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Avicii『TIM』収録の坂本九ネタ「Freak」とColdplayのChris Martinとのコラボ曲「Heaven」を聴く

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先週末、東京でも先行試聴イベントが行われていたAvicii(アヴィーチー)の最新アルバム『TIM』の配信がついにスタート。取り急ぎ、私はSpotifyで配信されている音源を聴くことができました。 

 

Avicii新作アルバム『TIM』収録曲「Freak」と「Heaven」の話

そんなわけで早速気になっていた、かの有名な坂本九「上を向いて歩こう」ネタ曲「Freak」をまずは最初に再生してみましたので、その感想を。

同曲については、リリース前のタイミングでGeniusがソングライタークレジットを公開していたため、先述の「上を向いて歩こう」で作詞を手がけた永六輔と作曲を手がけた中村八大の名前が楽曲クレジットに入っていることは存じていましたが、私的にそれはちょっと初めに確認したいなと思い、いの一番でクレジットをチェック。

そうするとやはりというか、当然というか彼らの名前がそこにあるではないですか! あとこちらもその時点でわかっていたことですが、Sam Smith(サム・スミス)とBon Iver(ボン・イヴェール)Justin Vernon(ジャスティン・ヴァーノン)の名前も確認することができました。う〜ん、Genius、そういう意味では本当にすごいな。

 

次に曲調の話を。これも試聴イベントですでに聴いたことがあるという方やその様子を撮影した動画がもうすでに出回っているため、すでに「Freak」がどんな曲かは知っているという方も多いかと思います。でも念のため情報として書き記すなら、同曲は、ダンスホール調で曲のドロップの部分に「上を向いて歩こう」のフレーズが効果的に使われているといった感じです。

Avicii「Freak」は坂本九、Sam Smith、Bon Iverによる3つの曲が合成されたキメラ曲

またこれもGeniusによってすでに公開されていたことですが、ソングライタークレジットにあるとおり、「Freak」には「上を向いて歩こう」のほかにもSam Smith「Stay With Me」とBon Iver「Skinny Love」がネタとして使われています。

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その使われ方がどんな風になっているのか気になっていたのですが、最初に聴いてみた感じは、曲中のギターリフの部分は、「Skinny Love」の要素が強いのかなという印象。

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あとイントロなどで聴けるボーカルパートのメロディーラインは、「Stay With Me」で、サビに「Skinny Love」のメロディーラインが使用されているといった感じです(ちなみにこれはあくまで自分で実際に聴いた上での個人的な見解にすぎないのであしからず。この"サンプリング"については、公式情報の公開、もしくは分析動画なんかが公開されることに期待したいものです)。

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そのため、同曲はトロピカルで哀愁漂う感じのダンスホールをベースに先述の3曲の要素が合成された”キメラ”な曲と言えます。

これは余談ですが、『TIM』は、Aviciiが残した曲やメモなどを頼りに別のプロデューサーが完成させたものと言われているだけに、私的にはこのキメラ要素は元々の彼のアイデアだったのかどうかということが少しばかり気になりますね。

ちなみに余談ですが、「Freak」にはTom Pettyの名前もソングライターとしてクレジットされています。これは以前、「Stay With Me」がTom Pettyの「I Won't Back Down」に似ていると指摘されたことをSam Smith側が認め、のちに同曲にクレジットを加えたことによるものだと思われます。
詳しくはこちら。

未発表曲として知られていた「Heaven」

一方、現在、YouTubeにリリックビデオが公開され、特設サイトでは歌詞が英語と日本語で公開されている収録曲「Heaven」。

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同曲は、Aviciiの死の直後に彼と親交があったEDMプロデューサー、Nicky Romero(ニッキー・ロメロ)が、追悼としてステージ上でプレイしたことでよく知られていた未発表曲です。

vimeo.com

また同曲は生前、AviciiとColdplay(コールドプレイ)のChris Martin(クリス・マーティン)がコラボして制作していたと言われる曲です。

2人のコラボはこれが初ではなく、以前、AviciiはColdplayの「A Sky Full Of Stars」を共同プロデュースしています。Aviciiのドキュメンタリー映画「Avicii:True Stories」では、2人が一緒にスタジオで「A Sky Full Of Stars」と思われる曲を制作する様子が見受けられます。

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ちなみに「Heaven」は、2018年と今年1月にもリーク音源が公開されています。また先述のNicky RomeroがAviciiの追悼としてプレイしたバージョンは、デモ段階のものだといわれており、リークされた音源含め、複数のバージョンが存在すると考えられていました。

なお、曲調はAviciiらしいコード、メロディー、ドロップとChris Martinの声が絡むアンセミックな王道系EDMになっています。

 

晩年のAviciiが頭に浮かぶ「Heaven」のリリック

また同曲で次に注目したいのが歌詞です。内容的には、晩年のAviciiの苦悩とそこからの解放という感じですが一方で悲劇的な最後を遂げた彼をイメージさせるものになっています。

特に

打ちのめされ 血まみれになった
痛手を受けたのは 君の愛とドラッグのせい

という部分は自殺によって短い生涯を閉じることになってしまったAviciiの姿を彷彿とさせるため、ファンの中には複雑な気持ちになる人も多いのではないかと。

ただ、歌詞には

きっと今 僕は死んでしまったんだ
たった今 死んでしまったんだ

そうだ今 死んでしまったんだ
今 死んで
天国へ行ったんだ

という部分もあり、天国にいるであろう現在のAviciiがそのように安らかな状態であればこれ幸いだなと思います。

今回は全12曲が収録された『TIM』のうち、特に気になっていた2曲について感想を書いてみました。ほかの曲の感想については、また別の機会にでも。

 

最後に「Freak」では坂本九が”サンプリング”されていましたが、先月リリースされたTyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)の新作アルバム『IGOR』でも収録曲「GONE, GONE / THANK YOU」が山下達郎の「Fragile」をサンプリングしていたことが話題になりました。 

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この2曲が注目を集めることで、今後、もしかしたら海外の人気アーティストによる日本のレアグルーヴ・サンプリング熱がさらに盛り上がるなんてこともあったりして…。
現在の空前ともいえる世界的な和モノ/シティーポップブームを考えるとあながちそれも"なきにしもあらず"な気がします。

個人的には流行に敏感なDiplo(ディプロ)あたりが、「えっ、誰それ?」レベルの日本人でさえ知らないアーティストの曲をディグってきてサンプリングなり、弾き直しすることで話題をさらってほしいなぁとちょっと思ったりします。以上、お後がよろしいようで。

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Top Image via Genius
Reference: Avicii SP Site