letter music

日々更新される音楽情報を読み解くWebzine

Childish Gambinoが人種差別などに物申す「This Is America」MV、凄まじすぎたので色々調べてみた件

f:id:fantasydub:20180508160616p:plain

今年1月のグラミー賞でのパフォーマンスも素晴らしかった俳優、ミュージシャンなど多彩な才能を発揮している才人ドナルド・グローヴァーことChildish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)が新曲「This Is America」のMVを公開していました。

Childish Gambinoがアメリカの問題を告発する新曲「This Is America」

Childish Gambinoとしての新曲は、大ヒット曲「Red bone」を収録した2016年にリリースしたアルバム『Awaken, My Love!』以来になるかと思うのですが、その新曲MVの映像も歌詞もとにかく強烈。

この新曲について、まずChildish Gambinoは、そのYouTubeやApple Musicなど複数の音楽プラットフォームへの導線付きURLを自身のTwitterに投稿。私は、本日Oneohtrix Point Never(ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー)がその投稿をリツイートしていたので、最初、軽い気持ちで、「おお、ついにChildish Gambino新曲公開か〜」程度のノリでリンク先に飛んでみたところ、そこで再生した「This Is America」のMVに非常に強い衝撃を受けました。

youtu.be

 

南国風レイドバックと思いきやドープなトラップに変貌する新曲

曲は最初、70sファンクにインスパイアされた『Awaken, My Love!』とはまた違った南国風レイドバックなイントロで始まるため、おお、そうきたか! 夏っぽいな! などと思っていたらいきなり曲調が変わり、ワルそうな極太ベースのトラップが鳴り響く展開に。さらに、そこから奇妙なダンスを踊るChildish Gambinoが登場。

ちなみにそのダンスは今、アメリカで大流行中のBlocBoy JB(ブロックボーイJB)の"Shoot"ダンスや”Roy Purdy dance”という類のダンスだそうで、そのRoy Purdy danceとは、元々はスケーターのRoy Purdy(ロイ・パーディ)が、Famous Dex(フェイマスデックス)の「Japan」にあわせて踊る動画がバイラルヒットしたことから人気になったものです。SNSで#JapanChallengeを検索すると相当数の「踊ってみた」動画がヒットしますので興味がある方は是非。

youtu.be

youtu.be

ただ、この曲にとってこのダンスはただのトレンドを取り入れたような類のものではなく、リファレンス的に重要な意味を持っています。

有色人種差別、銃規制などアメリカの社会問題を斬るChildish Gambino

そこからいきなり、ドラマとか映画に出てくるような顔に袋を被されたテロ事件で誘拐されたような椅子に拘束されている人物が画面にうつり、さらにChildish Gambinoが『ジョジョの奇妙な冒険』のジョジョ立ち風のポーズをとったかと思ったらいきなり手に持った拳銃をぶっ放し、射殺するという展開に。そこから曲名である「This Is America」という歌詞がスタートするという…。

Geniusの歌詞解説や他のメディアの解説などを読んでいると「金が欲しい」「パーティがしたい」という歌詞が歌われながら、流行のダンスをするChildish Gambinoは、アメリカの典型的な若者を表現。

そこに続く先述の射殺シーンは、近年、メディアでも大体的に報じられる黒人に対する暴力や形式的な人種差別の撤廃を訴える運動「Black Lives Matter」を引用したもので、その部分は黒人男子高校生が自警団によって射殺されたトレイボン・マーティン射殺事件の引用だそうです。

その部分では享楽的なダンスが社会現象化し、そういったトレンドには敏感なのに、差別やそこから生まれる暴力問題には関心を持たない若者が表現されているとのこと。(ダンスについてはアフリカのダンス「Gwara Gwara」と指摘しているメディアもあり、そのあたりも有色人種や黒人差別に関連づけさせらている模様。ちなみにGwara Gwaraもネットでは「踊ってみた」系動画で人気のダンスです)

youtu.be

またゴスペル隊をライフル銃で射殺するパートは、アメリカのサウスカロライナ州チャールストンの教会で2015年に起きた白人青年によるヘイトクラムが原因と言われている黒人9名射殺事件の引用部分であり、歌詞も銃は俺たちの街では保持できるし/だから俺だって持っていい」という部分が見受けられます。

他にも、”This a celly (ha) That's a tool (yeah)”という歌詞の部分は和訳すると「これは携帯だ。いや違う銃だ」というニュアンスになり、サクラメントでiPhoneを拳銃だと思い込んだ警察の勘違いによって射殺された黒人青年の事件を引用している部分などもあります。

