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Dua Lipa配信ライブ「Studio 2054」、ここが良かったポイントを挙げてみる

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日本では11月28日(土)18時より配信が行われたDua Lipa(デュア・リパ)の配信ライブ「Studio 2054」。これが予想以上に良い内容でガッツリくらいました。

 

「Studio 2054」は、事前の説明に

巨大ウェアハウス・スタジオを舞台に、本公演のために制作された様々なライブ・セットをデュアが飛び回る“型破りでユニークな”パフォーマンスを披露予定

とあるように、最近の配信ライブでよくあるVR、ARなどXRテクノロジーを用いたバーチャルライブとは異なるものであったため、XR系のバーチャルライブが好きな自分としては正直、最初はあまり興味を持っていませんでした。でも、開催数日前になって、なんとダンスポップのOGで最近ど80sディスコ回帰したKylie Minogue(カイリー・ミノーグ)のゲスト出演が発表されたことをきっかけに俄然興味を持ちだした私は速攻で配信チケットをゲット。というのも新旧のディスコディーバ共演がどうしても気になって仕方なかったから…。

DISCO (Deluxe)

DISCO (Deluxe)

  • カイリー・ミノーグ
  • ポップ
  • ¥1935

 

”リアルライブとMVの中間のもの”をバーチャル要素なしで作り上げた「Studio 2054」

そんな理由でチケットを買ったこの配信ライブ、端的に言えば、また”配信ライブの新しい在り方”が提示されたなという印象です。

”配信ライブの新しい在り方”とかいうとどうしても先述のようなテクノロジーが絡んだものをイメージしがちですが、最近の配信ライブでは”リアルライブとMVの中間のもの”を配信ライブとして表現する傾向があるように思います。

 

「Studio 2054」には、”フルCGを使って現実ではありえない表現でイマーシヴな体験を…”のような要素はありませんでしたが、タイトルにあるとおり、伝説のディスコ「Studio 54」にインスパイアされた架空のディスコナイトの再現をバーチャル要素なしで真っ向に取り組んだ"ライブ作品"になっていたと思います。

映像的には例えば、最近のバーチャルを使った配信ライブでは天井の空間にARで照明を足したり、リアル演出を強化するようなことも行われているわけですが、今回はDua Lipaの音楽性が80sだったこともあってか、逆にバーチャルなしでフィジカルな演出だけにしたことでバーチャルにはないアナログの良さみたいなものが上手く表現されていたような印象があり、他の配信ライブとの差別化という点ではそこがアイデア勝ちな部分だったなぁと。

映像的にはバーチャルな要素こそありませんでしが、録画されているからこその映像の色味にレトロ感をだした加工が見られるような部分もあったりと細かい部分もあるのですが、全体的には、ストーリー仕立てのライブ演出がうまく“巨大ウェアハウス・スタジオを舞台に、本公演のために制作された様々なライブ・セットをデュアが飛び回る“の部分にハマっていた感じがして良かったです。

感覚的にはそれこそ80sのMichael Jackson(マイケル・ジャクソン)「Thriller」MVの雰囲気をありつつ、それを先述の、”リアルライブとMVの中間のもの”としてパンデミック時代の配信ライブにあわせてアップデートしたような印象も受けました。

『FUTURE NOSTALGIA』と『Club FUTURE NOSTALGIA』のコンセプトを踏襲したライブ演出

また、私はせっかくなので舞台裏とアフターパーティ映像も観れるVIPアクセス付きチケットを購入したのですが、舞台裏映像では『Club FUTURE NOSTALGIA』音源が使われたり、アフターパーティはThe Blessed Madonna(ザ・ブレスド・マドンナ)が、ダンクラしばりのDJをしていていたし、本編含め『FUTURE NOSTALGIA』及びそれに付随する『Club FUTURE NOSTALGIA』の世界感をしっかり踏襲していたのが良かったです。

ちなみに本編は、『FUTURE NOSTALGIA』パート1、ゲストとのコラボ曲&旧曲パート、『FUTURE NOSTALGIA』パート2とざっくり3つのパートに分けられていてそれがノンストップのDJ Mixのように構成されていたかと思います。

