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NHKによるKendrick Lamarインタビュー完全版で特にグッときたポイントをまとめてみた件

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8/29に我が国の公共放送、NHK aka 日本放送協会が、朝の情報番組「おはよう日本」で放送した現行ヒップホップ界最高峰のラッパーKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)インタビュー。同インタビューは、日本の地上波では初となるKendrick Lamarのインタビューとして大いに話題になったことは記憶に新しいのですが、今月に入り、NHKさんがまたやってくれました。

 

NHKによる特集記事「ケンドリック・ラマーは語る」公開

なんとテレビでの放送では収まりきらなかったKendrick Lamarインタビューの完全版とも言える特集記事「ケンドリック・ラマーは語る」なるものを公開してくれたのです。これは日本のヒップホップファン、ひいては音楽ファン全員にとって朗報、一億総オレ得(実際には一億分の何人だとは思いますが)すぎるナイスな企画だと思います。

もともと「おはよう日本」での短いインタビューだけでもグッとくる名言だらけだったKendrick Lamarインタビュー。その完全版ではさらにグッとくる要素満載になっているわけでして、今回は私がその「ケンドリック・ラマーは語る」を読んで特にグッときたポイントをサクッとまとめてご紹介したいと思います。

大ヒットアルバム『DANN.』でのピュリツァー賞受賞について

この項目でKendrick Lamarは、分断が進むアメリカの現実をリアルに描いた痛烈なメッセージを伝える作品である『DANN.』について、「みんなが共感しやすい対話のやり取りが含まれていたのだと思う」と答えています。そして、「人として生きていれば経験することや音楽やレコードを聴くことによってわき起こる感情を純粋に表現しようと思ってアルバムを作りました」と答えていることが非常に印象的です。

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また同作で中で「最も伝えたかったテーマは?」という質問に対し、「基本的には自己表現についてです。感情を表に出すことを恐れてはいけない。特にアルバムの中の「PRIDE.」や「HUNBLE.」といった曲はアルバムに込めた僕の感情を体現しているものであり、自分自身の“品格”を表したものでもあります」と答えており、そのテーマを最も端的に表現した曲の1つとして先述の「PRIDE.」を挙げており、気に入っている点として楽器(ビート)の使い方や歌詞だと答えています。

 

ヒップホップがピュリツァー賞を受賞したということについて

続いて、私的にグッときたのが「ヒップホップ・ミュージックがピュリツァー賞を受賞したということ」についての項目。ここでは、「ヒップホップ・コミュニティーにおいても、多くの扉を開いた出来事だと思う」と答えており、少なからずいるヒップホップを理解していない人々にとって、「ほんの少しでも自分たちラッパーがこの世の中に存在する理由をを知ってもらう新たなきっかけになった」と答えています。特に彼がヒップホップについて「多くの表現の自由や、常に進化する詩的表現、そして教育の機会にあふれている」と答えていることについてはなるほどな〜と感じざるを得ないですね。

またヒップホップの表現がジャーナリズムとして認められたということは、ヒップホップの歴史のなかでも非常に画期的だという問いに対しては、Big Daddy Kane(ビッグ・ダディ・ケイン)やKRS One(KRS・ワン)、Public Enemy(パブリック・エネミー)、Snoop Dogg(スヌープ・ドッグ)、Eazy-E(イージー・E)らからの影響を語り、自分たちが最初から伝えようとしてきたことは、そのコミュニティーに根ざした表現の自由、そして、そこで何が起こっているかということであり、それが、今やそのコミュニティーだけにとどまらず、世界中に広く伝えることができていると語っています。

また「ピュリツァー賞を受賞したことが自分や社会にとってどのような意味を持つか」という問いに対し、「僕がやっていることは単なる歌詞や曲をつくっているだけでなく、もっと深く人々とつながることだという確信につながりました」と答え、「発表してきた作品や、音楽に対して学んできたことは、僕自身のためだけじゃない。これらは、逃げ場のない街に育った子どものためのものだったんです。なので、(アーティストとしての)成功を確かなものにしたこと、そして限界に挑み続ければ何であれ、また次のつながりが生まれるだろうということを確信した」と続けています。この部分は「おはよう日本」でも放送された部分とつながるところだなと思いました。

 

ヒップホップの持つ力について

この項目では、Kendrick Lamarがラップに社会的なメッセージを込めるきっかけについても触れられており、自身の生まれ故郷であるカリフォルニア州・コンプトンの銃撃が絶えない「全米で最も危険」な地区で育った彼が、友人が銃撃されるなど、差別と暴力の過酷な現状を訴えたいと思ったことなどが語られます。

特に「ヒップホップとは、あなたにとって何を実現するためのツール?」という質問に対し、自分にとって、ヒップホップは、「表現の自由」そのものであり、「スネアの音や、ドラムの音、そしていくつかの乱暴な言葉といった創造性を通じてコミュニケーションを図ることは、感情に根ざしたものであり、(ヒップホップは)僕にそうした感情を表現するチャンスをくれた」と語り、自分にとって「それは吐き出さなきゃいけない感情だったし、それこそが、ヒップホップがすべてのコミュニティーに対して成し遂げてきたこと」だと続けています。

