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EminemがMachine Gun Kellyを再びディスる「Killshot」公開、リリックで興味深い部分をまとめてみた件

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世界中のヒップホップヘッズが待ちわびていたであろうMachine Gun Kelly(マシン・ガン・ケリー)によるEminemディス曲 「Rap Devil」へのEminemによる回答、「Killshot」がついに公開されました。

 

「Rap Devil」アンサー曲「Killshot」もディスのKamikazeが吹き荒れている件

「Rap Devil」は、Eminemが8月末にサプライズリリースした、彼の前作『Rivival』を酷評した者を中心に気に食わない人物をバッサバッサとメッタ斬りにする全方位型ディスアルバム『Kamikaze』でのMachine Gun Kellyディス「Not Alike」へのアンサー曲。それに対するアンサー返しがいつ公開されるのかが期待されていましたが、ここにきてついに「Killshot」という名の再びディスの嵐が吹き荒れるアンサーとなりました。

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そんな同曲では、先述のとおり、最近はラップゴッドからラップデビルに闇堕ちしたEminemによるMachine Gun Kellyディスは猛威を振るっており、まさに神風(Kamikaze)状態。攻めてきたモンゴル軍を海の藻屑にするレベルの強烈ラインの連発といった感じで非常に興味深い内容になっています。

 

KillshotではRihannaや高価なルームランナーマシーンもネタに

まず「Killshot」では、「Rap Devil」でMachine Gun KellyがEminemディスとしてラップしたRihanna(リアーナ)に関するラインを引用。Eminemは、これまでにRihannaと「Love The Way You Lie」、「The Monster」など複数曲でコラボしており、また2人が交際しているという噂も以前もありました。

The Monster (feat. Rihanna)

The Monster (feat. Rihanna)

  • エミネム
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

そのことをMachine Gun Kellyは、Rihannaの2007年のヒット曲「Umbrella」を引用して揶揄しているのですが、Eminemはそれを見事に打ち返す形で、「昨日、彼女がメールしてきて、首にキスマーク(hickey)つけてやったぜ」と反論。いきなりのラップバトル強者ぶりを見せつけてきたように思えてさすがだなと思いました。

Umbrella (feat. Jay-Z) [Radio Edit]

Umbrella (feat. Jay-Z) [Radio Edit]

  • Rihanna featuring Jay-Z
  • R&B/ソウル
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

次に「Rap Devil」でのEminem主演自伝的映画『8 Mile』に絡めたディスにもアンサー。確かにそのとおり、自分は最後に観た『8 Mile』は、TVモニター付きの高価なルームランナーブランド「NordicTrack」のTreadmill(ルームランナーマシーン)を使っている時だったよと、その指摘を認める形で揶揄しているのが面白いです。(ちなみにTreadmillsは、現在30%オフセール実施中ながら2499ドル(約28万円)で販売されている模様…。)

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伝家の宝刀「Stan」を絡めたディスも登場

それとEminemのMachine Gun Kellyディスのきっかけになったと言われているEminemの娘Hailie(ヘイリー)関連ディスは同曲にも登場。Machine Gun Kellyは、2012年に「Eminemの娘、クソエロい」な的発言をしたことでEminemを激怒させたことで「Kamikaze」収録「Not Alike」でディスられたとされていますが、彼は「Rap Devil」でそのことを未だに根に持って怒りを露わにしている子離れできないEminemを「My Dad’s Gone Crazy」を引用し、娘目線で「パパがおかしくなっちゃった」とディス。

そのことに関して今回、Eminemは”別にお父さんは怒ってないよ?”とドヤりながら、粘着してくる、かつてEminemを自身のアイドルとして崇めていたMachine Gun Kellyを自身の代表曲で熱狂的なEminemファン、ストカーがテーマの「Stan」をなぞらえながら、彼を「Stan」、ストカーだとしてディスり返しています。このあたりのラップゲーム感、ハンパないなと。

Stan (feat. Dido)

Stan (feat. Dido)

  • エミネム
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

ちなみに「Stan」は、今では英語の辞書にも”熱狂的なファン”や"狂信的なファンを指す意味として掲載されています。

 

G-Eazyとのビーフもディスのネタにされる

さらにディスは続きます。月刊マガジンで連載中の女子高生ラッパーMCしおりんのラッパー成長譚的ラップバトル漫画『Change!』にも、バトル相手のことを調べるのはラップバトルでは重要だ的な記述があったとおり、この「Killshot」でもEminemは、Machine Gun Kellyのゴシップをリサーチし、この夏起きたG-Eazy(ジー・イージー)との女性がらみのビーフもトピックとして攻撃している点が秀逸です。

