4月に亡くなったEDMを象徴するプロデューサーのAvicii(アヴィーチー)。その新作アルバムリリースの可能性が報じられています。
Avicii生前未発表音源を使ったアルバムリリースの可能性が報じられる
まずYour EDMによると、先述の訃報が報じられる前、Aviciiは、昨年リリースした復活EPの『Avīci(01)』に続くもう1つの『Avīci』シリーズをリリースする予定をしていたそうで、生前、彼はすでに200曲近い曲を完成させていたそうです。
そして、現在は彼の故郷であるスウェーデンのメディア「Aftonbladet」によると、彼の家族がそのストックされた音源を使ったアルバムリリースについて賛成しているとのこと。
ファンにとっては待望すぎるAviciiのおそらく最後になるであろうアルバムですが、そのことについてAviciiの所属レーベルの社長Neil Jacobsonが以前、Varietyに、Aviciiの死を含め、こういったケースはこれまで彼が一緒に仕事をしてきたアーティストたちの中でも初めてであり、まだリリースするかどうかは定かではないと語っています。
内容はここ数年のAvicii作品の中ではベストとも言われる
しかしながら、一度Aviciiの遺族と話し合いの場を設けるつもりだとも語っています。またその音源については、ここ数年のAvicii作品の中でもベストなものだそうです。
現時点ではそういった状況だそうですが、Aftonbladetは、すでにAviciiの遺族がレコード会社の代表する人物とそのパートナーたちと話し合いの場を設けたこと、さらにはアルバムが今年の年末までにリリースされることに同意していると報じているようです。
現時点ではまだ未確定の情報といった印象ですが、この分だとその未発表音源を収録したアルバムがリリースされるのではないでしょうか? 今後の続報に注目です。
ヒップホップとの距離を縮める最近のEDM
余談ですが先日、知人とEDMの今後についてちょっと話す機会がありました。現状、Avicii全盛時代のような典型的なバンギンな”EDM”とされる曲は、世界的なレベルで見れば、徐々に形を変えつつあり、Future Houseと呼ばれるようなものに移行していくプロデューサーがいたり、Trapなどベースミュージック寄りの音楽にシフトを移すような流れがあることは、ある程度クラブに行ったり、EDMの最新動向をチェックしているような方はすでにご存知かと思います。
その中で最新のEDMシーンの状況は、ヒップホップ、さらにはレゲトンなどラテンミュージックの結びつきが強くなってきているといった印象を受けます。現在、USのメインストリーム、特にチャートアクションの上ではトレンドは完全にEDMからヒップホップへ移行。最近だとEDC Las Vegas 2018にPost Malon(ポスト・マローン)が出演したことも話題になるなど、全盛期のEDMフェスでは考えられなかったことも起こっています。
そのEDMとヒップホップがクロスオーヴァーしていく流れを作っているのはやはり音楽業界のトレンドセッターDiploであり、3月にリリースしたソロ名義のEP『California』では、GoldLink(ゴールドリンク)、Lil Yachty(リル・ヨッティー)、Desiigner(デザイナー)、DRAM(ドラム)など有名ラッパーから、最近売り出し中のSoundCloudラッパーのTrippie Redd(トリッピー・レッド)、Lil Xan(リル・ザン)といった若手までをフィーチャー。これまで以上にヒップホップとの結び付きを強めた内容になっています。
また例えば今年のサマソニで来日するMarshmello(マシュメロ)然り、ラッパーたちとコラボするスターEDMプロデューサーが増えてきたり、先述のLil Yachty自体もEDMチューンを作りたい発言を行うなど両ジャンルの距離は確実に近づいてきているといった感じです。
I wanna do a big edm song and perform it at one of those festivals, which edm dj tryna make it with me?
— king of the youth (@lilyachty) 2018年5月14日
そこに今、USメインストリームヒップホップでも大人気のラテンミュージック系ミュージシャンコラボの波が加わり、かつてのAviciiのようなEDM然としたEDMチューンは確実に過去のものになりつつあるといった印象を受けます。
Avicii新作アルバムと日本のEDMブーム
よく「EDMは死んだ」というフレーズを耳にしますが、こと日本においては今年のAviciiの死によって、少なくともEDM最盛期の”いかにもEDM”は終焉を迎えたというのが個人的な意見。
とはいえ、EDM自体は進化を続け、Diploのような人物が先述のように従来とは違った形で今も変わらずスターの座に触り続けているため、言葉としてのEDMは死ぬことは当面ないでしょう。ただ、あの頃のEDM、というか日本限定の狂騒はAviciiの死を持って死んだのではないでしょうか?
もちろん、Porter Robinson(ポーター・ロビンソン)だとか、Martin Garrix(マーティン・ギャリックス)だとか若手スターは健在で、世界的にもまだまだ活躍の場は多いです。しかし、日本でクラブ通いするような人以外で、街でたまたま聴いた曲が例えば、これよく聴くなとか、Aviciiだなとか気づくレベルのヒット曲、例えば「Levels」とかは、最近はやはり生まれていないという印象も少なからず受けます。
かつてEDMが日本を席巻しだした当時、TwitterでEDMの功罪は、多くの人をクラブに連れ込んだが、あまり興味のない(音楽愛がない)人が大量に流入するような事態を引き越して、これまでのクラブカルチャーを変えてしまった的なポストを見かけたことがあります。私的にはその文言はEDMの功罪という面ではめちゃくちゃ言い得て妙な印象で、ご存知のとおり、当時のシーンに対する賛否両論を見事に表現していたなと。
ちょっと脱線しましたが、今回のAviciiの新作アルバムについては、先述のような現状を考えた場合、もし、本当にリリースされたとしたら”日本におけるEDMブーム”の締めくくり的な音源になるのかなと思っています。
色々なご意見があるかと思いますが、Aviciiがこの世に残った大いなるEDMの遺産が無事リリースされることに期待したいところです。
*追記:
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