucci Maneだそうですが、Crystal Castles、My Chemical Romance、Panic! at the Discoらバンド勢からの影響も公言していることいることからトラックも非常にユニーク。
オルタナ/グランジ+Trapが生み出す未来のEmo
サンプリングネタに90s, 00sのオルタナ・ロックやEmoなどをチョイスし、Trapのビートと掛け合わせたものが目立ちます。それ故に最近ではその音楽性は”未来のEmo”などとも呼ばれています。
”未来のEmo”とは何ぞや?と思った人は、昨年リリースされた『Crybaby』、『Hellboy』というミックステープを聴いてもらえれば、なんとなくイメージがつくと思います。
例えば、「Hellboy」や「OMFG」という曲は一聴するとイントロからして完全にオルタナ/グランジ風。ラップというよりはむしろ歌い上げる曲になっていますし、どことなく荒野とか砂漠とか寂れたバーみたいな風景が映るそっち系バンドのMVのイメージが頭に浮かびます。
その他にも『Crybaby』収録曲の「yesterday」という曲では、大ネタ、オアシスの代表曲「Wonderwall」をサンプリングし、夕暮れが似合いそうな程にエモく調理した曲や、ノイジーでメロディックなギターが印象的な「ghost girl」なんかは確かにビートはTrapですが、まさに打ち込みで作ったグランジという感じです。
ロックをネタにしたヒップホップはこれまでにもありましたが、Lil Peepのオルタナロックの雰囲気、空気感までをもパッケージしたアプローチは、これまでになかっただけに非常に新鮮と言えるのではないでしょうか?
ブロステップ以来の大発明となるか?
USシーンの大いなる発明となったブロステップ以降の次のビッグムーブメントの形の可能性のひとつがこの「Emo Trap」や「New Emo」と呼ばれるようなジャンルだと感じさせてくれるLil Peep。
日本で言えば、最近のKohhのイメージも少しちらつきますし、音的にもヒップホップに苦手意識を持つ人にもとっつきやすく、日本のカルチャーマガジンなどでも大体的に取り上げられたら一気に人気に火がつきそう。
見方によればちょっとハイプな感じは否めませんが、音的には先述のとおり、新しいアプローチで作られているので、今後の活動次第ではポストEminem的な存在まで成長しそうな可能性も決して否定できない気がします。
最後に最近公開された新作退廃暗黒Emoラップ「benz truck」のMVをご紹介。
鬱蒼とした映像の中に映る桜が非常に耽美的です。
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Reference: Pitchfork
Top image via Lil Peep Facebook