このMachine Gun KellyとG-Eazyのビーフは、元々同じ白人ラッパーであるG-Eazyが髪の色をMachine Gun Kelly同様、ブロンドに染めたことを不服とした結構細い、くだらないことがきっかけに起きたもので、当時、Machine Gun Kellyは、自分と金髪にしたG-EAZYとの写真を並べて比較。

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そこにMini Meと記述することで、自分のパクリだと揶揄。ミニミーとは映画『オースティン・パワーズ』シリーズに登場するヴァーン・J・トロイヤー演じるDr.イーブルのクローンを指していると思われます。またDr.イーブルとミニミーは、シリーズ中、『オースティン・パワーズ デラックス』では、ウィル・スミス(Will Smith)の「Just the Two of Us」をカバーしたラップを披露。

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Just the Two of Us

Just the Two of Us

  • ウィル・スミス
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

続く、Beyoncé(ビヨンセ)が出演した『オースティン・パワーズ ゴールドメンバー』では、彼女の夫であるJay Z(ジェイ・Z)の「Hard Knock Life」もカバーしていたりもするため、意外とこの”ミニミー”はヒップホップとは縁があるワードだったりします。

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Hard Knock Life

Hard Knock Life

  • ジェイ・Z
  • オールド・スクール・ラップ
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

閑話休題。

The Chainsmokers「Closer」で知られるHalseyもネタにされる

そんな2人の因縁には、The Chainsmokers(ザ・チェインスモーカーズ)によるEDMアンセム「Closer」で、日本でも名前をよく知られる女性シンガーのHalsey(ホールジー)が関係。

Closer (feat. Halsey)

Closer (feat. Halsey)

  • ザ・チェインスモーカーズ
  • ダンス
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

G-EasyとHalseyは交際関係にありましたが、今年一旦破局。その後、Machine Gun Kellyとの交際が噂になりました。そのことを絡めて、Machine Gun Kellyは、今年8月に出演したHot 97のFunkmaster Flexの番組「Funk Flex」でフリースタイルを披露。

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そこでG-Easyに向けて、自分と見た目がそっくりでクソみたいな威張り屋のアイツの女とヤッてるよ的なディスを行いました。それに対して、G-Easyは、即座にアンサーソング「Bad Boy」を公開。

 

同曲の公開は8/31で、実はMachine Gun Kellyは、同じ日にEmineだけでなくG-Easyからもディスられるという憂き目に見舞われました。しかし、このディスのおかげか現在はG-EasyとHalseyはステージ場で熱いキスを交わしたことなどもあり、復縁したと報じられています。

Machine Gun Kellyは、「Rap Devil」で"すでに他のラッパーの女を寝取ったぜ(Halseyを抱いたの意)"発言をしていたこともあり、Eminemは、この出来事を上手く「Killshot」でもディスのネタ化。「お前が自慢げに寝たと主張した女は、ディスったラッパーとすでに元サヤだよ」と強烈な口撃をブチかましています。これは何気にMachine Gun Kelly的には結構なダメージなのでは…。

 

おっさんだけど売れてますが、何か?

さらにEminemは、Machine Gun Kellyの老害的発言を逆手に取り、これまでに何度も全米チャート1位を獲得し、莫大なセールス記録を打ち立てた自身のキャリアと、彼のキャリアを比較。「45歳のおっさんだけど今も人気ラッパーだし、お前くらいの年の頃、めちゃくちゃ音源売れてましたけど、お前はどうよ?」と、彼のアルバムセールスが約50万枚程度に止まっていることを揶揄するという、ある意味いかにも老害的な発言をしているところがおもしろすぎです。

お前はThe Notorious B.I.G.やJay Zにはなれないから

またSean Combs(ショーン・コムズ)ことPuff Daddy(パフ・ダディ)aka Diddy(ディディ)のレーベル「Badboy」所属だけど、お前ごときでは「Badboy」のレジェンドであるThe Notorious B.I.G.(ノトーリアス・B.I.G.)や最高峰のラッパーの1人であるJay Zと肩を並べることは出来ないなと口撃。このラインは、Geniusによると、EminemはJay Zの「Renegade」や、The Notorious B.I.G.の遺作にフィーチャーされているという事実から来るものだという指摘があります。

Renegade (feat. Eminem)

Renegade (feat. Eminem)

  • ジェイ・Z
  • ヒップホップ/ラップ
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  • provided courtesy of iTunes
Dead Wrong (Featuring Eminem)

Dead Wrong (Featuring Eminem)