そして、このMVには、成功した黒人ラッパーたちのMVに出てくるような高級車は登場せず、古い90年代の車しか登場しません。その部分は、アメリカのいわゆる富裕層と言われる人々と違い、一般家庭の人々(どちらかといえば差別の対象となる社会的な弱者層、低所得者層の人々)は、お金がないので、2018年現在でも未だにそういった古い車を乗用車として使っているというような現実やその当時の大量消費主義、物質主義の成れの果て、そこから生まれた現代の同国の格差社会を表現していると解釈する見方もあるようです。

豪華ラッパーたちがゲストとして声の出演

アメリカの銃社会、有色人種への差別などリアルな社会問題を「これがアメリカだ」と現状を改めて、聴くものに伝える今回のChildish Gambinoの新曲「This is America」は内容が強烈ですが、ゲストとしてYoung Thug(ヤング・サグ)、21 Savage(21サヴェージ)、 Quavo(クエヴォ)、Rae Sremmurd(レイ・シュリマー)のSlim Jxmmi(スリム・ジミー)、BlocBoy JB(ブロックボーイJB)といったラッパーたちが声の出演をしているパートがあったりするのも注目ポイント。

ちなみにこの「This Is America」は、Childish Gambinoの次のアルバムに収録されるようで(一方で収録されないという声も)、今回のMVの後半部分で確認することができるカメオ出演しているSZA(シザ)は自由の女神という位置付けで、つまり"アメリカの自由"を象徴しているという見方もあります。またそのSZAとのコラボ曲も次のアルバムには収録されるのでは?という海外メディアの予想もあったりします。

www.instagram.com

Childish GambinoがMVで見せる表情も話題に

MVでChildish Gambinoが見せる表情、特に最後の何者かに追われ、逃げているシーンで見せる彼の表情はまさに迫真の演技といった感じで、ネット上でも彼の表情の演技にも注目が集まっているそうな。そのあたりの表現はさすが”役者ドナルド・グローヴァー”ですね。

f:id:fantasydub:20180508155759j:plain

 

Kanye発言とのコントラスト具合

それにしてもアメリカの神話と呼ばれる至高のエンタメ作品『スター・ウォーズ』にも出演するクラスの非白人系俳優という面を持つ、Childish Gambinoが描く黒人目線で訴えるリアルなアメリカの姿は、私的には「Redbone」のエモい感動の余韻が未だ残っていただけに衝撃的でした。

Redbone

Redbone

  • Childish Gambino
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

10代後半から20代前半にかけてのヒスパニック系や白人系の若いSoundCloudラッパーが、鬱や自殺、ドラッグをテーマにしながらもハイブランドで身を固めて享楽的なイメージを売りにしながら若者人気を獲得したりする一方、先月のJ.Cole然り、キャリアを積んだちょっと大人の黒人アーバン系アーティストがアメリカが抱える問題を告発するようなコンシャス系の作品を発表するという流れも非常に興味深いと思います。

そして黒人でありヒップホップ、ひいては音楽業界を代表するパワーピープルのh一人であるKanye West(カニエ・ウェスト)のトランプ支持、黒人奴隷説といった物議を醸す一連の言動とのコントラスト、対称的さもすごいなと。特にKanye発言は、今、黒人コミュニュティーにとっては注目度が高いトッピックだけに「This Is America」の衝撃もより際立った感があると思います。

長々と「This Is America」について書きましたが、この曲については、個人的にまだまだ興味が尽きないといった感じですので、引き続き理解を深めるために聴き込んだり、調べたりしたいなと思います。

 

*追記
ちなみにこちら、解釈は人の数だけといった感じで、色々と新説的なこのMVについての見解や指摘が時間が経つに連れて出てきている模様。ですのでこの機会に「Black Lives Matter」など人種差別系問題、格差、銃規制など社会学的な問題が気になった方は色々と調べて背景を理解しておくと、例えば、今後のコンシャス系のラップだったり、こういったことがテーマの映画だったり、エンタメの一種ではあるものの、現実社会が抱える問題を浮き彫りにするような"アート作品"をより深く味わえるようになるのでは? と思っています。私的には非常に興味深いと思わされているので、今後、そういった見識を深めていきたいと思うばかりです。

 

▶︎あわせて読みたい記事はこちら

Text by

Top Image: Childish Gambino
Source: GeniusPitchforkForbesDeadline