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DOMMUNE「DJ Plays 電気グルーヴ ONLY!!」のここがすごかったをふりかえる

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電気グルーヴメンバーで近年は俳優としての評価も高かったピエール瀧。その薬物スキャンダルは、予定されていた電気グルーヴ30周年ツアーの中止や作品の販売、配信停止から、人気ゲーム『JUDGE EYES 死神の遺言』aka “キムタクが如く”の販売停止、テレビ番組『ピエール瀧のしょんないTV』打ち切りなど、日本のエンタメ業界に様々な影響を与えました。

 

そんな中で映画『麻雀放浪記2020』は、”犯罪に関わるスキャンダルを起こした人物が出演する作品をどのように扱うのか?” というスキャンダル発覚後から議論されていたことに対して、ノーカット上映を決定。これまでにも散々行われてきたこういった議論に対して、新しい姿勢を打ち出しました。

「DJ Plays "電気グルーヴ" ONLY!!」配信をふりかえる前に

電気グルーヴとして日本に数多存在するサブカルファンからの支持を集めるサブカルセレブでありながら、先述の俳優活動で今や大河ドラマでも存在感を放つという、エンタメ界におけるハイヴリッドな影響力を持つだけにホント、最近ピエール瀧問題はメディアを散々にぎわせていたと思います。

ですので、ここで細かく書くことは特に必要ないのですが、個人的にはこの問題以降、疑問に思ってしまうのはやはり、ワイドショーによる”クラブ=犯罪の温床”的な偏向報道。かつての”サイバーのりP”の時などもそうでしたが、一部の事実を一般化しすぎで、実情を全く把握していない。もはや絶対にネタ切れで仕方なくクラブを悪者に仕立てあげている。またワイドショーで報道する内容のネタ元は、『トレインスポッティング』などに代表されるドラッグカルチャーをモチーフにしたイギリスの青春映画(最近だったら『ノーザン・ソウル』とか)じゃないかと疑いたくなるほど、あまりに現実とかけ離れている気がしてなりません。

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しかしながら、これまでも度々報じられているとおり、クラブと関わりを持つ人物が薬物スキャンダルという形でスポットを浴びてしまうということは少なからずありました。ですので日本のクラブカルチャーは完全にドラッグとは無縁なクリーンな場所と言い切れないのもクラブ無罪を訴える上ではジレンマかと思います。でも、ワイドショーの報じ方は普段からクラブに遊びにいくことが多い私からしたらやっぱり悪意があると思うし、仮に実際に取材をした人がそういう光景を目の当たりにしていたというなら、それは多くの人が遊びに行くような箱ではなく、かなりのアングラ箱に足を運んでいるとしか思えないですね。

そういったことがあるので完全にクリーンではないかもですが、そこまで誇張しなくてもいいじゃないか。ガンギマリのジャンキーも確かにそうだけど、お酒で悪酔いして喧嘩をふっかけてくる類のおじさんとかもかなりタチ悪いぞと言いたい。そんな長い枕になりましたが、先日、DOMMUNEによって緊急放送されたDJたちが電気グルーヴしばりのDJセットを披露する「DJ Plays "電気グルーヴ" ONLY!!」は、ピエール瀧のスキャンダル以降のワイドショーの姿勢を含めて様々な問題に対してモヤっとしていた気分をどこか払拭してくれるものだったのではないかと。

 

配信最終盤の「虹」がハイライト過ぎた

放送当日、私は竹内まりやのNHK特番とDOMMUNEを行ったりきたりという感じで視聴していました。

あと最終盤、時間で言えば、放送終了予定時間直前のスギウラムがプレイした「虹」は、完全にこの放送のハイライト。配信された現場の雰囲気やYouTubeに寄せられたオーディエンスの感想からその多幸感は、やはり2010年代のクラブアンセムとはちょっと違う、90年代生まれのクラシックならではのヴァイブスとでも言いましょうか、Underworld「Born Slippy」、The Chemical Brothers「Star Guitar」にも通じる人類のアンセム感を改めて感じました。

