letter music

日々更新される音楽情報を雑談を交えて文字化するWebzine

インドネシアのガムランガバユニット「Gabber Modus Operandi」とは何ぞや? という話

f:id:fantasydub:20200620183852p:plain前半では自分のTwitter投稿をきっかけにインドネシアのガムランガバユニット「Gabber Modus Operandi」のヤバさが伝わる動画を楽しめるインスタグラムアカウントについて書いたわけですが、この後半では改めて「Gabber Modus Operandiとは何ぞや?」の部分に触れていきたいと思います。 

 

Gabber Modus Operandi メンバーの音楽的背景

「Gabber Modus Operandi」は、インドネシア・バリ島を拠点に活動するIcan HaramとDJ Kasimynによるユニットで、2018年から活動を開始し、現在までに『Puxxximaxxx』(2018年)、『HOXXXYA』(2019年)の2枚のアルバムをリリースしています。

Puxxximaxxx

Puxxximaxxx

  • Gabber Modus Operandi
  • エレクトロニック
Hoxxxya

Hoxxxya

  • Gabber Modus Operandi
  • エレクトロニック
  • ¥1222

メンバーのIcan Haramは、インドネシアの実験音楽シーンやブラックメタルシーン、DJ Kasimynはバリ島のパンクシーンで活動してきたという経歴の持ち主で、その2人がそれぞれのルーツとなる音楽と儀式音楽であるガムランや1970年代頃に生まれたインドネシア大衆音楽のダンドゥットなどのインドネシア音楽に、ガバ、トランス、フットワークといった欧米のダンスミュージックの要素を組み合わせて生み出されたものが、あの特異な「Gabber Modus Operandi」の音楽です。

youtu.be

彼らの音楽はガムランとガバを組み合わせた”ガムランガバ”がアイコニックな音楽性であることは間違いありませんが、実際にはガバだけでなく、先述のようなトランス、フットワークを感じる曲も確かに存在します。

youtu.be

 

インドネシアに定着する”やかましい音楽”

こういった音楽性からわかるのは、ガバにしろ、ガムランにしろ、彼らのルーツのパンクにしろ、ブラックメタルにしろ、実験音楽にしろいわゆる”やかましい音楽”がルーツになっていることですが、興味深いのはこれらを結びつけるのがインドネシアという土地柄だった点です。

彼らの拠点とするバリは、観光客向けのちょっとしたイビサ的なムードもあり、トランス、特にサイケデリックトランスのシーンが存在する一方、ローカルシーンにはパンク、メタル、ノイズシーンも確立されるなど、いわゆる速くてやかましい現代音楽が根付いています。

youtu.be

またガムランは打楽器の音が特徴的であり、民族的にも”やかましい”音楽と親和性が高かったことがあのような特異な音楽につながっています。

youtu.be

ちなみにやかましい音楽がインドネシアで受け入れられる理由として、メンバーは「誰かが大声で騒いでいたとしてもインドネシアは警察を呼べるような場所ではない」と冗談っぽく語っているのですが、こういった背景を考えるとそれもあながち冗談ではないのかなと…。

テン年代のダンスミュージックのグローカル化とも結びつく音楽性

民族音楽の面で言えば、先述のダンドゥットも関係があります。ダンドゥット(Dangdut)はインドネシアの伝統楽器にエレキ楽器を取り入れたご当地ポップス的な音楽なのですが、それにハウスのビートを取り入れ、高速化したたものが日本では高野政所氏で知られる”ファンコット(Fancot)”。

youtu.be

それをアップデートして今様にしたものがGabber Modus Operandiの音楽スタイルとして捉えることができるのですが、そこにはテン年代のネット起点で広がった欧米のダンスミュージックが非欧米圏に伝わり、独自進化を遂げ、さらにそれがまた世界的に注目される”グローカル”の影響も少なからず見受けられます。

Gabber Modus Operandiの音楽性でいえば、その要素として挙げられるのは、テン年代に世界的に広がったジューク/フットワーク、Gabber Eleganzaによるガバ・リバイバル。それらが新旧のインドネシアに根付いた音楽と結びつき、新たな”グローカル”音楽になっている点は非常に興味深いなぁと。

youtu.be


さらにこういったことに関連する点として、ガバを始め、パンク、メタルなどハードコア文化をインドネシアのローカル性に再翻訳するとメンバーが語っていることにも注目したいです。