  • The Notorious B.I.G. featuring Eminem
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 そして、続けて、せいぜい同じ白人のポップスターTaylor Swift(テイラー・スウィフト)か、かつてEminemに犯してやるよとディスられた白人女性ラッパーのIggy Azalea(イギー・アゼリア)と並び立つレベルだなとまたもや強烈な一撃をお見舞いしています。

 

「ONE PIECE」の尾田栄一郎レベルの伏線の張り具合で2Pac殺害事件にも触れる

なお、この「Badboy」に関するくだりは、他にもあり2Pac(2パック)銃撃による死亡事件にまで及びます。「Rap Devil」でEminemは、彼のプロデューサーDr.Dre(ドクター・ドレー)のおかげでラッパーとして大成できたとディスられていますが、逆に彼への忠誠を示し、「Badboy」のボスであるDiddyとMachine Gun Kellyとの関係と対比させます。そして、2Pac殺害に関与しているとされるDiddyを指し、2PacのライバルとされたThe Notorious B.I.G.の銃撃による死亡も含め、タイトルである銃撃による死を表す”Killshot”に紐づけているとの指摘があります。

また「Killshot」のリリース日は、2Pacの命日である9/13の1日後となる9/14。この部分は、表向きのMachine Gun Kellyディスからは想像できなかった漫画「ONE PIECE」の尾田栄一郎レベルの伏線の張り方具合で、暗にMachine Gun KellyのボスであるDiddyまでディスっているのは、正直おったまげーでございます。ラッパー、すげぇ。ラップゴッド、すげえしかないですね。マジで…。

 

最終的には娘に近づくなで終わる「Killshot」

このように「Rap Devil」に対する強烈なディス返しになった「Killshot」を色々調べていくと、あくまで個人的な意見ですが、今回のビーフは現時点ではEminemの勝ちなのかなと思いました。トピックの選び方もそうですし、色々と老獪といった印象がやっぱり強く、最終的に”Eminem強い”にの一言に尽きるかなと。

そんな「Killshot」ですが、最後でまた娘愛が炸裂。最後の”So just leave my dick in your mouth and keep my daughter out it”というラインでは、とっととお前がくわえている俺のモノから口を離せよ、そして娘には近づくな!」で締めるという、結局そこかい!的なねちっこさは、マジハンパないですね。ヒップホップ版『過保護のカホコ』感にヤラレます…。ですので、私としては9/19に放送されるスペシャルドラマ『過保護のカホコ~2018 ラブ&ドリーム~』までに、竹内涼真もといMachine Gun Kellyに、黒木瞳もといEminemに対する再びのアンサーをブチかましてほしいなと思う次第です。

最後に余談ですが、「Killshot」をプロデュースしたのは、『東京喰種トーキョーグール』の劇中曲「Glass Sky」をサンプリングして「Goog Guy」という『Kamikaze』収録曲をプロデュースしたIllaDaProducerとのことです。以上、お後がよろしいようで。

9/19 追記:

BUSINESS INSIDERによりますとYouTubeで公開された「Killshot」音源動画が、同プラットフォームにおけるヒップホップ動画史上、歴代1位のデビュー記録を樹立したとのこと。動画は、公開後24時間以内で3810万回以上再生されたとのことですが、これはYouTube曰く、同プラットフォームの音楽系動画史上においても歴代3位となる動画デビュー再生記録になったそうです。ちなみにそのBUSINESS INSIDERが9/19に公開した記事では、その時点で「Killshot」は、7200万回以上再生されていると報告されていますが、実際にさっき確認してみたところ、再生数はさらに500万回以上、増加し現在は7800万回再生に迫る勢いです。

 

公開後5日でこの数字はいかにEminemによるMachine Gun Kellyのディスに対するアンサーが注目されていたかがよくわかります。ちなみに「Rap Devil」は公開後、2週間経った現在、YouTube再生数は9750万回ほど。「Killshot」にはEminemが、Machine Gun Kellyとのキャリアの差を比較してディスる場面もありましたが、この結果を比較すると少なくとも影響力の面ではEminem側に軍配が上がってしまうのかなと。この結果を見るとMachine Gun Kellyにロートル扱いされて揶揄されていたEminemですが、大人が本気を出した時の怖さを感じます(笑)。なんだか『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』のNERV本部が、戦略自衛隊に一方的に蹂躙されていく場面や『アウトレイジ』の大友組組員が次々に消されていく場面が頭に浮かびました。

追記:EminemにフルボッコにされたMachine Gun Kellyですが、その後リリースした最新EPのセールス結果はあまり芳しくなかった模様。

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 Top Image via Eminem
Source: Genius, Rolling Stone, People, TMZNordicTrack