『FUTURE NOSTALGIA』パート1では、『FUTURE NOSTALGIA』収録曲の中でもどちらかというと「Levitating」、「Pretty Please」のような緩めのディスコ曲でまさにライブの序盤感があり、ゲストとのコラボ曲&旧曲発表パートでは、FKA twigsがお得意のポールダンスに加えてDua Lipaとの未発表コラボ曲を披露。

 

さらに最近やたらと80s寄りになっているMiley Cyrus(マイリー・サイラス)との「Prisoner」、J Balvin(J.バルヴィン)、Bad Bunny(バッド・バニー)らとのレゲトン曲「Un Día (One Day)」がステージに用意されたレトロなTVから流れる映像として演出に取り入れられたほか、ベルギーのポップスターのAngèle(アンジェル)が登場しての「Fever」も披露されるなど豪華なゲストとのひとときに。

youtu.be

youtu.be

 

また、このパートではThe Blessed Madonnaを招いてのエアロビ映像も作られた『FUTURE NOSTALGIA』の人気曲「Physical」が披露されたり、代表曲「New Rules」もあり。その後半ではハウシーなCalvin Harrisとの「One Kiss」、Silkcityとの「Electricity」で『Club FUTURE NOSTALGIA』感も演出。ちなみにその2曲の間にはKylie Minogueも登場して、彼女の「Real Groove」も披露しましたが、個人的には「Electricity」でKylieがコーラスパートを担当してたのもアツかったですね。

終盤ではElton Johnがリモートで「Rocket Man」を披露したと思ったら、Daft Punk「Technologic」、Cassius「I <3 U SO」とのマッシュアップする形で「Hallucinate」が始まり、ラストの「Don’t Start Now」では、まさかのABBA「Gimme Gimme Gimme」ネタのMadonna「Hung Up」もマッシュアップされるという…。

マッシュアップを絡めてくるところは『Club FUTURE NOSTALGIA』らしさを感じる部分なのですが、おそらくその元ネタは同作でも影響が伺えた00年代のMadonnaのライブツアー『The Confessions Tour』のオマージュ的な部分でもあるのかなと(『Club FUTURE NOSTALGIA』に見た『The Confessions Tour』要素は以前こちらの記事で書いたのでご参照ください)。

 

というわけで「Studio 2054」でも『FUTURE NOSTALGIA』と『Club FUTURE NOSTALGIA』で見受けられた80s~00s年代要素を辿る感じもしっかりとライブに取り入れられていたのも良かったです。

配信ライブは、本当にこの一年で目覚ましい発展を遂げていますが、こんな風に回が重ねられていくことで、色々な可能性が提示されてくることは非常に面白いですね。その意味では”リアルライブとMVの中間のもの”を次世代ポップアイコンというスターの地位(ライブ制作費すごそうですがそれもスターだからこそ可能みたいな)をフルに活用して作り上げたDua Lipaは、またひとつEDM以降のダンスポップを背負っている自負みたいなものを見せつけたのではないかなと思っています。

『Club FUTURE NOSTALGIA』でMadonna呼んで、配信ライブではKylie呼んで、最後にMadonnaぶっこんでくるとか、確信犯すぎてもはや清々しい。今年はDua Lipa以外にも00s風80sリバイバル作品を発表するポップスターが目立ちましたが、今回のライブではもはや「DQもFFも持っているスクエニですが何か?」と言わんばかりの本命感というか、堂々たる横綱相撲を見せたDua Lipa。もうこれからは彼女にポップスの未来は委ねていいんじゃないかな? という感じです。いやはや良いものを見せて頂きました。

Dua Lipa 「Studio 2054」セットリスト
Future Nostalgia

Levitating

Pretty Please

Break My Heart

(Untitled) (with FKA twigs)

Physical

Boys Will Be Boys

Cool

New Rules

Prisoner (with Miley Cyrus)

Un Día (One Day) (with J Balvin, Bad Bunny, and Tainy)

Fever (with Angèle)

One Kiss

Real Groove (with Kylie Minogue)

Electricity

Rocket Man (Elton John)

Hallucinate

Don’t Start Now


追記:
Dua LipaとFKA twigsのコラボ曲、Jorja Smithがコライトしている模様。

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 Top image via Dua Lipa