 

儀式音楽が持つ“トランス”要素

またサイケデリックトランスなど”トランス”の要素もGabber Modus Operandiの音楽性における重要な部分となっています。速いBPMの高速音楽と民族楽器を取り入れた音楽性は、サイケデリックトランスの音楽的な特徴でもありますが、彼らの場合は、その元々の”トランス”の部分、精神性にも重きをおいているようで、ガムランやバロンガンといった音楽や舞踊が持つ儀式的な要素もあの音楽性につながっていると思います。

youtu.be

彼らは自分たちの音楽について”デジタル文化への移行期にあるミレニアル世代のインドネシア人としてのアイデンティを探求するためのもの”と語るのですが、”グローカル”な音楽性を軸に考えていくとなんとなくその意味が理解できるような気がします。

またそのガムランを取り入れることについては、ガムランの音を聴くのが日常で取り入れるのは自然なことであり、エキゾチックな要素としてガムランを使った曲はあるが、自分たちはそうではなく単なるエキゾチックな意味合いよりもテクスチャーではなくて心から好きだから取り入れているとのこと。(西洋人がエキゾチックという意味合いでガムランをサンプリングすることに対して植民地主義を感じるとの発言も)

ちなみに彼らの曲で聴けるガムラン部分はサンプリングではなく、ガムラン音階を使って打ち込んでいるようです。

アフリカや中国などグローカル化したクラブシーンと親交を深める

興味深いのは彼らはアフリカのシンゲリ(Singeli)、ゴム(Gqom)や近年の中国や台湾のシーンで注目されるエクスペリメンタルシーンなど同じくグローカル化したシーンにも大きな関心を持っている点。その証拠に昨年のアルバム『HOXXXYA』が上海拠点ながら近年世界的にも注目されるアンダーグラウンドレーベル「SVBKVLT」からリリースされたほか、ウガンダの木琴グループ「Nakibembe Xylophone Troup」とコラボするなど親交を深めています。

 

テン年代に一世風靡したEDMブームが落ち着いた現在は、近年のヒップホップブームやK-POPの台頭で国籍や言語の壁を超えて評価される音楽がメジャーシーンでも増えています。その一方でアンダーグラウンドシーンにおいてもこういったグローカルな音楽が注目を集めていることは非常に興味深いですね。

また日本においてもグローカルという点では近年の民謡クルセーダーズの世界的な評価もその文脈に遠からず連なるものだし、テン年代の寺田創一再評価による90sジャパニーズハウス再評やシティポップ再評価のような”再評価ブーム”という土壌があることを考えると、そろそろ2000年代に沖縄民謡をベースにしたクラブサウンドで日本のアンダーグラウンドシーンで注目されたRyukyu Undergroundの再評価が起きてもおかしくないのでは?と思ったりします(あとハードコアつながりでいえば、ハウスサイドではない寺田創一『Sumo Jungle GRANDEUR』期も)。

youtu.be

そんなわけでGabber Modus Operandiに興味を持った方はRyukyu Undergroundもぜひ聴いてみてください。そして、アルゴリズムの壁を乗り越えて、日本のグローカルクラブミュージックという新たな再評価ブームを立ち上げましょう(笑)。

余談ですがRyukyu Undergroundのこのアルバム、ダブ、トリップホップ、ドラムンと沖縄民謡を融合させたマジ名盤です。

Ryukyu Underground

Ryukyu Underground

  • 琉球アンダーグラウンド
  • ワールド
  • ¥1528

▶︎Follow letter music Twitter! 

Top image via Neocha/Oktavian Adhiek Putra

Reference:
https://djmag.com/features/get-know-gabber-modus-operandi
https://daily.bandcamp.com/features/gabber-modus-operandi-hoxxxya-interview
https://en.wikipedia.org/wiki/Music_of_Indonesia#Dangdut
https://fnmnl.tv/2019/12/29/89147