もちろん、そんな彼もラップを始めた幼少期(9~13歳)頃は、ただとにかくラップすること、リリックを書くことが楽しかったからやっていたものの、それが、成長して「自分の声を楽器としてどう扱うべきか、そして、人々を本当に結びつけるためには何を伝えるべきなのかを考えるようになった」と語っています。

 

共感と対話で広がる世界について

ここでは項目の序文となる部分で前作『To Pimp a Butterfly』収録曲「Alright」が全米に広がった差別撤廃運動のデモで歌われたこと、そしてそれがアメリカを超えて世界に広がったことや、専門家が「ケンドリック・ラマーは若者と世界をつなぐシンボルになっている」と指摘したことが綴られています。

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To Pimp A Butterfly

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  • ケンドリック・ラマー
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1200

また初期作にあたる『Good Kid, M.A.A.D. City』は、自分のコミュニティー以外に刺さるとは思っていなかったものの、ロンドンで出会った子供が自分たちが使っているスラングや言葉を使っているにもかかわらず歌っていることに対し、疑問に思い質問したところ、そのうちの1人が「僕たちは共感してるんだ。だって、これは君だけの歌詞じゃない。これは、暗い場所から抜け出して新しい人生を始めようとする物語だから」と答えたことに対し、感銘を受けたことを明かし、自分と同じように彼の音楽を聴いた人間が、暗い場所=劣悪な環境から抜け出すきっかけになっていることを実感し、「新たな創造性と、自宅の裏庭(地元)だけでなく世界中のみんなと通じる新たな方法を得ることができた」と語っています。

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日本の若者へ伝えたい“音楽の力”について

この部分についてはおそらく昨今の音楽トレンドの1つとしてKendrick Lamarを聴いている日本のヘッズは襟を正して読み解くべき項目だと思います。テレビでも放送されていた「僕のストーリーが普通の小さな男の子のストーリーになり、日本の若い少年少女のストーリーになる」の件でもあり、私もグッときたのですが、改めて文字で読むと特に「僕たちがアメリカやヒップホップ・コミュニティーで培ってきたインスピレーションを受け取ってほしい。そして、それを自分のものへと昇華させていってください」というメッセージが胸に突き刺さります。

日本はアメリカとは違い、一般的には多民族国家ではありません。ただ現在の日本は単純に典型的なイメージ上の”日本人”のみの単一人種国家ではないのも事実です。特に最近では同じ日本に住む日本人でも両親のうち片方が日本出身でなかったり、海外の血を引く方が増えていることは東京など大都市と呼ばれるいわゆる都会にいると非常に身近に感じます。また両親が日本人じゃなくても日本生まれで日本国籍を選んだ人も中にはおられると思いますし、日本育ちの外国籍の方もおられると思います。しかし、最近では全く褒められたことではない人種差別、ヘイトクライムがここ日本でもわかりやすく目立つことも多々あります。

 

すごくタイムリーですが、テニスの全米オープンで優勝した大坂なおみ選手に対する心無い言葉をかける人の問題を例に考えると、確かに日本はアメリカほどの大規模な他民族国家ではないものの、今やルーツの違いがある人々が暮らす国になりつつあります。その現状を理解せずに差別的な行動を取るのはやはり時代遅れというか、感性として現状についていくことができていないことの証明に他ならないように思えてなりません。(人種差別だけでなくLGBTQなどセクシャリティーに関する差別もそうだと思います)

私の経験からすると幸いにもというと語弊はあるかもしれませんが個人的には日本国内で人種差別を受けたことないものの、海外在住時にはそういった差別を受けた経験も少なからずあります。しかも、ちょっと興味深いことにそれはマジョリティーの大人から受けるよりも、マイノリティーの若者から受けることの方が多かったのです。もちろん、彼らと私では外見上、身体的な人種による見かけの際はあります。また彼らはそういった差異を興味本位でいじってきたのだとは思いますが、一般的にはそれは人種差別的なものとして捉えられることであり、程度によっては不快な気持ちにもなります。

 

ただ、そういったことが間違っているという認識がなければ、本能的にやってしまう行為なのかなともその時は思いました。ですので、Kendrick Lamarの”アメリカやヒップホップ・コミュニティーで培ってきたインスピレーションを受け取ってほしい”という言葉、そして彼がヒップホップを通じて訴えてきたことを考えると人間は学ぶことで何が正しくて、何が間違いかを認識できる生き物だということを改めて考えさせられます。あくまで個人的な捉え方なので、各々私の意見とは別の捉え方はあるかとは思いますが、それこそが彼が日本の若者に伝えようとしていることではないのかなと。

これについては、”百聞は一見にしかず”だと思いますので、是非、この「ケンドリック・ラマーは語る」に興味をもった方はNHKが公開している全文を読んでみてもらえたらと思います。以上、お後がよろしいようで。

「ケンドリック・ラマーは語る」全文はこちら

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Top Image via おはよう日本
Source: NHK