今朝、起きたら最近話題になっていたFrank Ocean(フランク・オーシャン)主催のクィアクラブナイトにフレンチエレクトロの代表格、Justice(ジャスティス)がヘッドライナーとして出演。しかも両者の未発表コラボ曲らしきものまで当日はプレイされていたという情報が報じられていました。
Frank Ocean主催クィアクラブナイト「PrEP+」は気になることが盛り沢山だった
Frank Oceanといえば、最新の「W Magazine」によるインタビューで、最近はテクノ、ハウス、フレンチエレクトロなど、これまでの彼の音楽性とはまた違ういわゆる4つ打ち系のクラブミュージックに興味を示していることを語っていたことが話題になりました。そのため近い将来、そういったコラボも行われるのかな〜とおそらく世界中の音楽ファンはうっすらと期待していたかと思いますが、どうやら予想よりも大分早くそれは現実のものになった模様。
”BPM160”を軸にしたベースミュージックセットでUKで人気のSherelleが出演しているのがアツい
ニューヨークにて現地時間10/17に開催されたイベント「PrEP+」には、告知の段階でスペシャルゲストDJが出演することが言われており、当日はJusticeのほかにSoulection所属のSango、そして、ロンドン拠点の若手女性DJで”BPM160”を軸に据え、フットワーク、ジャングル、ドラムンなど様々なベースミュージックを縦横無尽にミックスすることで注目を集めるSherelleが出演しました。
もちろんJustice出演もアツいことには間違いないですが、私的にはこのSherelle出演はそれ以上にアツい出来事! ちなみに今月も4日間に渡り行われたBoiler Room主催フェスの「Day 4: Club」に出演しており、エナジーフルで速くて重いベースミュージックでフロアを沸かせまくるアツいセットを披露しているのですがこれがまたクール。というわけでマジ誰か日本に呼んでくれませんかね? と強く思う次第です。
ちなみに彼女は若手のロンドンのアーティストを中心にフックアップしていくReprezent Radioで番組を持っていたり、レーベル「HOOVERSOUND」の運営にも関わっているほか、先月からはかの有名なBBC Radio 1でもレジデンシー番組がスタートしています。
I am absolutely over the moon to announce that I am going to be one of the new residents on @bbcr1 for the next 6 months.
— SHERELLE (@iamsherelle) September 5, 2019
From listening during my GCSEs all day long to now having a show is fucking outrageous. I am so so excited and looking forward to play 160 😭😭😭 pic.twitter.com/yPDEAygfe1
また女性のみで構成されるUKのコレクティヴ「SHOOCK」(SHOOCKの中心人物であるFAUZIAのDJもすごくカッコいいので一見の価値ありです)やロンドンの有色人種LGBTQコレクティヴ・BBZ(Bold Brazen Zamis)とも関係性が深いDJです。
余談ですが今年、彼女が出演したBoiler Room放送回があるのですが、その際、別の出演者だった男性DJのRiz La Teefが彼女がプレイ中に勝手にリワインドしたことがUKのクラブシーン界隈を中心に物議を醸しました。
DJの実力もさることながらLGBTQコミュニティとも密接に関わりを持つSherelleをFrank Oceanが自身のクイアクラブナイトに招いたこともこのイベントでは、かなり注目すべきポイントだと思っています。
「PrEP+」って何? ってなるから簡単に説明
私はUKベースミュージックが好きなため、本稿ではそっち系のトピックを先に持ってきたのですが、ここで「PrEP+」について簡単にご紹介します。
「PrEP」とは、HIVの感染予防薬の名称であり、イベントではHIVが流行した80年代のニューヨークシーンをオマージュするもので「もし、その時代に「PrEP」があれば…」をコンセプトにしたものだといいます。
イベントでは写真や動画撮影、両者の合意がないナンパやセクシャルな行為、人種差別、ホモフォビア、トランスフォビア、性差別、障害者差別などあらゆる差別行為の禁止、さらにダンスフロアはダンスするためのものなのでダンスしないことを禁止といった4つの禁止事項が掲げられていました。
こういった禁止事項は現在のクラブ側が客側に示すステイトメントと同内容で、最近、東京でも以前波紋を呼んだクラブ内でのセクハラが問題になって以降、ステイトメントとしてクラブにも掲げられるようになっています。
話題の日本のエロ同人作家作品ジャケDJ Mixとその作り手とSXYLK
そんな「PrEP+」ですが、NY拠点のプロデューサー/DJのSXYLKが出演者の1人として、”#Techno”どおりテクノを基調にしつつもヒップホップやR&Bも取り入れたジャンルベンディングな内容でイベント名を冠したDJ MixをSoundxCloudに公開したことが話題になりました。また日本ではそのカバーアートに屑屋 (利行)という日本のエロ同人作家のイラストが使われていたことにも注目が集まりました。