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配信自体はアンコール的に午前0時を過ぎても続けられていたので、虹が実質的には締めの曲ではないのですが、私的には素晴らしいフィナーレを感じました。アンコールの「電気ビリビリ」「FOXX」良かったなぁ...。

また今回の出演DJたちがプレイした電気グルーヴ音源に関してはTwitterユーザーのikepro21さんがプレイリスト化されているので、配信を見逃した方、見ていたけどふりかえりたいという方はそちらをご確認いただければと思います。曲名だけでなく収録アルバムも記載されていて非常に素晴らしいです。

インターネット以降の革命、これが現代のLOVE PARADE

ちなみに今回の配信は、番組終盤でDOMMUNEの宇川氏が、開局史上最多の40万人viewerで日本のツイッタートレンド4時間トップで世界のツイッタートレンドで4位と伝えていました。しかも裏番組の先述の竹内まりやの追随を許さず。また”インターネット以降の革命、これが現代のLOVE PARADEだ”的な発言も個人的にはグッときました。

「DJ Plays "電気グルーヴ" ONLY!!」は配信内容もさることながら、事前に公開されていたDOMMUNEからのステイトメントも胸にくる内容でした。特に私は問題に対して、すでに散々言われていることですが、犯罪に関わった人物の過去作が販売、配信停止になること、それが故にフリマアプリで高値で転売されることはステイトメントにあるとおり、なんだかな〜。ナンセンスだな〜と思ってしまいます。

「音楽は誰のものなのか?」を改めて考えるきっかけに

しかしながら、このコンプライアンス社会におけるレコード会社の決断もやはり苦渋の選択であり、ただファン目線にのみ立って攻め立てていいいものなのか? とも思います。最近話題になった電気グルーヴ作品の販売停止措置をやめることを訴える署名活動に対するコメントも全部がポジティヴなものだけではなく、中には、発起人がファンだから、電気だから呼びかけただけという意見も見受けられました。確かにそれも一理あります。故にこの問題が色々な意味で複雑なところだと思いますが、ステイトメントではきちんとレコード会社の判断にも理解を示しつつも、その上で音楽メディアとして何ができるのか? を考えた上で、「音楽は誰のものなのか?」という概念を問うべく行われたものだったのは非常に高尚で、カルチャーに関わる人間の気概を感じました。

 

「音楽は誰のものなのか?」には、色々な立場、角度からそれぞれ答えがあるかと思います。でも私としてはアーティストのものであり、版権を管理する側のものであり、そしてそれを購入なりなんなりして聴くリスナーのものでもある。つまりみんなのものであるからして、大人の事情はもちろんあるし、理解はできる。でもひとつの角度からの判断だけに委ねられてほしくはないなと思いました。

そういう意味ではこの配信は、それを多くの人に改めて考える機会を与えたと思います。ここで細かくDOMMUNEのステイトメントを書いてしまうのは野暮だと思うので、現在の問題含め、気になった人はDOMMUNEのサイトで読んでみてもらえたらと思います。きっとまた色々と考えることがあるはずです。

なお、石野卓球氏は滞在先のベルリンからファンに向けてこんなものも発表していました。こちらもよろしければ是非。

以上、お後がよろしいようで。

DOMMUNE「DJ Plays "電気グルーヴ" ONLY!!」配信に関するステイトメント

追記:
宇川氏のTwitter投稿によると「DJ Plays 電気グルーヴ ONLY!!」は最終的に46万6932人もの視聴者を集めたそうな。投稿でも書かれておられますが、まさにネット空間に現れたポストインターネット時代の電脳LOVE PARADEといった感じですね。あとはこういったファンの声に答える形で電気グルーヴが活動再開する日がやってくることを祈るばかり...。まさに配信時のYouTubeのコメント欄で何度も見かけた"待ってるよ"だと思います。

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Top image via DOMMUNE