早いもので、2018年も後数時間で終わり。皆さま、いかがお過ごしでしょうか?
ガキの使い「笑ってはいけない」をサンプリングした新世代フレンチハウスプロデューサーVanderkraft
本日、大晦日ということで様々な特番が放送されているわけですが、その大晦日の代名詞の1つといえば、ダウンタウン「ガキの使いやあらへんで」の年末恒例「笑ってはいけないシリーズ」。私もつい先ほどまで、某無人島の番組とチャンネルをパチパチ変えながら視聴し、まさかの番宣兼ねた川口春奈のスケ番ネタが結構ツボで序盤から爆笑しておりました。
そんなガキの使い「笑ってはいけないシリーズ」、実は私のイギリス人の友人も大好きで、あまり日本語が理解できなくてもシンプルに面白いという理由でかつては日本でDVDを買い漁るほどのハマりっぷり。やっぱり、ああいうビジュアル込みのお笑いは言葉の壁も越えていくんだなぁと感心しているわけですが、そんな「笑ってはいけない」の魅力に魅せられたのが、フランスの新世代ハウスプロデューサーのVanderkraftです。
新世代フレンチハウスの特徴はファンキーなベースラインとディープハウス風シンセ
Vanderkraftは、ぶっちゃけたところ、よっぽどのフレンチクラブミュージック狂でないと知らないと思われる日本では全く無名のプロデューサーですが、聞くところによると今年は、あくまでアングラなフレンチハウス界隈での話ですが、その知名度、人気は急上昇中の赤丸要チェックプロデューサーだそうです。音楽的にはフレンチハウスのお家芸であるディスコフレーバーで、ファンキーで腰にくるベースラインが印象的かつ、そこにテン年代の若手らしく90sライクなディープハウスライクなシンセを絡めたトラックが特徴といったところです。
特に今年、フランス・ノルマンディーの新興レーベル「Planet Gwer」からリリースした『Au-delà des Mers』というEPではまさに先述のテイストが見事に反映されたものになっており、同EPにはクラブでのDJ使いもかなり期待できるファンキーシットなディープハウス「Ce Bon Vieux Jean Lassalle」、エレガントかつディスコライクなギターのリフがいかにもフレンチ・タッチでイケてるその名も「La Romance」といった2曲に加えて、「Kimono Doux」という日本の”着物”をイメージさせる謎の曲が収録されているのですが、この「Kimono Doux」がとにかくクセモノ。
フレンチハウスとサンプリング
フレンチハウス、フレンチタッチにとって、やはりサンプリング、70~80sのレアグルーヴをネタにするという手法は、Daft Punk(ダフト・パンク)を筆頭にした90年代のDaft一派のお家芸で、その流れは、90sのフレンチタッチをフレンチタッチ1.0とするなら、2000年代のEd Banger、Institubes周りのフレンチエレクトロ、つまりフレンチタッチ”2.0”にも見事引き継がれています。
例えばJustice(ジャスティス)の音楽はシンセのみでバーストさせて作ったイメージが一般的にあるかと思いますが、実は1stアルバムの『Cross』あたりなんかでもそれなりにレアグルーヴからサンプリングしていたりします。(そのほかにも2000年代のポップスやヒップホップからもサンプリングしていたりも)。
で、そのフレンチハウスの新潮流として、ここ3年くらい前くらいから注目されているのが、超絶マルチプレイヤーFKJ率いる「Roche Musique」周辺がフレンチタッチのバージョンでいえば、”3.0”と捉えている方も中にはおられるかと思います。
FKJは先述のとおり、マルチプレイヤーのため、他の曲からサンプリングする必要は全く皆無といった感じなのですが、彼の場合は、自分で弾いた楽器のフレーズをサンプリングネタにするという、変態、もとい完璧超人ぶりを発揮するタイプの”サンプリング”スキルの持ち主なので、広い意味でフレンチタッチ3.0とサンプリングとの間には浅からぬ縁があります。
Vanderkraftは、Roche Musique系とは同じフランスとはいえ、もっとディスコ色が強いと個人的には思うので、彼の音楽性については、フレンチタッチのバージョンでいえば、”4.0”なのかなと思いつつも、まだそこまで新潮流は作れていないので、”3.5”くらいで止めておくのが現状では妥当なのかもとか思ったりしています。
閑話休題。
笑福亭鶴光、元マネージャー藤原をサンプリング素材として活かす
フレンチタッチのバージョン問題はさておき、このVanderkraftが、それを90年代から現代まで脈々と受け継がれているフレンチタッチのお家芸的マナーを踏襲し、サンプリングを駆使して作り上げたのが先述の「Kimono Doux」なる曲です。驚きはそのサンプリングセンス。なんと、この曲、どういう経緯で「笑ってはいけない」を知ったのか、こともあろうにシリーズを代表するダウンタウンの元マネージャー藤原氏による「丸々OUT」というフレーズをサンプリング。
さらにシリーズに出演した笑福亭鶴光までサンプリングしており、トラック前半の流麗なシンセ、腰にくるファンキーなベースラインに加えて、ブレイク突入以降、そういった「笑ってはいけない」ネタが飛び出し、とんでもなくカオスな展開になります。特にその鶴光セクションから引き継いだ「今、17歳」というフレーズがループしまくる点はマジでシュール。ですので、DJ的にはクラブのフロアではネタとしてブチ込めるかどうかのかなりシビアなジャッジが必要になってくるものの、ハマれば、ものすごく盛り上がる。この曲はそんな曲だと思います。
ちょっと駆け足で説明しましたが、これについてはマジで百聞は一見にしかずなので、まずは一度、ご自分の耳で確認していただけたらと思います。私的には、2016年のサンシャイン斎藤がすごく好きなので、今度はそれをネタにしたものもこのVanderkraftに制作していただきたいなと思っています。
ちなみにこの「Kimono Doux」を含むEPをリリースしたPlanet Gwerは、京都在住で、海外から数多くの良質なディープハウスをリリースする猛者、Yusuke Yamamoto氏の『Lovely Day』EPもリリースされています。
そちらには笑ってはいけないネタは出てきませんが、そのかわりに正統派のイケてるディープハウスを堪能できる1枚になっています。以上お後がよろしいようで。
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Top Image via Planet Gwer bandcamp