ちょっとこのあたりはどうやら情報が錯綜してややこしいのですが、The FaderによるとSXYLK自身はJustice出演のせいで自分の出演時間が削られた。現場には実際にアンダーグラウンドで活躍するクィアDJはいなかったなどとSNS上でイベントに対し批判的な発言を行なっているようですが、Frank Ocean側はSXYLKがそもそも出演ラインナップには加わっていなかったと出演を否定しています。そのためDJ Mixは「PrEP+」を出しに使った売名行為の可能性も無きにしもあらず。
しかしながら、その是非はあるとはいえ、このDJ Mix自体はユニークかつ良くできたもの。今後、DJとしての活躍の幅も広がる可能性も無きにしもあらずだなと思わせられる内容で個人的には大好きです。
また批判という点では「PrEP+」開催に対しても別の批判が寄せられており、まさに賛否両論という感じ。そのうちの批判の1つは、「PrEP」の製造会社であるGilead Sciencesから資金提供を受けているというもの(Frank Ocean側は否定)。
ほかにもLGBTQコミュニティやHIV活動家団体の「ACT UP(アクトアップ)」から80年代当時にこのコミュニティにいた人々に対する敬意にかけている、さらには「PrEP」は実際には限られた人々しか入手できないため、事実誤認につながるというような批判を受けていることが報じられています。
also there is an underlying assumption that since PrEP “exists” it is accessible to all — when the reality is, the CDC referenced 1.2 million people in the U.S. should take PrEP but only a fraction of them have access.
— ACT UP New York (@actupny) October 17, 2019
またFrank Ocean自身もそういった批判に回答するべく、彼のファンにはおなじみのTumblrにて回答を行なったことも報じられています。
ちなみにアクトアップ関連でいうと昨年、日本でもクラブカルチャーの要素も取り入れられた映画『BPM ビート・パー・ミニット』が公開されています。興味を持った方はそちらもチェックしてみてはいかがでしょうか?
JusticeとFrank Oceanがコラボしたら直球のやつが出来上がった説
このように色々と物議を醸した「PrEP+」ですが、音楽ファンにとってのポジティヴな話題はFrank Oceanの未発表新曲と思しき曲と、冒頭でもお伝えしたJusticeとの未発表曲と思しき曲が披露されたということでしょう。
イベントでは先述のとおり、写真、動画とも撮影禁止だったもののやはり隠れて撮影している人もいたようで、2つの未発表曲の一部はすでにネット上に出回っています。そのうちのJusticeとのコラボ曲(仮)ですが、聴いてみると見事にJustice x Frank Oceanだなと思わされました。
あたかも両者の典型的なイメージを直球で掛け合わせたというか、柄シャツに柄ズボンをあわせるというか、そんないかにもな感じがするサウンドで少々驚きましたが、そのテイストもまたハイセンスなFrank Oceanが故の”1周回ってカッコいい”的なやつなのかもしれませんね。ただ、それにしてもリフのJustice風味の強さよ…。
New Justice and Frank Ocean collab from PrEP+ pic.twitter.com/NathgoeJly
— Harrison Williams (@DayCart_) October 18, 2019
2016年のアルバム『Blonde』では、Justiceと同じレーベル「Ed Banger」に所属するSebastiAn(セバスチャン)をプロデューサーの1人に迎えており、最近のクラブ志向発言、特にフレンチエレクトロに興味があるということを考えると今回のJusticeとのコラボにはおそらくSebastiAnが1枚噛んでいるのではないでしょうかね。
この未発表曲がどのタイミングで詳細が明らかになるかはかなり気になります。今後、近年のFrank Ocean新曲発表の場になっているBeats 1『blonded radio』の最新エピソード配信が待たれますね。ただ、それもいつになるんだよという話ではありますが…。長々と書きましたがとにかくFrank Oceanのダンスミュージック志向はガチだったし、SherelleフックアップとまさかのJusticeとのコラボが胸アツだったという話です。以上、お後がよろしいようで。
追記:
JusticeとFrank OceanのコラボはJusticeによるリミックスだった模様。
このJustice RemixをB面に収録した7インチ盤『Dear April』は、現在、Frank Oceanの「blonded.co」にて1,839円で販売されています。
またリリースにあわせて「PrEP+」にて同曲をプレイするJusticeの様子を確認できるフッテージ映像も公開されています。
詳細はこちら。
またリミックスとは別に新曲「DHL」もデジタルリリースされています。
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Top Image via Pitchfork
Reference: The Fader1,2, Mixmag, Sterogum, Pitchfork