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宇多田ヒカル『初恋』参加アーティストJevonは、実はUKのアップカミングな注目ラッパーだった件

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最新アルバム『初恋』が話題の宇多田ヒカル。その収録曲「パクチーの唄」が7月にフジロック出演を控える注目バンドSuperorganismに公式カバーされていて、私的にはおおっ! となったのですが、おそらく世の宇多田ファンにとって、「一体誰やねん! 」と現在、全力でツッコミをいれているのが「Too Proud」でフィーチャーされているJevon(ジェイボン)という謎の人物ではないでしょうか?

 

「Jevon、何それ、美味しいの?」状態の謎のラッパーの正体に迫る

このJevonについては、以前、block.fmのヒップホップ番組「Inside Out」でDJ YANATAKE氏が、そのことに少し触れていたため、ちょこっとだけチェックしていたのですが、その正体はイギリスのノースウエストロンドンを拠点とする24歳のUKヒップホップシーンのラッパー。しかも、全くの無名というわけではなく、どちらかといえば、これから躍進していくであろうアップカミングなラッパーのようです。

 

イギリスでも人気沸騰中のヒップホップ

現在、アメリカでヒップホップがEDMやポップスすら凌ぐ勢いで大人気になっているのと同じように、イギリスでは数年前のリヴァイバル以降、グライムが大躍進。シーンの中心的なMCのSkepta(スケプタ)、Stormzy(ストームジー)がマーキュリー賞やブリット・アウォードといった同国における権威ある音楽賞で勝ち名乗りを挙げるなど、その人気は凄まじいことになっています。

またあの元OasisのLiam Gallagher(リアム・ギャラガー)ですらSkeptaのことは好意的に思っているような発言をしたり、その息子たちはグライムにどハマりしていることも明かしています。

そんな同国において、ヒップホップの人気はというと、グライムにはまだ及ばないものの、相当なものらしく、例えば、若手のラッパーなら先月来日したLoyle Carner(ロイル・カーナー)なんかは先述のようなイギリスの音楽賞にもノミネートされるなど、注目度も急上昇しているようです。

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というわけで、さっと昨今のUKヒップホップ事情をご説明させて頂きましたが、まあ、そんなことはよっぽどのUK音楽ファンしか残念ながら興味がないことで、例えば、J-POPのスターとしての宇多田ヒカルファンにとっては全く「何それ、美味しいの?」状態だと思います。もっといえば、ある程度洋楽好きな人にとっても「Jevon? 何それ、美味しいの?」状態なのではないでしょうか?

そこで活躍するのが、日々更新されていく世のややマニアックな音楽事情に切り込み、音楽メディアの隙間で息を潜めるようにして運営している当Webzineだというわけで、今回はそんな彼についてサクッとご紹介したいなと思います。ただ、私がサクッというワードを出した時は大抵サクッといかないので、もしかしたらまあまあの長さになる可能性が高いのでそのあたりはご容赦ください。

Kanye West「Jesus Walks」を彷彿とさせるJevonの「Redemption」

「枕が長いのがワシの落語や」という笑福亭鶴瓶師匠よろしくレベルで前置きが長くなりましたが、Jevonは、UKのThe Line of Best Fitという音楽サイトなどによりますと、ブラジル、フィリピン、ジャマイカがルーツにあるらしく、UKガラージのレジェンドDJ EZの影響を受けているそうです。

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そして、今のところ、海外の音楽シーンでも好評なのが「Redemption」という曲で、Pitchforkにもレビューが掲載されており、そこではイエスキリスト復活を呼びかける賛美歌ボーカルサンプル、オルガン使いは、Kanye West(カニエ・ウェスト)の昔の曲や、またDrake(ドレイク)の「Nice for What」のハットやループのサンプル使いなどを彷彿とさせるとことなどが言及されています。

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実際、聴いてみるとそのKanye Westのくだりは、言われてみれば確かに「Jesus Walks」っぽいなと思ったら、The Line of Best Fitに記載されている本人のコメントにも賛美歌コーラスサンプルについて「Jesus Walks」を想起させるものだという記載がありました。

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あと個人的には昨年のKojoe「BoSS RuN DeM Feat. AKANE, Awich」さもあるなと思っています。

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ラッパーだけでなくトラックメイカーでもあるJevonは有名コンピにも参加

なお、Jevonは、ラッパーだけでなく、トラックメイクも行なっており、NinesというUKのベテランラッパーにビート提供もしているそうな。また昨年リリースされた名門レーベル「XL Recordings」のロンドンの新世代ラッパーたちにフォーカスしたコンピレーション『New Gen』にも参加。

New Gen

New Gen

  • NEW GEN
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1500

同作には有名どころではグライムMCのAJ Tracey(AJトレイシー)や今年のXXL2018 Freshmanにも選出されたStefflon Donの曲も収録。イギリスのThe Guardianにも「ロンドンのアーバンシーンのスナップショット」と評されているようにUKヒップホップ、グライムのまさにアップカミングな才能たちを一気にチェックできる興味不可愛内容になっています。(これについてはまた後日レビューを掲載したいなと思う次第)

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あと、さすがUKラッパーたちばかりを集めたコンピだけあって、UKスラングも多いのがこのコンピの特徴。たとえば、収録曲のうちStefflon Don「Money Haffi Mek」は、ジャマイカ系が使う”haffi”という”have to”の意味を持つスラングが使われていたりします。(Pitchforkは"to be"の意味で"money to be made"と訳していました)

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同じ英語といえど、アメリカとイギリスではそれぞれスラングも違ったり、発音や単語の意味自体が違ったりもするので、そういう意味でも英語を勉強している音楽好きにとっては興味深いコンピだと思います。

まとめるとJevonはイギリスでは今後の活躍が期待されるラッパー

まとめるとJevonは、無名ではなく、むしろ今後有名になる可能性が高いラッパーだということで、宇多田ヒカルが彼を起用して「誰それ?」となったことは、海外、特に北米でDrakeが『More Life』にUKラッパーのGiggsを起用して「誰それ?」となった状況に似ているという感じですかね。あとさすがにこれはロンドン在住の宇多田ヒカルじゃないとその存在に気づかないよねと...。

Kmt (feat. Giggs)

Kmt (feat. Giggs)

  • ドレイク
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

Jevonは7月に「Redemption」、新曲「Judas」を収録した『Judas EP』のリリースを控えているそうなので、 Superorganisms然り、宇多田効果で知名度が上がった日本やアジア圏では少なくともストリーミング再生数は伸びそうですね。

Judas

Judas

  • Jevon
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

あと、「Redemption」は、SpotifyのRap UKというオフィシャルプレイリストにも収録されていました。このリストには彼がビートを提供している先述のNines、最近、ナイフ所持で逮捕されたJ Hus、サマソニでは初来日するIAMDDBの曲などが含まれていています。

open.spotify.com

それにしても前作でのKOHH、小袋成彬の抜擢なども含めて考えると宇多田ヒカル、最強のフックアッパーだなと。以上、お後がよろしいようで。

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Top Image via The Line of Best Fit

Source: The Line of Best Fit, Pitchfork1, 2, The Guardian